第3話とある少女の曇りの日
その次の日は曇り
でも、いつ降ってもおかしくないくらいにどんよりとした天気
彼が来ているかは分からなかったけど、私はいつもの時間に、いつもの場面に向かった
近くまで行くと、彼の姿が見えた
遠目でも良く分かる、いつも通りの奇抜な格好は彼しかいないから
「こんにちは、
「はい。こんにちは、お嬢さん」
そう言って、彼はおどけた笑みを浮かべて私の方を見る
私が近くに座ると、いつもみたいに芸が始まる
……ただ
いつもと少し違うことが起こった
「…お嬢さんは、この近くに住んでいるのかい?」
いつもは喋らない彼が、私に話し掛けてきたのだ
「ええ。ここの近く」
「そうか、だからいつも来てくれるんだね。
他の子供達とは、遊ばないのかな?」
「近くにいないのよ。だから、私はいっつも一人なの」
喋っている間も、彼は手を止めずに芸をし続ける
「一人は嫌い?」
「嫌いよ、大っ嫌い。だって、つまらないんだもん」
「………でもね、お嬢さん。一人でも、進まないといけない時はあるんだよ?」
彼は、まるで諭す様に私に話しかける
それでも、手は止まらずに、彼のいつも失敗する最後のところになっていた。
「…
「そうかい?初めて言われたよ」
そう言いながら、彼はいつも失敗するところを見惚れるぐらいに、綺麗に成功させた
そして、いつものおどけた笑顔を私に向ける
「………ずるい」
「そうかい?」
「ずるいわ、
私は立ち上がり、最後の最後で、彼に笑ってみせる
「バイバイ。
そして、いつもの帰り道とは逆の方向へと走って行く
後ろから、彼が手を振ってくれるのが分かった………
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