下積めぬ者たちへ

 夢を追う道と生活する道は常に平行だ。


 どれだけ近づいたとしても、決して交わることは無い。


 高い場所にある夢を掴むために足場を組む"下積み"は、直接的にも間接的にも"生きる"という行為に阻まれる。


 "生活費"は首を絞める縄になり、"世間"は手首を切るカッターナイフとなる。


 どうやら近年の自殺者は後を絶たないようだ。


 そして今、私の首にも縄がかけられ、手首にはカッターナイフの刃が押し当てられている。


 殺された方が楽なのは分かっている。


 ただ、ここで自殺できるほど、私たちの命は軽くないはずだ。






 下積めぬ者たちよ。


 あなたは首にかけられた縄を引きちぎり、押し当てられたカッターナイフをへし折ることができるはずだ。


 自らの選択で自殺した者たちに敬意を評し、彼らの屍が転がる夢追い道を進んでいく。


 ただ、前を向いて。

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