魔法使われはじめました 下

 後ろを振り返り眼に映ったのは案の定頭のネジが幾つか外れた女の姿だった。

 特徴的な三角帽子とそれに合わせた濃い紺色のマント、そして首には髑髏の形をしたネックレスを下げた自称魔法使いは再度呆れた様子で溜息を吐いてみせた。

 正直、状況は圧倒的に不利である。

 今現在自分が居る寝室の奥にはナイフを持った男が目を血走らせて構えており、逆に元来た道を戻るにも、その先には長大な杖を携えたフォスが待ち構えているのだ。

 最初何故こんな狭い家の中で取り回しの利かない棒を持っているのか判らなかったが、少しだけ考えたら理屈は直ぐに通る。

 長大で振り回したらコントロールが利かないという事は、言い方を変えたらコントロールをする必要が無い環境ではこれよりも優れた武器は存在しないと言う事であり、前にも後ろにも逃げ場が無い音無にとって仮に彼女が杖を振り回したとして、回避する術が無いと言う意味でもある。

 幾ら小柄で身体能力では負ける気がしない相手だと言え、振り下ろすだけで十二分な破壊力を持っていそうな杖を得物にされては手の出しようが無く、かといってスーツ姿の男の方へ向かおうなら、血まみれの未来が意気揚々と現れるだろう。

 だったらここは大人しく彼らの指示に従うべきだとも思ったのだが、男の顔とフォスの顔を見比べて新たな問題点に気が付いた。

 音無は、犯人について多くの事を知りすぎてしまったのだ。

 流石にフォスと言う名前は偽名か何かだろうが、後から現れたこの男とは違い、フォスと名乗る女はコンタクトレンズで眼の色を変えているとは言え、これと言って顔を隠す様な事をしておらず、ましてや先ほど長々とコントみたいな会話をしてしまったのだ。

 こうなってしまっては、今更自分達の顔を覚えた音無を素直に介抱するとも思えない。

 「何だお前は!」

 再度男は吠える。

 何処か小動物の様な、不機嫌な猫の様に声を上げたフォスのそれとは違い、ドスの利いたその声は音無を怯ませるに十分な効力を持っていた。

 「……僕は、このい――えの……」

 咄嗟に答えようとして、不意に足の力が抜ける感覚と舌がもつれる感覚を覚えて戦慄する。

 俗にカタプレキシーと呼ばれる脱力性発作である、突然の感情の起伏によって音無は持病の発作を引き起こしてしまったのだ。

 咄嗟に手を伸ばして棚を掴み、糸が切れた人形の様に自由が利かなくなった膝の代わりに体を支えるが、案の定力が足りなかった為に背中を壁に擦りつける様にしてずるずると尻もちをつく。

 「誰だお前は!?」

 再度男は吠えた。

 ドスの利いた鋭い声だ、だがふとその声に違和感を覚えた音無は、体とは違い自由の利く頭で状況を整理してみる。

 妙に手慣れた動きといい、相手を怯えさせる声を扱うことと言い、この男は昼間のネットニュースで知ったのと同じ泥棒だと考えて間違いが無いだろう。

 ではその男は何故今声を荒げているのか?

 それは簡単である、自分の犯行の邪魔をされたから、正確には犯行を家主に見られ、警察に突き出される恐れがあった為に脅しているのだ。

 だからこそ、男は音無に対して誰かと強く問いかけた――

 「っ……?!」

 いいや、その考えは明らかに不自然である。

 牛乳パックを傾ければ牛乳が注がれ、時計の盤面には時が表示されている。

 それと同じ様人の家にはその家の主が住んでいるのは当たり前だ、それなのにこの男は『誰だお前は!?』と尋ねたのだ。

 では何故この男はそんな当たり前の事を尋ねたのか? いいや、そうではない。

 男は始めから音無に話しかけたという予想がそもそもの間違であり、男は当たり前な格好をした音無では無く、明らかに不自然な服装で現れたフォスに対して質問をぶつけたのだ。

