19 Day 2
「さて」
急いで買って来た荷物を大量に広げながら、藤崎はこれからの事をもう一度考える事にした。少なくとも、バイト先は避難先としては使えなかった。店長が感染しバイトリーダーも噛まれた今では避難は無理だろう。状況は刻一刻と悪化している。
しかし、幸運にも仲間が今隣にいた。バイト先で知り合った友人の三谷だった。
「これからどうする?逃げるか?立て篭もるか?」
「出来れば立て篭もりたいな」
三谷は続けた。
「少なくとも俺がいて、お前がいる。2人体制ならどちらかが休んで、どちらかが見張りに立てる。篭城するにはもってこいだ。ここ2階だろ?」
確かに、と藤崎は思った。藤崎の自室はアパートの2階にあった。出入り口は一つだけだが、通路側に窓がなく、部屋にはベランダも付いてないので守るのも簡単で、出るのも簡単であった。窓から飛び出せばすぐに脱出も出来るからだ。
「食料が調達できれば御の字だが……2人に増えたらもっとかき集めないとな」
「でも、篭城してもパニックが収まらずに事態が悪くなるだけだったら?」
藤崎の言葉に、三谷は「それもそうだ」と答える。
「だったら脱出だな。俺は免許があるからどっかで車を調達すれば大丈夫だ」
藤崎はそう続けるが、三谷は渋い顔をする。
「多分、どこも脱出する奴で一杯になるから車は却って足手まといだ。第一、どうやって調達する?ガソリンは?道は?」
問い詰められて藤崎は言葉に詰まった。
「自転車がある、脱出するならそれにしよう。少なくともガソリンはかからないだろうし、小回りも効くだろう。車について考えるのは広い道に出てからだ」
「それで決まりだな」
携帯の地図アプリを見ながら、2人は次に避難先を決める事にした。とは言え、どこへどう逃げるか、それが一番の問題だったが、2人には共通する避難先があった。北海道だった。
藤崎に実家は無い、と言うのも、彼の実家は3.11の際に津波で流されてしまい、残った家族は親戚のいる北海道へ移住した。三谷の実家も北海道で、都会へ進学後に職を見つける為に留まっていた。
「北海道まで移動するのは大変じゃないか?」
藤崎の言葉に、三谷は頷く。
「だが、少なくとも本州からは離れてるし広いから避難するにも持って来いだろ?」
それは言えていた。答えはすぐに決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます