第9話 闇の鼓動
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第9話 闇の鼓動
≪登場人物≫
サイアス♂(17歳)::自由気ままな冒険者。
イヴァン(21歳):聖都シュティレーゼ、聖騎士団大隊長。
スレイヴ♂(41歳):共和国ランガルト、首都フラーテルギルド蒼穹の燕、団長。
ルチオ♂(30歳):王国シルヴェスタ、魔学研究機関ヴァールハイトハルク 最高責任者。
デュラハン♂(27歳):聖都シュティレーゼ、聖騎士団騎士副団長。
ユアン不問(22歳):共和国ランガルト、首都フラーテルギルド蒼穹の燕、団員。
セグレート♀(19歳):王国シルヴェスタ、王都エンジール、司祭。
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≪法国ルミナシア・聖都シュティレーゼ宮廷内廊下≫
(歩きながらの会話)
スレイヴ:「なぁ、ルチオさんよ。
これは、一体どうなってるんだ?」
ルチオ:「先程説明した通りですが。」
スレイヴ:「俺が聞きたいのはそう言う事じゃない。」
ルチオ:「では、なんですか?」
スレイヴ:「何故、このタイミングでシュティレーゼを利用して
魔物の調査をしてんのかって事だ。」
ルチオ:「愚問ですね。このタイミングだからこそですよ。」
スレイヴ:「お前さんが頭良いのは分かってるが、
俺みたいな奴にも分かりやすく、
もう少し噛み砕いて言ってくれないか。」
ルチオ:「ふむ、仕方ないですね・・・。」
(走ってくる)
セグレート:「(食い気味)ルチオさ~ん!
成功ですよっ、成功です!」
ルチオ:「二人共良いタイミングで来ましたね。」
ユアン:「スレイヴ!」
スレイヴ:「ユアン、そっちはどうだ?」
ユアン:「特に異常はないよ。それより一体何があったの?」
スレイヴ:「今聞いてる最中だ。」
ユアン:「わかった。」
セグレート:「ルチオさん、あの・・・。」
ルチオ:「どうしました?」
セグレート:「ラキアお姉さま達は・・・。」
ルチオ:「この混乱の中です、
救いを求めてやってくる信者達の相手で忙しいでしょうから、
後の事はこちらに任せて頂きました。」
セグレート:「わ、わかりました。」
ルチオ:「それでは、時間が惜しいので
移動しながら改めて説明させて頂きます。」
スレイヴ:「あぁ。」
イヴァン:「『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)』
第9話 闇の鼓動」
ルチオ:「では、何処から説明しましょうか。」
スレイヴ:「初めから頼む。」
ルチオ:「分かりました。今回の魔物の調査に関してですが、
以前から魔物の異変についての調査要請が
シュティレーゼ側からシルヴェスタに来ていたんですよ。」
セグレート:「そ、それで、ですね。
す、数日前からシュティレーゼにお、お邪魔してまして!
