第4話すいませんが神様よ、聞いてた話と違います
※実は先にもう1人いた転生者仲間の視点
「リュシアン新陛下!
謁見の間に高らかに響くラッパの音
赤い絨毯の左右にところ狭しと膝をつく人々
それを横目にオレは、壇上にある派手な赤と金の装飾が施された玉座にゆっくりと座り、声を張る
「許す。みな、
バッと人々がコチラを凝視し、緊張した空気が部屋を満たす
朗々と新たな王への賛辞を隣で読み上げる新しく宰相の言葉を聞きながら、心の中で盛大なため息をつく
春の高い青空は、今日も実に良い天気
あぁ、どうしてこうなったのやら
もう少し
なんでオレがこんなことになっているかと言うと
「間違って殺してしまってごめんね?お詫びに君が望むような新しい世界に転生させてあげるよ!」
「さすが神様!よっ!太っ腹!!なら魔法は見てみたいけど安心で安全なニート生活が出来る世界に行きたいです!!」
「清々しいほどの無欲だけどクズだね君。なら定番のファンタジー世界に可能な限り安心安全の生活が出来る環境に転生させるね。はい、いってらっしゃーい」
そうして魔法が存在するド定番なファンタジー世界に転生して生まれ変わったオレは
「リュシアン殿下は良い子ですねー。ほら、お口をあけてくださーい」
「だぁう」
とある王国の第1王子様になっていた
いや!なんでやねん!!オレの夢のニート生活はどこ??
しかも姫巫女の母親と英雄の子孫と言われる王様の父親。側室の義母ははは、姫巫女の母に仕えてた元聖騎士とか設定盛りすぎじゃないですか神様!?
王族とか面倒でしかないじゃんかーイヤだわーと、どれだけ不貞腐ふてくされても生まれが変わるはずもなく出来るだけ目立たないように平穏平凡に生きてきた
他の妹と弟達が産まれるまでは
「リュシアンお兄様はどうしてその強さと賢さを隠しているのですか?」
目立ちたく無くて独学で覚えた隠匿ハイズの魔法で誤魔化していたステータスは、キッチリバッチリ母さんひめみこの力を受け継いだ妹に速効でバレた
その時のオレ8才、妹ちゃん4才
「兄上!なぜ手を抜くのです!!俺とちゃんと全力で勝負して下さい!!」
まぁ強いぐらいかな?と期待されないために適度に全力を出しているフリをしていたのを、元聖騎士の母に立派に育てられた義弟に怒られた
当時オレ13才、義弟さん7才
「どうして平凡な兄上が第1王子なんだ……僕の方がずっと……」
唯一、騙されてくれたのは末っ子の弟君おとうとくん。でも、それはそれでお兄ちゃん心配だなーなんて呑気に考えていた
ちょうどオレ19才、弟君10才
そうして隠してるはずなのにお偉い一部の方々にはバレていて、もう無理かと諦めかけていた時に知ったのだ
末っ子弟君を王様にしようとしている貴族の動きを
気付いちゃったけど知らないふりして、これを利用して辺境でニート生活を!!とか考えてたら、そうは問屋が下ろさないと世界が言わんばかりに彼女に出会ってしまった
彼女の名前はエルメラ・ドルサーベル
末っ子弟君の婚約者にして、初めて会うオレと同じ転生者だった
「リュシアン第1王子殿下様ですね」
「ええ、まぁ。君はグリフィスの婚約者さんだっけ?」
「はい、エルメラ・ドルサーベルと申します。以後、お見知りおきを」
「そう固くならなくて大丈夫だよ、エルメラちゃんは未来のオレの義妹なんだから」
「まぁ、嬉しい。では率直にお聞きしまして……リュシアン殿下は転生者ではありませんか?」
ガチンッ!と固まった
「な、な、なんのことかなぁ?テンセイシャなんてハジメテキイタヨ??」
驚きで壊れたファー◯ーみたいなカタコトの台詞がでた
「やっぱりでしたか……」
「いやいやいや、やっぱりも何も無いよエルメラちゃん」
「アレだけ動揺すれば嫌でも確信しますよ、今さら隠しても無駄です」
