口の中にふくむ
収束したと思って僕は彼女と屋上で話す。
「あの情報を流したのは君だろ?」
僕は鎌をかけた。なんとなく、そう思ったから。
「えぇ、そうよ。私たちの噂もなかなかインパクトがあったみたいだから、もっとインパクトが大きいものにしたの。」
「そうか、でももう少しやり方なかったのか?」
僕は流石にC男が可哀想に思えた。
「どのみちC男は私のこと好きだったみたいだし、どこかでけりつけないと。あと、みんなの心が離れていきそうだったしね」
「ふーん、そうかい」
彼女には彼女の事情があると思って僕は深く突っ込むのをやめといた。
「それに私ね、好きな人がいるから」
この言葉に僕の心はザワザワした。何て言っていいか分からない。今ではそのザワザワが何なのか分かっている。でも、その時の僕は分からず、認めたくなかった。
その言葉を聞いた日から彼女と僕との距離は大きく開いた。
僕はその言葉によって今まで通りに接せなくなった。そして、彼女はその変化を感じ取って屋上に来なくなった。彼女はそれによって僕が変わらないと信じていたから。
それから夏休みが過ぎ、2学期になった。
相変わらず、僕は時たま屋上にサボりに行き、彼女はクラスの中心にいて、炭酸水を飲んでいた。
そんなもう、交わることのない日常が急激に交わり変化することになる。
それはクラスでの彼女とその取り巻きの話だ。
「そういや、彼女ちゃんは何でC男くんのこと振ったの?」
もう、終わったと思っていた話題が掘り起こされた瞬間だった。一気に教室が静かになった。
その質問の答えは彼女が僕たちの噂を消すのに使った手法だった。
「もちろん、C男くんの気持ちはありがたいけど私には、凄く好きな人がいるから」
それは油をばらまいていたものに火をつけるのと同じ行為だった。
「えぇ! ほんと! 誰々?」
僕ですら聞き耳をたてた。
「今は距離が出来てるから、それにその人に嫌われたくないし」
それは僕のことだとすぐに分かった。それは周りの人間もそうであった。
その事で周りの人間は僕と彼女をくっつけようと躍起になった。
きっとみんな彼女の手のひらの上だったのだろう。
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