友人に手は差し伸べない。

「どんなに綺麗事を言ったって、お前と嫌いな上司の価値には差が出る。」


 眉間にシワを寄せ、グラスを強く叩きつけながら、悪酔いする友人は言った。


 確かにその通りだ。


 だから私は、友人に手を差し伸べない。


 差し伸べるということは、自分が友人よりも優位にいるということ。


 そんなことは無いはずだ。


 例え年収に違いがあっても、年齢に違いがあっても、国籍や人種に違いがあっても、私たちは平等だと信じている。


 だからこそ、差し伸べなかったその手で肩を組み、酒でも酌み交わそう。


 私たちは素面で夢を語り合える仲なのだ。


 普段は隠している愚痴や弱音ぐらい、隣でいくらでも聞かせてくれ。

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