<僕は声を上げずに泣いた。さようなら、僕の初恋。
窓の外で飛行機が飛んでいる気がするが、生憎視界は涙で塞がれてよく見えない。海の先を目指しているであろうその音は、どの音よりも遠く聴こえた。
(コメント)
この、カッコつけないストレートな表現がぐっときました。
たぶん、夏男の顔はぐちゃぐちゃで
唇を噛み締めているであろうと思われますが、真っ直ぐ正面から受け止めてやるという気概が感じられます。
最後だからなおさら潔く素敵です。
作者からの返信
評価ありがとうございます!
企画の品評会にも挙げてくださり感謝です。
私も参加したい意思はあるものの時間が取れず……泣
そうです! もう夏男はぐちゃぐちゃな顔です。
途中まで斜に構えていた夏男ですが、号泣する彼は純情でしたね。
素敵と言って頂けて嬉しいです。
とても良い作品に出会えたと思います。
冒頭が出色の出来栄えだと思います。失礼を承知で言えば、この作品のツボは冒頭二行にあると言っても良いくらいの、素晴らしい入り口だと思います。
主人公の感性の鋭さ、拗らせてる具合、ちょっと純文学的な思考。そしてそれは何に対して言っているのかと興味をそそられる。どんな切り口で、それを紐解いてくれるのか。楽しみになる冒頭だと思います。
全体的に描写がわかりやすく、良い言葉の選択をされているなという印象です。
また春子の発言に重みがある所が良いです。日本という土地を離れることを、自分の頭の中で何度もシミュレーションしていたことだからこそ言える、「決めていた」感ある台詞。いいですね。
おしいな、と思う所ですが、地の文章です。
波があるように見受けられます。「気に入っている」「気合の入っている」部分に比べて、情熱が込められていない所があるというか。
例えばこれ。
>春子は意外と普通の女の子だった。
春子との出会いは絵画的であり、印象的でした。それは夏男の好奇心を刺激するもの。だからこそ、彼女の普遍的な側面を目にした時の落胆。その重みある中で切り返すには、この文章はあまりにも軽いと思うのです。「意外と」というワードを抜くだけでも印象が違うのでしょうが。
冒頭の描写を考えるに、初めて目にした瞬間から、夏男は春子の求心力に捉えられています。そこを考えると、もう一声ほしい所と思ってしまいました。
そういった、「まだまだやれそうな部分」を一歩立ち止まって練り込むことで、この作品はより美しく輝くだろうなと思いました。作品の方向性的に美しさが追求されているので、荒削りな部分は磨いた方がよいと感じました。
それをするとですね。
>明日は今日の延長ではない。
こういう、素晴らしい部分がより輝くと思うのです。
そうすれば、自分が書いた今日の黒板と、彼女の言葉が書き加えられた黒板は、延長線上には存在しない「別物である」という理論(冒頭の純文学的な、自己結論)を浮き彫りにして、奥深い作品になると思ったのです。
こういう、考える系主人公の場合は、作者様のうんちくが垣間見れてもいいと思います。私はその方が好きです。
はっとするような解釈、強烈な冒頭ワード、会話文の構築など、勉強させて頂きました。
最後に、本企画にご参加頂きまして、ありがとうございました。
作者からの返信
評価ありがとうございます。
冒頭は気合いを入れていたのでそう言って頂けて嬉しいです。
波がある、という評価になるほどと思いました。
気に入る・そうでないの意識は無かったのですが、そういった「無意識」が波を作っていたのだと思います。
荒削りとはそういうことだったのか……
語彙力や感性も磨きながら、文章を推敲できるように意識してみようと思います。
こちらも大変勉強になりました。評価ならびに企画立て、運営お疲れ様です。ありがとうございました。
卒業なんて特別な事じゃない、わざわざ騒ぐ気も起きない、そんなスタンスの出だしで、ああ、これは学生のお話だなあと思えました。
読みやすく素直なスタイルで、すっとお話に入っていけました。関係を断ち切る素振りを見せながら、期待をしてしまう春子、いいですね。
ラスト近くの、「さようなら、僕の初恋。」。これは強くて、流れを(気持ちを断ち切る)言葉なので、この言葉は少しずらして末尾に持ってきた方が、ズシンとくるのかな、なんて思いました。
作者からの返信
評価ありがとうございます!
卒業という一大イベントは、当事者よりも周りの大人たちの方が盛り上がることが多いですよね。過ぎた日は戻らないことを時間が経ってから実感する……
最後は飛行機の描写で締めることにしていたのですが、確かにその一言でぶっつり途切れる感がありますね。
よく吟味してみれば、最後の段落の二文の間にその一文を入れると語感も良かったかもしれません。
まだまだ初心者なので、書きたいことを思い付いたまま書いてしまっていますね……
これから文の前後やその印象にも気を遣っていきたいです。
ありがとうございます。
編集済
こんばんわ、拝読させて頂きました!