その話し合いを、さ、させて頂いてたんです。」
スレイヴ:「ってことは、今回の訳の分からない魔物の襲撃も、
シュティレーゼは承知の上だって事か。」
ルチオ:「そういうことです。」
ユアン:「何故このタイミングで調査を・・・。」
ルチオ:「此度の円卓会議は秘密裏に行われた事はご存知で?」
ユアン:「確か、公式にしなかったのは国民の不安を煽らないためですよね。」
ルチオ:「事態は集結し、落ち着いたようにも見えますが、
今も尚、人々の不安は続いています。
普通に生活している中でも
日常会話の変化や生活水準の低下を見ればわかります。」
スレイヴ:「確かにな・・・。
人付手に広がる情報程、信憑性に欠けるものは無いからな。」
セグレート:「う、噂って怖いですよね。」
スレイヴ:「各都市の要人が集まって会議をしてるとなっちゃ尚更だ。」
ルチオ:「それほど襲撃事件は大きな出来事なんですよ。
そして、その水面下で蠢いている
大きな闇の力は、我々の調査には必要不可欠でして。」
セグレート:「必然的に、こ、このタイミングになった訳なんです。」
スレイヴ:「・・・。」
ユアン:「闇の力?」
ルチオ:「ふむ。そうですね・・・
此方から質問させて頂きましょうか。」
スレイヴ:「ん?」
ルチオ:「例えば、突発的に不幸や悲劇に見舞われた人間が居るとしましょう。
勿論どのようなシチュエーションを想像するかはお任せします。」
ユアン:「はい。」
ルチオ:「その時、その人間が一番初めに抱く感情は何だと思いますか?」
ユアン:「不幸や悲劇・・・。
えっと。哀しみや恐怖、ですか?」
セグレート:「せ、正解です!」
ルチオ:「付け加えれば不安や憎悪といった類も入ります。
それらの目に見えぬ心の闇が、俗に言う闇の力です。」
スレイヴ:「闇の力の理念は分かったが、
それが今回の魔物と何の関係があるんだ?」
ルチオ:「遠目からしか確認出来ていないのですが、
あの種類の魔物は現在認識されているサイズで
小型~中型までが主流ですね。」
ユアン:「・・・と言うことは、
あの魔物の異常な大きさが関係してくるんですね。」
セグレート:「そ、そういう事です!」
≪結界前・目の前では大型の魔物が結界越しに暴れいている≫
サイアス:「うわっ!? こんなデッカイ魔物初めて見た!」
イヴァン:「サイアス、ボケッとしてんな! 住民の避難が先だ!」
サイアス:「りょ、了解!」
デュラハン:「サイアスさん、こっちです。
大聖堂の方に誘導してください。」
サイアス:「わ、わかった!」
サイアス:『みんな、此処は危険だ!
大聖堂の方に避難してくれ!』(遠くの方で誘導)
イヴァン:「おい、デュラン。一体どうなってんだ、
上からの指示が一切ねぇっておかしくねぇか?」(小声)
デュラハン:「そうですね。大型の魔物が
自らの意志で結界を壊しに来ると言った事例は
今まで聞いた事がありません・・・。
正直、どういった状況なのかも理解し兼ねています。」(小声)
イヴァン:「デュランも分かんねぇのかよ。ったくどーすんだ。」(小声)
デュラハン:「何か事情があるにしても、
この場で出来る事は限られています。
ですから、今はやれる事をしましょう。」(小声)
イヴァン:「分かった。」
サイアス:「イヴァン、デュランさん!(走ってくる)
こっちの避難は大体終わったけど。」
デュラハン:「ご苦労さまです。」
イヴァン:「後はあいつをどうするかだよなぁ。」
サイアス:「何か手でも考えてあるのか?」
イヴァン:「あったらとっくにやってるっつーの。」
サイアス:「だよな・・・はは。」
デュラハン:「しかし、一体何処から沸いて出たんでしょうか。」
イヴァン:「気配が無かったって言うか、行き成り現れたよな。」
サイアス:「ん~。」
デュラハン:「どうしました?」
サイアス:「あのデッカイ魔物、俺達が見つけた時より
おっきくなって無いか?」
イヴァン:「っ! そういや、城壁越しからじゃ
確認できないサイズだったような・・・」
