06 Day 1
いつも通りの目覚めだった。藤崎は午後の1時、いつものアパートの一室で目を覚ますと、歯を磨いてから“朝食”をとった。昨日の夜に買った特売品の惣菜と、レンジでチンしたパック飯を食べながら、携帯でSNSをチェックする。
いつもの日課だったが、藤崎はふいに食事の手を止めた。SNSの検索ワードランキングを見てみると、普段では見ないようなワード……「発砲事件」「山の手線」「運行停止」と言ったものが並んでいる事に気が付いた。
その中に、躍り出る「ゾンビ」というワード。藤崎は好奇心に駆られてそのワードをタップし、情報を漁った。
[りょーちん @f2gg6kj 二時間前
山の手線で傷害事件?があったらしい、あたり一面血まみれだったし、何人か噛まれたらしい。マジでゾンビみたいだ。]
[アックス @fullpack_15 二時間前
電車が緊急停止して何事かと思ったら3両先で乗客がオッサンに噛み付かれたらしい。しかも今度は別のやつがゾンビみたいに噛み付いたみたい。床も座席も全部血だらけ。]
画面をスクロールして情報を漁っていたが、食欲を失いそうになる写真を見かけそうになり、藤崎は携帯を置いて食事を再開した。内心、やばい事件が起こっているな、という興味と不安があったが、それよりも食事と今日の出勤について考えるのが最優先だった。
と、その矢先に携帯が鳴る。バイト先からの電話で、名前から店長であるとわかった。箸を置いてから藤崎は電話に出た。
「はい藤崎です」
『あ?藤崎くん?今電話大丈夫?』
飯の途中ですが、と言い掛けたが、堪えて「大丈夫です」と答えた。
『今日のシフトだけど、悪いけど取り消しって事でいいかい?今日は休みで』
「え?休みってどういう事ですか」
本来なら、今日は夕方から深夜までのシフトに入る予定だった。それがいきなり出勤直前に無しになったのである。最近では、人手が足りないから急遽入ってくれ、と言われる程であったのに、だ。
『実は店に来たお客さんが暴れて、怪我人が出たんだ……それで急遽今日は閉める事になった、また明日追って連絡するよ』
店長の言葉に、思わず藤崎は衝撃を受けた。今の勤務先――駅前の漫画喫茶では確かに客とのトラブルは無くも無かったが、今回のトラブルは今まで遭遇した事のない出来事であった。
「店長は大丈夫ですか?怪我は無いんですか?」
『ちょっとだけ怪我はしたけど大丈夫です。なるべく早くには営業を再開したいので……ちょっとこれから警察の人と話があるから。とりあえず追って連絡するので、今日は休みという事でよろしくお願いします』
「はい……」
通話が切れ、藤崎は思わず先ほどのSNSの投稿を思い出していた。
「まさかな……まさか……」
まるで昔見た映画みたいだ、と心の中で思っていた。それにしても出来すぎた話だ、と思いつつも、藤崎は心中でそわそわし始めていた。昨日の出来事が鮮明に脳裏を過ぎる。思わず、普段ならジョークで片付けるような考えが頭を過ぎる。
――武器になるもの、家にあったっけ?
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