(私もこの企画に参加するまで、筆致という言葉を知らなかった素人ですw)
作中で特に目を惹いたのは、春子に関する描写です!
いつもは普通の女の子!、桜の下ではミステリアス! なんだが色っぽいこの春子……たまりません!(ありがとうございます)
>一人で桜の木の下で寛ぐ姿は儚い桜の精のよう←この表現は好みでした!私のと近いものを感じました(笑)
そして惜しいなと思ったところ
>花弁と戯れる彼女はさながら非現実な世界の住人のようであり、不思議と目を奪われた。
この文章(特に、非現実な世界の住人)が読んでいて口がモゴモゴしてしまいました(笑)語呂があんまりよろしくないかな?と感じました。春子の幻想的な一面に目を奪われるシーンだと思っております。個人的には呼吸すら忘れていそうなイメージを持ったので、少しもったいなく感じました。
そこで、ちょこっと考えてみました。御無礼は重々理解しておりますが、もし良ければ見てやって下さい。
>花弁と戯れる彼女はまるで、夢にまどろむ浮き世の住人。その姿は否応無く、僕の視線を釘付けにした。
……なんだが、それっぽい言葉を適当に並べただけ見たいな字面になってしまいました……(お気にさわったらごめんなさい)
とりあえず、参考程度で……(汗
作者からの返信
評価ありがとうございます!
筆致、難しいですよね;
あまり恋愛もの、とりわけ青春小説は得意ではなかったのであえて挑戦した結果、こんな感じに(笑)
予想外に春子が人気で驚いています。
文章まで練って頂いて感謝です。書き手によって様々な表現がありますね!
女の子って、こうなのですよね。支離滅裂で両極端。等身大で身近に感じられる普通の女の子感満載の春子で、それがとっても魅力的です。これは描写力の為せる業だろうなあ。
うじうじした夏男もかわいいです(笑)
そうなんですよねえ。このふたり、すれ違いで、かち合えなかったのですよねえ。思いつつ突っ込まずにいたところなので、この部分にも脱帽です。
飛行機を音だけで見送る描写も心憎いです。活字の表現って視覚化ばかり意識してしまい、音や、ましてや嗅覚にまで神経を行き渡らせるのは難しいですから。
私は、もたつき感もなくまとまっていて、全体の印象も良かったと思います。
作者からの返信
評価ありがとうございます!
飛行機の表現は、夏男と春子の距離・壁を表現したいと思いました。
目で飛行機を追えてるなら走っても追いかけられそうなので。
目を閉じて拒否してるのにも関わらず、聞こえてくる轟音。ということで音で表現することで落ち着きました。
春子を魅力的に書けていたとのことで安心しました。読んでいただきありがとうございました!
編集済
春子ちゃんの描写が丁寧で泣けます。なんてステキな女の子なんだ。
夏男くんが惚れるのも当然です。すごく魅力的な春子ちゃん。
まるで心でつながった恋人みたいな二人。いや、もう既に恋人だったと言っても過言ではないですね。
でも、終わってしまった。
その理由がすごい。リアリティありすぎです。
実際、結婚する相手って偶然が重なるってみんな言いますから。
印象に残ったフレーズは、
僕らが積み上げてきた時間の分だけ……
他にもいくつかはっとする部分がありました。こんなに沢山使えるなんて、どんだけストックをお持ちなんだっ
作者からの返信
お褒めの言葉ありがとうございます!
偶然が重なる……そういうのを「縁」というのでしょうね。テキストノベルゲームのBADED好きとしては、こういった縁を外しまくった終わり方がたまらなくいとおしいです。
色んな人間の色んな思想や価値観に触れていると、自分の表現も豊かになれる気がします。物語に限らず、生身の人間の話など。
引き出しの多さを褒められて只今ドヤ顔で小躍りしております。嬉しいです。
ありがとうございました!
企画参加者です。
粗さはあるがとても素直な文章でとても良かったと思います。告白して引くに引けない夏男の心理描写、会話が良く伝わりました。
問題点を上げるなら2点。
1つは告白後の流れがそれまでに比べて駆け足だったのが残念だったように思います。
2つ目は特に問題です。
読点を無駄に使う手法……私と同じで色んな意味で大問題でした(笑)
お互い、その癖を直して行きましょう!
作者からの返信
評価ありがとうございます!