デュラハン:「今は頭一個分飛び出ている状態ですね。
この短時間で成長を? いや、そんな筈は。」
イヴァン:「見間違えじゃねぇのか?」
サイアス:「えぇ? そうかな。」
デュラハン:「・・・。」(難しい顔をする)
サイアス:「それにさ。」
イヴァン:「今度はなんだ?」
デュラハン:「はい?」
サイアス:「さっきからずっと同じ場所で
動いてる様にしか見えないんだけど。」
デュラハン:「どういうことでしょうか?」
サイアス:「本気で結界を壊すつもりなら、
この前襲撃があった場所と同じ所を攻撃すれば
すぐ壊せるのにな~って思ってさ。」
デュラハン:「そうですね。
この魔物は全くそういった意図を見せずに、
ただ、ひたすら攻撃を繰り返しているだけ・・・。」
イヴァン:「よくよく見れば、
結界にダメージが入ってるようにも見えねぇしな。」
デュラハン:「今の所、それが幸いしていますね。」
サイアス:「俺らはどうするんだ?」
デュラハン:「もう少し様子を見てみましょう。
何か動きがあるかもしれません。」
サイアス:「わかった。」
≪宮廷入り口≫
スレイヴ:「成る程。そういう事か。」(ボソボソ)
ルチオ:「どうやら、大分見えてきたようですね。」
セグレート:「さ、流石です!」
スレイヴ:「あぁ、仕組みまでは分からないが。
認識下の魔物があそこまで異常を既たしたのは、
闇の力の影響によるものなんだろ。」
ユアン:「そんな事ってありえるの?」
スレイヴ:「どうだろうな。俺も半信半疑だ。」
ルチオ:「まぁ、簡単に言えばそういう事ですね。」
スレイヴ:「あれは、元の性質が変わったって事なのか。」
ルチオ:「恐らくは。まだ明確な結果が出ている訳ではないので
推測でしかお答え出来ませんが。」
スレイヴ:「んで、どうやったんだ?」
ルチオ:「まず結界内に魔方陣を張り、
そこに先日の襲撃事件で発生した闇の力を集結させます。
そして、次に結界外に結界内に張ったものとは別の魔方陣を
数箇所に分けて設置し、集めた闇の力を魔方陣内に放出し留まらせます。
そこに魔物が入るとどのような変化が起こるのか、
そして、それによって結界内にいる人間に
どのような影響を及ぼすか・・・ですね。」
スレイヴ:「それが、調査の概要ってわけか。」
ルチオ:「はい。」
ユアン:「話が壮大過ぎて、現実味が無いというか・・・」
セグレート:「ふ、不思議ですよね!
それでも、魔物は元々闇の眷属ですから
闇の力に引寄せられて、ぱ、パワーアップしたとしても
おかしくはな、ないんですよ?」
ユアン:「確かに、そう考えると分かりやすいですね。」
ルチオ:「我々は、魔物と闇。
そしてそれら利害の根源であろう人の心・・・。
此等を“負の連鎖”と呼称しています。」
スレイヴ:「負の連鎖、か。」
ルチオ:「私は今回の結果をまとめる為に
一度本国に帰省しようと思ってますが。」
セグレート:「・・・?」
ルチオ:「あぁ、もっと詳しく知りたければ、
空中都市ソミュアにある私の研究機関へ歓迎しますよ?」
ユアン:「あの、先程から気になってたんですが。
研究機関で依頼されていると言う事は、
国家機密に成り兼ねない内容なんですよね。
そんな大事な話を僕達にしても大丈夫なんですか?」
ルチオ:「えぇ。まだ嫌疑は掛けられたままですし、
協力すると言った以上、必要最低限の助力はさせて頂きます。
勿論、私の独断かつ偏見で情報の流出上限はありますけど。」
セグレート:「そ、それに。わ、私たちも全ての成果を、
得られているわ、訳では・・・ないので。」
ユアン:「分かりました。今は余り追求しない方が良さそうですね。」
セグレート:「ご、ごめんなさい。」
スレイヴ:「取り合えずだ。今は平気そうだが、
その内、あの魔物が結界を破って
中に侵入してくるって可能性は考えてなかったのか?
現状、危険には変わりないだろ。」
ルチオ:「あぁ、その心配ならいりませんよ。」
スレイヴ:「どういうことだ?」
セグレート:「一回、魔方陣に入った魔物は、
そこから出れないように、なってるんです!
