吸殻が0本になった時

 恋人に振られた。


 内定が取れなかった。


 オーディションに落ちた。


 涙の数だけ煙草が増え、灰皿に吸殻が溜まっていく。


 窓も開けず、換気扇も回さずに口から吐く煙は、部屋を循環してまた私の所に戻ってくる。


 窓から見える月は白く霞んでいた。


 吸殻が0本になった時、きっと月も綺麗に見えるはずだ。


 涙を拭いながら、次の一本を取り出して火を付けた。


「今日ぐらいは我慢しなくていいんじゃない?」


 口から吐いた煙は私にそう語りかけてくれている気がした。

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