正義を語る悪人

 電車の座席に座りながら逃走中の殺人犯を否定する友人は、彼の前に立つお婆さんに席を譲る事はなかった。


 パトロールに勤しむ警察官も、就業後には歩きスマホをするだろう。


 正しいの規範となるはずの母親は、子供の手を引いて信号を無視していた。


 自分の主観で正義を振りかざし、目の前に落ちている小さな正義は気付かぬ振りをして踏み潰している。


 それなのに人は、テレビ・ラジオ・ネットで報道される悪を徹底的に叩く。


 職場や学校、もっと小さなコミュニティーで発生した悪ですら見逃さない。


 半径0mに潜む悪には目を瞑って。

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