そ、それに、一つ効果が発動すると、
これ以上、ふ、増えないように、
他の魔方陣は消滅する仕組みになっているので・・・」
ユアン:「これ以上大型の魔物が増える心配が無いって事ですよね?」
セグレート:「は、はいっ!」
スレイヴ:「どっちにしろ、早く片付けた方がよさそうだな。
害は無いとしても、
長引けば長引くほど住民の不安を募らせるだけだ。」
ルチオ:「そうですね。」
《聖騎士団メンバーと合流》
サイアス:「あれ? 誰か来たけど。」
イヴァン:「ん?」
ルチオ:「聖騎士団の方々ですね、お疲れ様です。」
セグレート:「お、お疲れ様です!」
ルチオ:「住民の避難は終わりましたか?」
デュラハン:「はい、終えています。
ですが、此処へはどのような(要件で・・・」
ルチオ:「(食い気味)あぁ、申し遅れました。
私はシルヴェスタの、
魔学研究機関ヴァールハイトハルクから来ました
ルチオ=カサモラータです。」
セグレート:「お、同じくセグレート=ソヴァールと、も、申します。」
サイアス:「あれ・・・?」
イヴァン:「あん? どうした。」
デュラハン:「こ、これは申し訳ありません。
私はデュラハン=アーヴァンクです。
聖騎士団クレスティアシュトルツの副団長を任されています。」
ルチオ:「それなら話が早いです、
我々はあの大型の魔物を排除しにきました。
今回、貴方たちの他にフラーテルの、
ギルド蒼穹の燕(エンペリアン シュヴァルベ)の
スレイヴ=グローリアさんと
ユアン=イグニスさんに協力して頂きます。」
デュラハン:「了解しました。」
ユアン:「微力ながら協力させて頂きますね。」
スレイヴ:「あぁ、よろしくな。んで、
そちらさんはギルドへの依頼という形でいいのか?」
ルチオ:「その方が話が進みやすいと思いまして。」
スレイヴ:「確かに。後で請求書はしっかり回させて貰うからな。」
ルチオ:「勿論そのつもりで・・・」
サイアス:「(食い気味)あぁああああ!」
(頑張って同時に)
セグレート:「ふぁっ!?」
イヴァン:「いぃっ!?」
サイアス:「先生っ!!?」
スレイヴ:「ん?」
ユアン:「先生・・・?」
サイアス:「俺だよ、サイアス!」
スレイヴ:「お前・・・サイアスか!
随分デカくなったな、いやぁ全然気付かなかったぜ。
元気にしてたか?」
サイアス:「この通り、ピンピンしてるよ。ところで先生はどうして此処に?」
スレイヴ:「あ、あぁ・・・、相変わらずだな。」(呆れ)
イヴァン:「おいコラっ!」(後ろからド付く)
サイアス:「あでっ!」
セグレート:「い、痛そう。」
ユアン:「ははは。」(苦笑)
イヴァン:「人の話し聞いてなかったのか?
これからあのデッカイ魔物を排除するって言ってただろ!」(小声)
サイアス:「そ、そっか。」
ルチオ:「(咳払い)話を、進めて良いですか?」
デュラハン:「も、申し訳ありません。」
スレイヴ:「積もる話もあるだろうが、これが片付いた後でな。」
サイアス:「うん、分かった。」
ルチオ:「セグレートさん、内側の魔方陣はどうなってますか?」
セグレート:「え、えっと・・・(気配を辿る)
役目を終えて消滅しています。」
ルチオ:「分かりました。
皆さん、これからあの大型の魔物を排除するに至って、
私が指揮をとらせて頂きますがよろしいですね。」
(出来れば同時に)
デュラハン:「はい。」
イヴァン:「了解です。」
ユアン:「分かりました。」
サイアス:「了解!」
セグレート:「は、はい!」
スレイヴ:「あぁ。」
ルチオ:「(返事を確認して小さく頷く)
それでは、作戦会議を行います。
まず始めに、私があの魔方陣から魔物を開放しますので
その後、注意を引きつつ目的地まで誘導して頂きます。
その役目は瞬発力の高い人員にお任せしたいのですが。」
デュラハン:「それでしたら、
ラングフォード隊長とサイアスくんが適任でしょう。」