 つまりは……

 「フォス・クルスラットだ」

 「……馬鹿かてめぇ?」

 自信満々なフォスの言葉に対して、先ほど音無がしたのと全く同じ反応をする男。

 間違いが無い、同一グループだと思っていたこの二人は一切の面識が無くたまたまこのタイミングでこの場所に集まった烏合の衆にすぎないのだ。

 「馬鹿では無い、魔法使いだ」

 「……」

 予想外すぎる言葉に面食らったのだろう、鋭い言葉を吐いていた男だが、一瞬たじろいだ様子を見せた後、小さく喉を鳴らせた。

 男としては、フォス自身ではなく彼女が持つ杖を警戒しているらしく、その視線は時折彼女が持つ杖へと注がれていた。

 「頭おかしいのかてめぇ?」

 「おかしくは無い、おかしいのはお前の方だ人間」

 「どうでもいいんだよ!! さっさとその棒を捨てろや!」

 その一言には流石にカチンと来たのだろう、男は一歩歩み寄り持っていたナイフをちらつかせる。

 だが、フォスはそんな彼の仕草に一切動じず、持っていた杖を構え直して口を開いた。

 「棒では無い! これはヴァナルガン――」

 「んな事はどうでもいいんだよ!」

 不満げに杖を掲げたフォスだが、その一瞬の隙を突いて男は駆けると彼女の手から杖を奪い取り、部屋の奥へと投げ捨てる。

 そして、今度は持っていたナイフを彼女の喉元に突きつけると、自信たっぷりに口を開いた。

 「てめぇふざけるのもいい加減にしろよ、今の状況理解出来てんのか?」

 ゆっくりと、一言一句聞き逃すなと言いたげに紡がれた男の言葉だが、その一言の意味を理解していないのか、それとも理解してはいるがその事態がたいした問題では無いのか、フォスはこれと言った驚きも見せずに首を傾げる。

 そして、目の前で目を血走らせた男に対する好奇心が削げたと言わんばかりに大きく溜息を吐くと、フォスは音無の方を振り返った。

 「時にお前、さっきの話だが願い事は決まったか?」

 「こんな状況で何を……」

 そこで何を言い出すかと思えば、またそんなとんでもない一言だ。

 少しだけ回答を急ぐ様な口調で一旦腰が折られていた話題を再び蒸し返すと、腰に下げていた小さな布製のポシェットに手を伸ばす。

 「動くな」

 動きとしてはささやかなものだが、フォスが携帯電話か何かを操作したのだと思った男は、ワントーン落とした声で警告をする。

 だがフォスにとってはその警告などどうでもいい事なのか、それとも警告だろうが褒め言葉だろうが、背後に居る男そのものがどうでも良い存在だと判断してか、フォスはポシェットの中をまさぐり続ける。