「ダメかー、こう都合よく無かったことにならないかー」
「諦めて下さいませ、リュシアン殿下。それに今回は私の為に譲る気は一切ありませんので」
おおう?何だかエルメラちゃんから鬼気迫るものを感じる
「リュシアン殿下、生前に乙女ゲームなるものはご存知ですか?」
「んー?アレかな?姉ちゃんが奇声を発しながら遊んでたゲームかな??」
「そのお姉さんの行動は知りませんが、この世界は私が生前に遊んだことのある乙女ゲームとほぼ一緒なのです」
「え!?そうなの?イヤまぁ確かにオレ以外美形ばっかで、学校時代はイケメン爆発しろとか思ってたけど」
「殿下の心中はお察ししますが、今回は流します。それで私、エルメラは本来なら乙女ゲームでヒロインを苛める悪役令嬢と呼ばれる役割なのです」
「えー。エルメラちゃん、流石にオレでもイジメは良くないと思うよ?」
「本来ならと言いましたよ殿下。私は一回も苛めてませんし、むしろ悪役令嬢になる気は一切ないのです」
「あ、ごめんよ?んで、そんなエルメラちゃんはオレにどうして欲しいわけさ」
そう、同じ転生者同士である
でもエルメラちゃんが、どうしてわざわざオレにその事を言ったのかが分からない
「私の邪魔をしないでいただきたいだけですよ、リュシアン殿下」
「別にオレは、エルメラちゃんの邪魔するような事なんてしないって」
「いいえ、すでに知っておいででしょう?リュシアン殿下に変わってグリフィス殿下を王にしようとしている動きを」
「あー……。えぇ、それ関係ある?」
「あります、大有りです。このまま本当にグリフィス殿下が王につくような事になれば、私は希代の悪女として処刑されるバッドエンドしかないのです」
「うへぇ、何それ?最近の乙女ゲームってそんな殺伐としてるの。怖いんだけど」
「ええ、とっても恐ろしいことです。私はそれを回避して普通に長生きしたいだけなんですよ、分かっていただけます?リュシアン殿下?」
ニッコリと美少女エルメラちゃんの微笑み
ただし目は一切笑っておりません
「オーケー、オーケー、良く分かりましたエルメラちゃん。ちゃんと抑えておきますから、オレにそんなに圧をかけないで下さい」
「圧だなんて。ではお任せいたしますわ、義兄様おにいさま」
「わーい。オレ、可愛い義妹の為に頑張りまーす」
この話はオレ18才、エルメラちゃん9才
そんなお約束をしてしまったが為に、結局こうしてオレは無事に王様をすることになってしまったのだ
しかも肝心のエルメラちゃんは、ざまぁって高笑いしながら仕返ししてやりますのと言いながら、その当日に階段から転げ落ち傷こそ浅かったものの記憶喪失になるという何とも斜め上に突き抜けた結果に
あれれぇー?おっかしいなぁー?
オレだけ頑張ったのに全く報われて無くないかなぁー
何て過去の思い出に浸ひたっていると左側から脇腹をつつかれ
「また考えごとですか?そろそろ挨拶の時ですよ、陛下」
「ありゃま、本当だ。教えてくれてありがとうね」
「せっかくの式典で陛下の無様をさらす訳にはいきませんから」
とても小さく回りに聞こえないよう小声での会話
ちょっとツンケンしてるけど、オレには勿体ないぐらいの美人で出来たお嫁さん改めて王妃様
そんな可愛い王妃様ハニーのためなら仕方ないなーって思いながら、オレは顔を引き締めてキリリと立ち上がり挨拶を語り始める
転生させてくれて、すいませんが神様よ
聞いてた話とは違うけど、もうしばらくは頑張りますさ
記憶は彼方にとんでった~ざまぁ計画立ててた過去の私よ、ごめんなさい~ 陸昼すず @OmoteuraNatuaki
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