前半は告白前の雰囲気に酔って長々と自分語りをしていましたが、後半はフラれたショックで記憶が飛んでいる夏男を表現したかったのです。
ですが黒板のアンサーからはもうちょっと広げても良かったかもしれないですね。うわー!っていうのを表現したかったです。
読点ですか……昔よりはまともになったと思っていたのですが。
私の文章は漢字が多くウェブ画面を埋めてしまいがちなので、自分でも目が痛くなるため優しさで読点を付けていましたが……無駄ですかね。
思春期に文語の純文学を読みすぎたせいで未だに長文かつ読点を打ちまくるクセが抜けないようです。精進します。
あ、台詞はわざとでした。どもっている表現をしたかったのですが、お気に召さなかったならすみません。それともこれがいけないのか……?う~ん
ともかく、ご指摘ありがとうございました!頑張ります。
編集済
こんばんはー。再度のコメント失礼します。
修正されましたよね? より、自然になった印象です。
フィクションなので、どこまで現実と折り合いをつけるのかは作者に任される部分も大きいとは思うのですが。私のコメントにご気分を害されなくて良かったと、ほっとしました。
その他、気付いた点です。
良かったところ:
あらためて読んで、
「だからバイバイだ」
「ばいばい夏男君。楽しかったよ」
の台詞二つが、「断ち切る」という行動をよく表していて、良いなと思いました。春子、断ち切ろう、振り切ろうとしているのですよねー。そして、“今ここで出逢えた運命なら、海を越えても想えたのに” につながる。上手いな、と思いました。
読点については、横からすみませんなのですが、既に修正されたのでしょうか。というのは、前回も今回も全く気にならなかったので。
読み手によって、この辺りの印象も大きく異なるのだなと勉強になりました。
この「異なる」というのが、私は自作を書くときにポイントの一つだと考えています。「読み手の経験や考え方その他によって、様々に受け取ってもらえる作品」こそ、良作だと思うし、創作の面白い部分だと思っています。
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(初回コメント)
こんにちは。
・良いと思ったところ
格調高い文章を心がけつつ、恋の嵐を綴った印象を受けました。
「僕」の熱い気持ちのこもった作品でした。
・もったいないと思ったところ(これは重箱の隅的な感じで、もし不適切だったり、お気に障ったら、コメントごと消してしまってください)
春子の大学進学云々、のあたりです。
父親の転勤が決まってからアメリカの大学進学の準備をしたとなると、期間的にやや無理があるように思いました。
春子の「正直海外も行ってみたかったし」という発言からだと、春子が周到に準備していた印象はないので、何か、春子の進路決断を自然に補う形の発言や理由付けがあったら良いのかなと、感じました。
面白い企画でしたね。執筆、お疲れ様でした。
作者からの返信
追加評価ありがとうございます!
私は自分に甘い人間なので、今回指摘してくださって有り難かったです。冷静に見ることが出来ました。
春子は良くも悪くも「女の子らしい子」を目指しました。夏男を強く拒絶しながら、心の中で「察してよ」とちょっと思っている。そして黒板のメッセージをやんわり責める。
二人のどちらかが少しでも違った行動をとっていたら、二人の縁はこの先も続いたかもしれないなあ、なんて思います。
句点読点は一度考え始めると毎回迷宮入りしてしまいます。無駄に打たないよう普段から気を付けていたのですが……
悩みましたが読点の修正はしていません。気にならないと言っていただけて安心しました。
長々と語ってしまいすみません。再評価ありがとうございました!
ーーーー
(編集前)
評価、ご指摘ありがとうございます。
もったいない所について:
私個人のイメージとしては春子は相当長い間嘘をついていたのですが、言われてみれば会社の赴任通達はそんなに早く出ないですよね。失念しておりました……
親の仕事縛りで整合性を確認してませんでしたが、何か良い理由が思い付いたら差し替えたいと思います。
春子は夏男になんでもないようにアメリカ行きについて告白していますが、「今生の別れだ」と名言していたり、ずっと皆にバレないように嘘をついて隠す努力をしています。これは相当つらい努力です。そんな矛盾から、“夏男にすら言えない(言わない)密かな決意”を匂わせたらな~と思っていました。
文章の世界は難しいと実感しました;;
重ねてお礼をば。評価添削ありがとうございました!
冒頭部分は本当に、完璧といっていいほど素晴らしいと思いました。
夏男視点のお話ですが、現実をしっかり見据えながら運命的なものを信じたいと思う春子の女心に共感しました。
作者からの返信
評価ありがとうございます!
完璧だなんて……! 冒頭の評価の高さに自分でも驚いています。
共感して頂けて嬉しいです。目指した春子像は、「夏男の視点で美化されている普通の女の子」でしたので、身近に感じてもらえたなら幸いです。