 「だから動くなって言ってんだろ!」

 流石に我慢の限界だったのだろう、男はフォスの肩を掴むと持っていたナイフを彼女の首筋に押し付ける。

 力任せな動きにフォスの小さな体は揺れ、頭に乗っていた帽子が花弁の様に床へと落ち、ささやかすぎる衣擦れ音を奏でる。

 「何故動いたらいけないのだ?」

 流石にどれだけ頭のネジが緩んでいようとそんな事をされたら我に返ると思っていたのだが、フォスは不満げに疑問を投げかけるだけである。

 その対象は、自分にナイフを押し当てる男では無く、尻もちをついたまま状況を見ていた音無だった。

 「こんな時に何言ってんだよお前」

 もう発作が収まったらしく、思っていた以上にその一言は滑らかに口からこぼれ落ちた。

 だが、フォスの返事はそれ以上になめらかで、一切の迷いなど無い物だった。

 「動かなければお前の願いを叶える事が出来無いだろ?」

 「はぁ!?」

 「動かなければ願いを叶えられないじゃないか、さぁ早く答えろ、お前の願いは何だ?」

 宝石の様に鮮やかだったフォスの瞳が、徐々に明度を落としていく部屋の中輝き、その一言に迷いが無い事を伝える。

 芯の通った一言、これ以外に何を言えば良いと言わんばかりに迷いが無い彼女の表情に音無は息を飲む。

 帽子が外れた事により一段と背の低さが目立つ彼女の姿は、一段と子供の様に見える。

 しかし、高い知性がある事を証明する紫の視線は一切ぶれる事無く音無へと注がれていた。

 「もう一度聞くぞ、お前の願いは何だ?」

 「さっきから訳判らねぇ事言ってんじゃねぇぞ! いい加減鞄から手をどけろや!」

 音無の返事を待たず、男は再度怒鳴ると力任せに彼女の右腕を鞄から引き抜き、彼女が握っていた物を確認する。

 「ああ? なんだ?」

 通話中の携帯電話が出るであろうと思っていた男は、フォスがしっかりと握りしめていたそれを見て間が抜けた声を漏らす。

 「……マッチ?」

 フォスが持っていたそれは今時は少々珍しいとは言え、店を探せばすぐに見つけられるマッチの箱だった。

 まだ中身が幾つか入っているらしく、箱の中でマッチが転がる音はしているがそれ以外にこれと言った特徴の無いそれを見て男は溜息を吐く。

 「ったく、紛らわしいんだよ」

 フォスの手を離した男を余所に、フォスは大事そうにそのマッチを両手で握った。

 マッチがあったところで現状が不利なのは間違いないのだが、フォスは手の中で音を立てるマッチがよっぽど大事だったらしい。

 「それで? お前の願いは何だ?」

 再度紡がれる同じ問いかけに、いい加減気色悪さを感じた男は少しだけ身を竦める。

 だが、幾ら脅しとは言え彼はフォスの喉にナイフを突き付けているのだ、後は軽く刃を滑らせるだけで彼女に大怪我を負わせられる状況にあるのは間違いが無い筈なのに、フォスに対して感じた違和感は、徐々に所属不明な恐怖心へと変化していた。

 「お前の願いは?」

 「だから、こんな時に何を考えてるんだ」

 「良いから早く答えろ、お前の願いは何だ?」

 「願いとか訳わからない事言ってないで、少しはこの状況をどうにかする方法を考えてよ」

 音無は自由が戻った足に力を込め、ゆっくりと立ち上がるがそれでどうにかなる状況では無い。

 部屋の奥にはフォスの持っていた棒があるが、それを回収する暇を男は与えてくれないだろう、同じ理由で警察を呼ぶのも不可能だ。

 だとしたらどんな方法があるのか?