イヴァン:「了解。」
サイアス:「誘導係か、任せろ!」
ルチオ:「誘導している間にセグレートさんには
別の場所で魔法の準備をして頂きます。」
セグレート:「は、はい!」
ルチオ:「待機場所は結界の外なので、
魔物が襲ってくる恐れがあります。
ですから、その護衛を二人ほど。」
スレイヴ:「護衛だったら俺とユアンで十分だろ。」
ユアン:「セグレートさんの護衛ですね。了解しました。」
セグレート:「よ、宜しく、お、おおお願いします!」
ルチオ:「私が魔方陣を解いている間の護衛は一人で十分ですので
アーヴァンク副団長にお任せします。」
デュラハン:「分かりました。」
ルチオ:「チャンスは一回です。皆さん頼みましたよ。」
セグレート:「が、がんばります!」
《魔物の目の前》
サイアス:「うひゃっ!? 近くまで来ると迫力あるなぁ。」
イヴァン:「サイアス、上手くこいつを引き付けるんだぞ!」
サイアス:「分かってるって。」
イヴァン:「失敗して暴れ回られちゃ手に負えなくなるからな。」
デュラハン:「確かに、そうですね。
一発逆転出来るくらいの火力があれば
問題はなさそうですが。」
ルチオ:「伝説の神具なら、或いは可能かもしれませんね。」
サイアス:「へぇ、あれってそんなに凄いんだ。」
ルチオ:「・・・それでは始めますよ。」
イヴァン:「了解です。」
デュラハン:「了解しました。」
サイアス:「おうっ!」
ルチオ:「『瘴気に捕らわれ、絶え間なき咆哮を奏でし漆黒の悪魔よ、
慈悲深き楔、呪縛の棺より解き放たれん。
憤怒たる殺意の雷鳴を打ち鳴らし、彷徨う戦鬼となれ
オブリーオディアリテ』」
サイアス:「お、魔方陣が消えた。」
イヴァン:「あ?」
デュラハン:「ん、何か様子が・・・」
サイアス:「めっちゃ怒ってないか!?
こっち睨んでるし!」
イヴァン:「今にも走り出しそうだな。」
ルチオ:「あぁ、間違えました。魔方陣を解くだけのつもりが、
怒りの促進効果まで付いていたようですね。」(微笑)
デュラハン:「ま、間違えたってどういう・・・」
サイアス:「(食い気味)うわっ、き、来たぁあっ!!」
イヴァン:「注意を引く手間が省けてよかったじゃねぇか。」(走り始める)
サイアス:「へぇっ!?」
イヴァン:「サイアス、走れ! 潰されるぞ!」(走る)
サイアス:「ちょ、ちょっと待てって!」(追いかける)
ルチオ:「いやぁ、若者は元気ですね。」
デュラハン:「これも、作戦に含まれているんですか?」
ルチオ:「どうでしょうかね。 さて、我々も向かいましょう。」
デュラハン:「りょ、了解しました。」
《一方そのころ》
ユアン:「今の所、こっちへ向かってる気配はないみたい。」
スレイヴ:「まぁ、何も無いに越した事はないだろ。」
ユアン:「うん。」
セグレート:「『蒼氷の洗礼 シュピラーレグラスト』
っと、こ、これで下準備はおっけーです!」
ユアン:「お疲れ様です、後は魔物が来るのを待つだけですね。」
セグレート:「は、はい。」
ユアン:「それにしても、下準備が必要な程大掛かりな魔法なんですね。」
セグレート:「あ、あれくらいの大きさを一発で仕留めるってなると
中級魔法、以上は・・・ひ、必要になって来るんですよ。」
スレイヴ:「お、地響きがしてきたな。」
セグレート:「き、緊張してきましたっ!」
ユアン:「あれ? 近づいて来る音が凄く早くない?」
スレイヴ:「そう、だな。」
セグレート:「あ、見えて来ました!」
ユアン:「二人とも何か言ってるけど、地響きで聞こえな・・・」
(突然と大型の魔物が見え出す)
スレイヴ:「おいおいおいっ! 猛突進してきてんじゃねぇか。」
ユアン:「これって、此処で足止めしないと失敗って事になるのかな。」
セグレート:「ど、どどどどどうするんですか!?」
ユアン:「取り合えずセグレートさんは詠唱の続きを。」
セグレート:「は、はい!
