第2星 目指すはサルソ
「それじゃ行ってきます」「行ってくるよ」
「気を付けてなぁ」「何時でも帰ってきていいんだからなぁ」
祖父母に挨拶を済まし外にいる皆と合流するとミンソンが
「母親には挨拶していかなくていいの?」
「あぁ母さんには前々から王国行きの話は済ませてあるからな」
母親のシスマが王国行きをそんなに賛同してなかったせいもありウェイはそんなシスマから説得されたらクードの決心も鈍るのではないかなと言う思いもあった。
「さーてとまずは王国リャンリャンを目的地に出発だ」
「そうなると徒歩で林道を抜けてからサルソの街で公共交通機関利用して一気にリャンリャンって感じだね」
チアイがそう言い終えると
「まぁ正直この時間だと林道と言うよりは獣道って言いたくなるけどな」
「まぁそう言うなよウーラ この辺は大人しいモンスターばかりだし気楽に行こうぜ」
ウーラは頷くとミンソンを見て
「お前旅に出るってのになんでロングスカートなんだよ」
「これは別に汚れても破れてもいいやつだから」
「いやいやそんな事言ってるんじゃなくて動きづらいだろって話よ」
「ウーラにそんな心配してもらわなくても結構 それに裏地にはアイテムも仕込んであるから便利なんだからね」
ウーラはそれを聞くと両手を腰の上辺りまで上げて顔を左右に振った。
会話をしている内に街の出口のアーチまで来ると警備をしているおじさんが
「夜狩りでも行くのか?」
「いやーこれからサルソまで行こうかと思ってさ」
「サルソまでかそれなら早朝に出発した方が危険度も低いんじゃないか?」
「どんなに急いでも約1日かかるからこのまま行きます」
「そうかそうか 気を付けてな そこからマジックランタン持っていって構わないからな」
「ありがとうございます」「ありがとう」「あざっーす」
全員がマジックランタンを手にすると林道へと足を踏み入れる。幼い頃から此処等は遊び場としても何度も来ていたので5人にとっては庭みたいな感覚であった。大型の肉食獣も居らずたまに出合ったとしても小型なので多少の心得さえあれば何ら問題なくサルソへと向かえるのだ。
「懐かしいなぁ皆でこの辺で遊んだよなぁ」
「そうそうチアイが滅多に出くわさない肉食獣にばったり会った時はやばかったよな」
「そんなこと言ったらウーラだって親父の刀剣勝手に持ち出して森で無くした時もひどく怒られてたよね」
「忘れてくれ」
皆がどっと笑い出す。5人が持つマジックランタンが幾度と往来されてきた林道を照らす。
「このペースで向かってサルソで休みを入れてからリャンリャンだな」
「聞くけどリャンリャンに着いたらウェイは即ギルド申請だすの?」
ミンソンがウェイを見つめて問う。
「そうだなぁ 俺達5人全員を入ギルさせてくれるとこが有るならそこも一つの選択肢にしたいとは思ってる」
「ではそのようなギルドが見つからなかったら?」
今度はウーラが聞いた。
「俺達5人を初期メンバーとして申請を出して作るさ」
「その場合は知名度的に直ぐには仕事も取れない可能性あるし他のギルドに臨時出向等しないと厳しそうだね」
チアイがそう口にした。
「心配は他にもあるわよ お金が無くなったら身動きも取れなくなるしお風呂にも入れないじゃない」
「さすがに風呂にも入れない位に困窮したら俺の所持品売って風呂代金位は作ってやるって」
クードがそう言うとあんたじゃないと感じるような視線を浴びせられたが、そっと目をそらした。
「どんな大きなギルドも最初は小さかっただろうしまずはやれる範囲でやってみよう 今あれこれ悩むのもいいが実際に事に当たって見ないと分からないこともあるだろうからな」
ウェイが発言すると皆が納得した。
「夜が明ける頃に交代で仮眠をとろうか」
「休みいれるのか?」
「特に急いでる訳でもないから無理せず行こうかなと思ってな これも多人数の強みってやつだろ」
ウェイの意見に反対する者は居なく皆が賛同したが結局最初の仮眠休憩を取ったのは正午であった。ウーラとクードを残し皆が簡易型寝袋で横になった。
「なぁクー あれから能力に磨きはかけたのか?」
「いや結局どこ行っても空回りで最近じゃ使いあぐねているよ」
「そっか摩擦を強くするって凄い能力だと思うんだけどな」
「今のとこ役に立ったのは列車を緊急停止させる時だけだったね それ以来ずっと同じ持ち場に配属されてたんだけどある日に線路に落ちたじいさんがいてさ摩擦強化で列車を止めたのはいいんだけど余りにも摩擦が強かったために列車内にいた大勢の人が怪我をしてしまったんだ」