 生唾を飲み、考えられる策を考えその中から最善策を選ぼうと模索するが、やはり良い案は片鱗すら見せない。

 これ以上フォスの発言で犯人を刺激しな様にするのが精いっぱいの最善策だろう。

 現実には都合の良い事態なんて物は訪れない。

 不都合が現実には満ち溢れており、それを打破する魔法の様な手段は何処にも無いのだ。

 だが、そんな状況に置かれてもなお、フォスのどこか落ち着き払った表情は崩れなかった。

 不意に、『魔法の様な手段は存在しないが、魔法は存在する』そう聞こえた気がした。

 フォスは小さく鼻を鳴らすと、首筋に突きつけられたナイフなんて始めから無かったかの様に音無の言葉に返事をした。

 「この状況をどうにかするのが願いなのか?」

 「そんなの……当たり前だろ」

 この現状において、それは犯人すらも思っていた事だ。

 だが、フォス自身はその事を今さら理解したと言わんばかりに表情を明るくさせる。

 「判った、それじゃお前の一つ目の願いは『部外者をこの家から追い出す』それで良いんだな?」

 フォスの一言に納得した訳では無い。

 この状況で男を追い出すなど容易な事では無いのは誰が見ても明らかだ。

 その筈なのに、フォスはやっぱり迷い無くそう告げ、何故か音無はそんな彼女の一言に納得し、小さく頷いてしまう。

 「いいだろう、それじゃ最初の魔法だ、侃侃諤諤して良く見てみると良い」

 相変わらず使い方を激しく間違えた言葉の後、そんな事今はどうでもいいと言わんばかりの表情でフォスは行動を起こした。

 「何をする気だ……?」

 音無がまさに口にしようとしていた発言をした男は、フォスが持ち上げたマッチ箱を見て疑問符を浮かべる。

 黒字に赤いインクで星形が書き込まれているデザインは多少物珍しくはあるが、それ以外はこれといって不自然な個所の無い、ごく普通のマッチ箱。

 だが、フォスがその封を開けた途端、部屋の空気が一転した。

 具体的に何が起きたのかと言われると説明出来ないが、部屋の中の湿度や気圧が一気に高くなった様に、部屋の空気の密度が増した様な気がした。

 「おい……何を……」

 その変化に男も気が付いたのだろう、男の声は少しだけ上ずっていた。

 「何をするのかって? 決まってるだろ、魔法を使うのだ」

 フォスは開かれたマッチ箱の中、六本あったマッチの内一本を取り出すと、その一言の後にマッチを箱の隅のやすりにこすりつけた。

 魔法なんて物は存在しない、どれだけ呪文を唱えても、どれだけ大きな魔法陣を床に描こうと、どれだけ強い思いを抱こうと、そんな事は不可能な筈……

 なのに、その魔法と呼ぶしかない現象は発生した。

 「……な!?」

 フォスが擦ったマッチの先端、そこに炎が生まれた。

 当たり前の事ではあるがマッチは火をおこすための道具であり、先端を軽くこするだけで安易に炎を生み出す事はごくごく自然な事だ。

 だが、小さなマッチ程度でこれ程の火力は生まれる事は無いだろう。

 一瞬彼女の持つマッチの先端が瞬いたかと思った刹那、部屋の中を埋め尽くさんばかりの勢いで真っ赤な炎が溢れたのだ。

 元々夕暮れ時特有のオレンジの光に包まれていた室内で爆ぜた炎は、それ自体が意思を持ってる様な勢いで六畳間のを駆け廻り、フォスと、彼女を掴んでいた男、そして壁にへばりつく様な姿勢で構えていた音無すらも飲み込んだ。

 「……!!」

 どんな仕掛けがあるのかは不明だが、冗談抜きで身の危険を感じた音無は口元を押さえて焼けた空気を吸い込まない様に身構えるが、直ぐに違和感を感じてそのまま硬直する。

 「あれ……熱く……?」

 瞬きする間の間に火災現場へと姿を変えた自分の部屋、手当たり次第飲み込む豪食な炎は真っ赤な舌を伸ばして当たりを舐めまわしているのだが、その炎から温度を感じ取る事が出来無い。

 一瞬あまりの暑さに皮膚が感覚を失っただけかとも思ったのだが、部屋の中の家具を見渡す限り、音無の感覚を後押しする様にどの家具も焼け焦げる気配が無かった。

 「なんだ……これ……」

 赤々とした炎に包まれた壁紙をおっかなびっくり撫で、掌に帰ってくる感触が熱い炎のそれでは無く触り慣れた壁の感触だと確認した音無は、狐に抓まれた様な表情で声を漏らし、この事態を生み出した相手の顔を確認する。

 この状況はフォスにとっては想定通りの状況なのだろう、彼女はほんの少しだけ自慢げに頬を吊り上げると、音無と同じく、状況が読めず目を丸くしていた泥棒に向き直ってゆっくりと、なるべく聞き取りやすい様に質問を投げかけた。