『古代の深海より奏でし賛美歌 響くは破滅の旋律・・・』」
サイアス:「うわぁああ、と、止まんないぞ!? どうするんだ?」(走りながら)
イヴァン:「私らはあくまでも囮だ、
そんなもん目的地に着いてから考える!」
サイアス:「そういう場合じゃないだろ!?
この勢いで突っ走ったら確実に通り過ぎるって!!」
イヴァン:「分かってるっての! ったくしゃあねぇな、
サイアスお前一人でこいつを引っ張れ!」
サイアス:「はぁ!? えぇえええ!?」
イヴァン:「ふっ!(勢いに任せて魔物に飛び乗る)
っと、邪魔すんぜ。」
セグレート:「『地に伏す穢れた魂に裁きと滅びの言霊を・・・』」
イヴァン:「もう少しゆっくり走れよ、このデカブツ、がっ!!」
(魔物の目玉に剣を突き刺す)
ユアン:「あっ! 動きが少しだけ揺らいだ。」
スレイヴ:「あれくらいの減速じゃたりねぇな。」
ユアン:「どうするの?」
スレイヴ:「依頼額、倍増請求決定だ。」
ユアン:「え?」
スレイヴ:「まぁ、見てろ。」
(走って来ている相手に向かって)
スレイヴ:「そこの嬢ちゃん、危ねぇから離れてくんねぇか?」
イヴァン:「何する気だ!?」
サイアス:「ははっ! イヴァン! 先生に任せとけば大丈夫だ!」
イヴァン:「あん? わかった! よっ・・・と。」(地面に着地)
スレイヴ:「『竜章鳳姿(りゅうしょうほうし) 虚無なる空に
光芒たる一閃を顕現せよ クーゼ』」
イヴァン:「なっ!? 空間から武器を呼び出したのか!?」
ユアン:「スレイヴ、任せても良いの?」
スレイヴ:「あぁ、軽く行って来る。」
サイアス:「せ、先生!」
スレイヴ:「サイアス! そのまま走って来い!」(サイアスに向かって走る)
サイアス:「へっ!?」
スレイヴ:「ちょっくら頭借りるぞ、っと。」
(一度飛んでサイアスの頭を踏み台にして更に飛ぶ)
サイアス:「あでっ!?」(そのままぶっ倒れる)
イヴァン:「へぇ、凄い跳躍力だな。 魔物の頭上を上回るなんて。」
スレイヴ:「『明鏡止水(めいきょうしすい)震えろ
現世の不浄を払わん 虚栄の闇を葬り去り
紅の飛沫となれ オルヴィート』」(空中で構えながらの詠唱)
セグレート:「『雄大なる竜鱗の煌きと共に災渦の閃光となれ』」
スレイヴ:「でりゃああああっ!」(加速して魔物を突く)
ユアン:「っ、完全に動きが止まった!」
スレイヴ:「よっこらせっと。」(着地)
イヴァン:「今だ!!」
セグレート:「は、はい! い、行きますよ~っ
『ロハナ リェプール アーディン!』」
スレイヴ:「おぉ、ド派手だな。」
ユアン:「ラングフォード隊長とスレイヴの一撃があったにしろ、
あの大きさを一瞬で消滅させるなんて・・・。」
サイアス:「すっげぇ威力。」
スレイヴ:「お疲れさん、二人共中々だったぜ。」
イヴァン:「有難うございます。」
セグレート:「はいっ!」
サイアス:「・・・うぐっ。」(地に伏したまま)
ユアン:「大丈夫ですか? 思いっきり踏まれてましたけど。」(手を差し伸べて)
サイアス:「だ、大丈夫。サンキュ(手を取り起き上がる)
っと・・・、なんとか成功したな。」
セグレート:「よ、よよ良かったです!」
(遠くから歩いてくる)
ルチオ:「(軽く拍手をしながら)
いやいやいや、お疲れさまです。見事に成功しましたね。」
デュラハン:「皆さんお疲れさまです。」
スレイヴ:「まさか、俺まで出る羽目になるとはな。」
デュラハン:「申し訳在りません、私が此方の護衛に付けば良かったですね。」
