第1星 旅立ち

心地よい睡眠からゆっくりと意識が現れる。


「あぁ~」


身体を伸ばしゆっくりと起き上がるとクードは隣のベットに兄が居ないことに気づく。

居間に移り祖父母に朝の挨拶をしながら


「おはようーじいさんばあさん 兄貴は?」


「おはようクー ウェイなら朝早くから鍛練場に行くって出ていったよ」


「鍛練場?分かったーちょっと行ってくる」


「朝御飯支度しておくから二人で帰っておいでなぁ」


婆さんの言葉に頷きながら家を出て真っ直ぐに鍛練場にクードは走り出した。

鍛練場とは聞こえが良いのだが天井なしの大広場に木人が立てられ、いくつかの武器が自由に使える用配備されてるだけの所だ。

走って10分程度で鍛練場に着くと周囲を見渡した。早朝の割りに人が多くすぐには兄を見つけれなかったが幼馴染みのウラ・ウーラとカサホ・チアイに会った。


「おっ クーがここに来るなんて珍しいじゃないか いっちょ揉んでやるかぁ?」


軽く微笑みながらそう話すのはウラ・ウーラ。背はクードより高く金髪長髪の男だ。


「ウェイを迎えに来たんじゃないかな?ウェイなら早くに来て奥の方で鍛練してるよ」


クードにそう話してくれたのはカサホ・チアイ。背丈はクードとあまり変わらず黒髪のヘルメット風セットで少々頼り無さげに見える。


「ありがとチアイ行ってくるよ それとウーラまた今度お願いするよ」


「おっ 言ったなー覚えとくぞー」


クードは軽く笑いながら二人に手を振ると奥に向かった。兄の姿が見え、近づくにつれて兄のオーラの高ぶりが肌で感じ取れる程に大きな波動を感じ取った。


「あにきー 飯の時間だー迎えに来たぞー」


振り返ったウェイがオーラを抑えクードに


「もうそんな時間なってたか よし帰ろう」


ウェイは用意していたタオルで汗を拭くと

クードと共に鍛練場から帰ろうとする。


「おぃウェイ さっきの話は本気か?」


ウラ・ウーラとカサホ・チアイが帰ろうとするウェイに向かって話しかけた。


「勿論だ 二人の力欲しいんだ一緒に行こうぜ 考えといてくれよな」


左手をサッと上げて別れ自宅へと向かう。


「兄貴あの二人も王国行きに誘ったのか」


「ん そうだ ウーラは戦闘においても交渉においても頼もしい奴だしチアイの知識も同じだ」


「何の保証も出来ないのに来るかー?」


「さあな わからん」


笑顔で答える兄ウェイに何もいう気が無くなるクードだった。


「お帰りウェイ クード」


「ただいま じいさんばあさん」


「お腹すいてるだろう 冷めないうちにたべんなしゃ」


「ありがとう 腹ペコだったんだ いっただきまーす」


婆さんが用意してくれた白米に魚の塩焼き鶏肉と玉子の炒め物にお味噌汁。二人は会話するのも忘れて夢中で食べていく。


「ゆっくりたべなしゃ沢山あるからね」


婆さんの優しい声が耳に届く。何一つ残すことなく完食するとウェイが話始めた。


「じいさんばあさん俺とクーは王国に行こうと思ってるんだけど賛成してくれるかなあ」


祖父母は少し表情が固まったが


「シスマには話したのかい?」


「母さんには前々から話してあるんだ ずっと俺達の事を育ててくれたじいさんばあさんに賛成してもらってから行きたいんだ」


クードはウェイの言葉がよく理解出来た。同じ気持ちを持っていたからだ。ただクードはウェイに助けられて帰ったので自分の意思を言いづらかった。

祖父母は顔を見合わせた後にゆっくりと


「寂しくなるけどもねぇ 若いうちにしかでぎねこともあるべし行ってきなさい」


ウェイが言うより早くにクードが


「ありがとう!じいさんばあさん!」


「ありがとう」


「気を付けて行くんだよ 疲れたら何時でも帰っておいでなぁ」


優しい言葉にウェイもクードも頷くばかりだった。


「ご馳走さま 支度して家を出るときにはちゃんと言ってから行くからね」


「うんうん」


二人は食器を片付けると部屋に戻りお互いが旅の支度に入った。あれこれとバックに詰め込んでいるウェイに


「いつ出発する?」


「そうだなぁ 先ずはウーラとチアイの返事待ちとミンソンも行きたいと言ってたな」


「あぁミンソンか」


クードはそれを聞いてすぐに納得した。ミンソンは昔から兄ウェイに好意を寄せてるから旅立つこと言ったら着いてきかねないだろうなと。


「じゃあ3人の確認取れ次第になるのか」


「まぁそうなるかな特段急いでる訳でもないし多少待った所で決断が変わることも無いからな」


クードは荷支度をほぼ終えると


「俺がウーラとチアイに確認取りに行くからミンソンは兄貴に頼むわ」


「分かった そうしようか」


二人が支度を終えて確認に家を出た頃には昼を過ぎていた。


「おーいウーラ」


「クー早速手合わせに来たか」


「いやいや兄貴から聞いてるだろ返事を聞きに来たんだ」


ウーラは持っている剣を鞘に納めると


「俺も何かきっかけが有ればなって思ってたんだ だからお前らに付いていくぜ」


「ははっ ウーラが来るなら心強いや」


「チアイも行くって言ってたぞ」


「お 良かった」


クードは二人が来ると分かり安堵した。気心の知れた友が一緒に居たなら同じような失敗は起きない起こさないと思えたからだ。


「それじゃ兄貴に伝えておくからウーラもチアイと旅の支度をしといて」


「あぁ分かった これから帰宅してチアイにも伝えておくよ出発は何時の予定だ?」


「さぁ 皆が支度出来たらじゃないかな」


「そうか わかった それじゃまた後でな」


手を振り別れるとクードは兄貴が戻ってないかと自宅へと向かった。

一方ウェイはミンソンの家まで訪ねて最終意思確認しに来ていた。


「おっすミンソンどうだ一緒に王国に行くか?」


「ウェイは言い出したら止まらないからね 私が行き過ぎるウェイのブレーキ係りとして着いていくわ」


「あっはっは そうかそうか頼むよミンソン」


ミンソンは持っていた洗濯物を干し終えると籠を持ち


「支度終えたらウェイの家に行くから少し時間をもらうわよ」


「おっけーそれじゃまた後でな」


ウェイが手を振り立ち去るのを玄関前で見えなくなるまで見送ると急いでミンソンも支度を始めた。


「兄貴ーミンソンどうだったー」


ウェイは大きく両手で丸を作ると


「そっちはどうだった」


「二人とも行くってさ」


ウェイは笑顔でクードの背中をバンっと叩き


「ここからが始まりだ もう始まってると言ってもいいかもだ がんばるぞ」


「わかってるって」


クードは短く返事する。

日は暮れ街に灯りが着き始める頃ウェイの家には王国へと向かう皆が揃っていた。

思いの度合いや目的は多少違えど今歩き出そうとする彼らを見つめるように星がそっとその輝きを放っていた。







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