 「『熱い』だろ?」

 この炎自体に物理的力が無いのは事実なのだろう。

 男も炎に驚いてはいたが、熱いどころか何一つ苦痛を感じている気配は無かった。

 だが、ゆっくりと、まるで催眠術の様に紡がれるフォスの一言を聞いた途端、男の表情が歪む。

 どういう原理かは判らない。

 だが、彼と同じ言葉を聞いた音無とは違い、男はこの空間を説明するに欠けていた情報に気が付いたのだ。

 それは即ち……

 「『熱い』だろ?」

 「――!!」

 再度駄目押しとばかりに紡がれた言葉の引き金。

 男が忘れていた熱さという情報が、瞬く間に花開き全身を飲みこみ激痛へと化ける。

 音無が感じている通り、そしてその視覚情報が証明する通り、実際は火傷はおろか産毛の一本すら焼けて居ない筈だ。

 だが、彼の体を襲うその激痛は本物であり、体中を駆け抜けるその激痛から逃げようと男はフォスから手を離して後退、その先に転がっていたフォスの杖につまずき、もんどりを打ってフローリングに転がった。

 「何だよこれ……」

 望んだ相手の触覚だけに作用する炎、そんな物見た覚えも聞いた覚えも無い。

 だとしたらこれは何か?

 幾ら考えても現実的な答えが導き出されない、だが、痛みに悶絶する男を余所に平然と床に落ちた帽子をかぶり直すその影を見て、音無は小さく納得する。

 「さぁ人間、その窓から飛び出せばこの炎から逃げる事が可能だぞ?」

 フォスは男の傍にかがむと、耳元でそう伝える。

 親が転んだ子供を励ましてるのと同じ仕草のそれは、捉えようによってはただの侮辱でしか無いかもしれない。

 だが、背に腹は代えられないと判断したのか、それともその一言にも何か力が働いていたのか、男は叩き割られた硝子戸へ飛び込むと、長い悲鳴尾を引きながらそのまま何処かへと走り去る。

 「これじゃまるで……」

 現実的な理由が証明できない分、自分でも馬鹿げてるとしか言いようのない別の可能性が主張を始める。

 到底認める事なんて出来そうにない可能性、だが、フォスは一切臆した様子も無く真っ赤な炎の中、口を開いた。

 「これで信じてくれるか? これが魔法だ」

 そう言い彼女が指を鳴らした刹那、眼鏡に付いた指紋を落とすかの如く、部屋中の炎が一瞬にして姿を消した。

 「……本当に魔法な訳」

 無理矢理、それ以外のもっともらしい理由を組もうとするのだが、一向にまともな可能性が姿を現す気配は無く、酸欠を起こした魚の様に口をパクパクと動かす事した出来ない音無に対して、フォスは腕組みをして一つの質問を投げる。

 「そう言えば自己紹介の途中だったな、君の名前を教えてはくれないだろうか人間?」

 「拓斗……音無、拓斗」

 見ず知らずの、ましてや良く判らない現象を起こした相手に対して、音無は自己紹介をしてしまう。

 「拓斗だな、喜べ拓斗、これで本契約が結ばれた。 私は嬉しくて膝が笑っているぞ」

 「いや、その言葉使い間違ってるから」

 脊髄反射で放たれた訂正文が聞こえなかったのか、フォスは持っていたマッチ箱の中身を音無に見せてから再度、再三紡がれてきた、そしてこれからも紡がれるであろう謳い文句を吐く。

 「拓斗、私は魔法使いだ。

 だからどんな願いだって叶える事が出来るぞ」

 自分でも判っている、魔法なんて物はフィクションが生み出した産物でしかなく、現実の世界にはありえない都合の良い出鱈目だと。

 だが、同時に久方ぶりに胸が高鳴るのを覚えていた。

 『自分は魔法使いである』そんな事を大真面目に言える存在なんて、ちょっと頭のネジの緩い人間か、もしくは舞台で演技真っ最中の俳優か、もしくは夢と現実の見分けのつかない年頃の子供か位だ。

 だけどもし仮に魔法使いが実在するのなら、この女の発言は何一つ不自然な事では無い、そう無言で考えるのだった。

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