スレイヴ:「いや、その辺は気にしなくて良い。
久し振りに運動出来たからな。」
デュラハン:「しかし、貴方の戦闘力を目前にして納得しました。」
スレイヴ:「何を納得したんだ?」
デュラハン:「以前、ラングフォード隊長から、
サイアスくんの戦闘の筋が良いと言う話を伺っていたので。」
サイアス:「先生の教えは、一応守ってきてるし。」
スレイヴ:「そうか、お前も精進してるみたいだな。」
デュラハン:「そうみたいですね。」
ルチオ:「今日が初顔合わせとは思えない程の
見事な連携プレイでしたよ。
セグレートさんもご苦労様です。」
セグレート:「あ、ありがとうございます!」
ルチオ:「さて、私はラキアさんに報告を済ませたら
帰国する予定ですので、このまま行かせて頂きますよ。」
デュラハン:「ラングフォード隊長。」
イヴァン:「ん?」
デュラハン:「カサモラータ殿の護衛を。
私は上の方々への報告が在りますので
別行動をさせて頂きます。」
イヴァン:「了解。」
ルチオ:「わざわざ申し訳在りません。」
セグレート:「る、ルチオさん。あ、あの私は・・・ど、どうすれば!?」
ルチオ:「セグレートさんは、このままシュティレーゼに留まって下さい。
貴方を協力要員として置いていくことにしましたから。」
セグレート:「わ、わわわ私が、ですか!?」
ルチオ:「えぇ、ですから今のうちに交友を深めておくと良いですよ。」
セグレート:「わ、分かりました。」(しょんぼり)
サイアス:「デュランさん俺たちは?」
デュラハン:「あぁ。そうですね。」
スレイヴ:「こっちの事は気にするな。好きにやる。」
デュラハン:「分かりました。」
ルチオ:「それでは、行きましょうか。
セグレートさん頼みましたよ。」(去る)
セグレート:「は、はい!」
デュラハン:「では、お先に失礼します。」(去る)
スレイヴ:「おぉ。」
イヴァン:「失礼します。」(去る)
≪サイアス・ユアン・セグレート・スレイヴ≫
ユアン:「一段落って所かな。」
スレイヴ:「だな。」
サイアス:「そう言えば、さっき話しが途中だったから聞きそびれたけど、
なんで先生が此処にいるんだ?」
スレイヴ:「あぁ、そうだったな。実は円卓会議に出席してたんだ。」
サイアス:「円卓会議って偉い人が集って話し合う所だろ、
出席って・・・先生が?」
スレイヴ:「そこも話さないといけないのか。
今な、ランガルトにある首都フラーテルでギルド団長やってんだ。」
サイアス:「へぇ~! やっぱ先生は凄いなっ。」
スレイヴ:「その、先生っての辞めないか?」
サイアス:「なんで?」
スレイヴ:「お前に槍術を教えてたのは十数年も前の話だろ。」
サイアス:「じゃ、なんて呼べば良いんだよ。」
スレイヴ:「名前で十分だ。」
サイアス:「う~ん、分かった。」
スレイヴ:「それで、だ。こいつがギルド団員の一人。」
ユアン:「もう一仕事終えた後ですけど・・・
初めまして、ですね。」
サイアス:「あ、そう言えば自己紹介まだだったよな?
俺はサイアス=ロクスウェル。」
ユアン:「僕は、ユアン=イグニスです。」
セグレート:「わ、私はせ、セグレート=ソヴァール、で、です!」
サイアス:「ユアンにセグ、か。うん。宜しくな!
みんな歳近いみたいだし
お互い、堅苦しい敬語とか無しにしよう!
なんて言うか・・・俺が得意じゃないからさ。」
ユアン:「う、うん。分かった。」
セグレート:「よ、宜しくお願いします!!