「それでも死人は出なかったんだろ?クーの功績じゃないのか」
「勿論人名救助と言う名目でニュースになったので特にお咎め無しで終わったんだけどさ もしかしたら死者が出てたのかも知れないって考えたらその責任に耐えられたのかなって強く思ってしまってさ」
「なるほどな それで辞めたんだな」
「後はもう短期で点々としてさ……」
クードはそこで言葉を濁してウェイが迎えに来てくれたことを言わなかった。
ゴソゴソバサッ
「あー快眠だったぜ」
ウェイが起き上がり二人を見て
「交代するぞ二人とも休んでくれ」
「一人で大丈夫なのか」
ウェイはニヤリと笑い
「大丈夫じゃなくなったらウーラお前から真っ先に叩き起こしてやるから安心しろ」
「ありがたいことで それじゃ休ませてもらうぜ」
「兄貴頼むな」
二人が横になり寝付いた頃になるとミンソンが目を覚まし起き上がった。
「ふぁー寝たぁぁ お風呂入りたいな」
「ははっ風呂はサルソまで我慢してくれ」
「うんうん」
ミンソンは横目でちらりとウェイを見ながら頷いた。
「ねぇウェイはどうして女の私なんかを誘ってくれたの?」
「ん 女だってギルドではバリバリに仕事こなしているし差別はよくないぞ」
そんな正論は聞くまでもなく分かってるとミンソンは思った。同時に実は少し前に目を覚ましたチアイも同じことを思った。だがチアイは二人の空気をよんで狸寝入りしていることにした。
「ん まぁそうなんだけどさ嬉しかったんだ誘ってくれて」
「小さい頃から遊んできたからな きっと一緒に行きたいって思うかなって 誘って良かったよ」
「うん……」
少しの間沈黙する二人。森から鳥の声がギャーギャーと聞こえたと同時にミンソンが
「ねぇウェイ私がこうやって同行してるのはね……ウェイの……」
バサッ
「ぐぁぁー寝た寝たバッチリだぜ」
ウーラが起き上がった。ここだと踏んだチアイも起き上がり
「はぁー少し寝すぎた感じあるなぁ」
「ん?なんだよミンソン俺の顔になんか付いてるか」
「なんでもないわよ!」
「なんだあいつは」
そう言うウーラをチアイは見ながら軽くふぅっと息を吐くと
「クーが起きたら出発ですね」
「そうだな寝坊助クーだからもう少し経っても起きなかったら背負ってでも出発だ」
3人は起こさないんだなと思ったが実にウェイらしいと思い笑ってしまった。
「ん 何か変なこと言ったか俺」
「んーん全然だよ あはは」
笑いながら言うミンソン。その後クーが起きたのは夕暮れ前だった。再びサルソに向けて歩き出す一向。マジックランタンが道を照らし林道を抜けて広間が続く道に入った時だった。
「止まって」
「これは……」
そこには此処等では生息しているのかさえ分からないほどの大きなモンスターの足跡だった。
皆が危険を感じてマジックランタンに魔力を注ぎ込むと光が一層強くなり更に広範囲で周囲を照らした。
「此処を抜けるとサルソなんだがなぁ なんだこの大きな足跡は」
「草食獣なら大した危険は無さそうですけどね」
「何にしても用心しようか なるべく音を立てずに周囲に気を付けて抜けよう」
広間に入って約1時間程歩くと獣の死骸が横たわっていた。随分と原形を留めていたので補食目的なのか、後から此処に戻るのかと思わせる状況だった。チアイが手持ちの杖で軽くつつくと
「死後間もないですね裂傷が少ないので踏み潰されたのか殴打されたのか」
「今のペースで進んで抜けよう」
ウェイが皆を見てそう言いきると進行方向から獣の鳴き声が聞こえてきた。
「今の声……この辺じゃ聞いたことないわよね」
「大事を取って迂回するか……」
クードは黙っている。ウーラがウェイに
「このまま進んで出くわしてヤバそうなら逃げる勝てそうなら退治しとくでいんじゃねーか?」
「そうだなギルド作ったら獣害処理なんて当たり前にあるしな それでいこう 但し無理はするなよ」
「決まりだ」
ゆっくりと光を前方へ向けながら歩く一向だが光が壁のような物に当たり上へと伸びた瞬間にしなる棒のような物でウーラが左側に吹き飛んだ。
「ウーラ!無事か」
「問題ねぇ それよりこいつは大物だぜぇ」
目の前には明らかに敵意むき出しの肉食獣がこちらを標的として捉えていた。
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