あ・・・敬語はな、なれるように・・・します!」
スレイヴ:「上々だな。若者同士仲良くやれよ?
ん、そうだ。ユアン。」
ユアン:「なに?」
スレイヴ:「お前を此処に留まらせとく事にしたからな。」
ユアン:「うん、わかった。
僕もシュティレーゼの協力要員として滞在してれば良いんだよね?」
スレイヴ:「あぁ、俺も今回の報告があるし、
ハザルを探し出してフラーテルに帰国する。
その後の事は書状でやり取りするからな。」
ユアン:「了解。」
スレイヴ:「そういや、サイアス。」
サイアス:「ん?」
スレイヴ:「お前こそ、なんで此処にいるんだ?
爺さんはどうした。」
サイアス:「爺ちゃんなら、3年前に死んだよ。」
スレイヴ:「そうか。俺も一度挨拶に行ってやるか。」
サイアス:「うん、爺ちゃんもきっと喜ぶよ。」
スレイヴ:「もっとも墓前への挨拶じゃ、遅い気がするがな。」
サイアス:「爺ちゃんが居なくなった事も含めて、色々あってさ。
ヤシュムと一緒に兄貴を探しに聖都に来たんだけど、
すれ違いだったんだよ。」
スレイヴ:「そうか、それは残念だったな。」
サイアス:「・・・うん。」
スレイヴ:「しっかし、サイアス。 お前成長したなぁ。
ちっせぇ頃はただ突っ走るだけの悪餓鬼だったが。」(微笑)
サイアス:「なっ、俺だってもう17だし! 少しは変わるって!」
スレイヴ:「くくっ、そうかそうか。」
セグレート:「と、とても仲睦まじいですね。」(微笑)
ユアン:「本当に。息が合ってる。」(微笑)
サイアス:「何か複雑な気分なんだけど。」
スレイヴ:「んで、どういう成り行きで聖騎士団にいるんだ?」
サイアス:「あぁ、えっと。
俺がヤシュムと一緒にいて、神具の持ち主だから・・・かな。
アルシャディア救済の手伝いをすることになったんだ。」
ユアン:「っ!」
セグレート:「あっ!」
スレイヴ:「ほぉう。 サイアスの事だったのか。」
サイアス:「・・・え?」
スレイヴ:「いんや。 随分と大任を任されたみたいだな、頑張れよ。」
サイアス:「うん、頑張る!」
ユアン:「それじゃ、暫くは聖騎士団の仕事を一緒にする事になるかもしれないね。」
サイアス:「そうだな!」
セグレート:「わ、わわわ。ドキドキしますっ!」
スレイヴ:「んじゃ、俺らも一回宮廷に戻るか。
今後の動きも確認しないといけないしな。」
サイアス:「おう!」
ユアン:「分かった。」
セグレート:「は、はいっ!」
ルチオ(M):「深い常闇で蠢いていたものが地上を目指し鼓動を始める。
それと同時に今は若き苗木達は、
幾多の成長を遂げ地を慣らす大木になるだろう。」
デュラハン:「次回『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)』
第10話 惑わされし罪」
イヴァン:「えっと・・・なんだ。別に怒ってるわけじゃ。」
セグレート:「い、いえ、ああああのっす、すいませんすいません。」
サイアス:「イヴァン怖いからなぁ。」
イヴァン:「お前は黙ってろっ!」(腹ぱん)
サイアス:「うげふっ。」
セグレート:「あ、あのあの・・・ああわわわわ。」
*0*-00-0*0-00-*0*-00-0*0-00-*0*-00-0*0-00-*0*-
『Histoire of Eternto(イストワール オブ エテルノ)』公式HPはこちら
https://iroha0710sakuraba.wixsite.com/hofe
【ボイスドラマ/第9話 闇の鼓動】
niconico:http://www.nicovideo.jp/watch/sm32779395
YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=lrKMeFF6YQo&t=103s
MQube:https://mqube.net/play/20180227333614
*0*-00-0*0-00-*0*-00-0*0-00-*0*-00-0*0-00-*0*-
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