第3話僕とノワール
「ねぇ、朝だよ起きて」
「ううーん、もう少し・・・」
バシンッ!
ビンタされました。
「痛いなぁ」
「起きたのならいいのよ。焚火もまだ消えてないし
川魚取ってくるわ。大漁期待してて」
ノワールは漬物石程の大きさの石を魚が隠れているであろう場所の石に
ゴインッと振り落とす。
何をやっているのだろうかと思うと
川底から大量に魚が浮いて気絶している。
「大漁!一人3匹づつね」
あとはあなたが焼きなさいと言わんばかりにグイグイ渡された。
僕は堅い枝を6本探し河原で黒曜石らしき石をたたき割りうまく
ナイフが完成した。
内臓を取り川に流しすすぎ魚に枝を刺す。
塩がないのが残念だが仕方がない。
「こんなもんかな。後は焼けるまで待つだけ」
「ご苦労様。そういえば流された時夢を見たわ。
黒い顔の見えないローブの何かが私とライトに
永遠の時間の呪いをかけたって」
「夢?」
「うん、はっきりした夢だった・・・って
ライト、その数珠白くなってるんだけど怖い!」
「え?」
形見の数珠を外すと数珠は無色透明になっていた。
今ならわかる・・・この数珠に何も残ってないと。
僕は試しに石のナイフで親指を切ってみた。
「何してんの!」
血が出た。
「もしかしたら傷がすぐふさがるんじゃないかって思って」
ふさがらなかった。
痛いだけだった。
「ライト、それ英雄症候群じゃないの」
英雄症候群(ヒーローシンドローム)
小さな子供が自分も英雄の様に飛べるんじゃないかと
屋根から飛び降り骨折する子が後を絶たない事から
そう呼ばれている。
異世界人のクルセイダーのヒジリさんは
中二病と言っていた。
「そうだね。たぶんそうだと思う、ノワールは
なにか他にはおかしな事ない?」
「ない!」
僕達は焼けた川魚を食べ終わると上流に向けて歩き出した。
「川沿い歩いてれば飲み水に困らないし、低級石も二人で分けて持てば
火が付かないでしょ」
「ノワールは火の魔法と風の魔法使えないもんね」
「ライトが可哀想だから言わないけど
言葉を考えないからいじめられんのよ?」
「ごめんなさい・・・」
「で、でもあの巨大グモから助けてくれたのは
間違えなくライトだし、私の英雄はライトよ」
ノワールはプイッと頬を赤くして再び上流に向けて歩き出した。
川の流れの速度もあるが歩いても歩いても人に遭遇しない
状態が続いた。
「も、もう休もうよ」
「ライトはせめて体力くらいつけた方がいいわ、だから周りにって
言わない約束よね」
正直本当の事なのでツライ。
ブツブツ話してると人の気配がしたので
ノワールに声を掛ける。
「人の気配がする!ノワールついてきて」
「どのみちだしついていくわよ!」
弓の風きり音が聞こえるとプギィーーと
ワイルドボアがドサリと倒れる姿が見えた。
そこへ駆け寄っていく。
「お前達どうやってここに?」
僕とノワールはその人物と目を合わせる。
それは森の住人エルフ族のエルフだった。
「バケモノに襲われて川に流されて
上流を目指してここに」
ノワールは僕の後ろに隠れて服を離さない。
「・・・そうか。ここいらは危険だついて来い」
ノワールと目が合い「?」となる。
道を教えてくれればいいのにと。
ついていくと何かの抵抗を感じる。
「結界だ。今だけ解いたから安心しろ」
「ん?ここはエルフの里?って事かな?」
「そうゆう事だ」
ノワールは無言だ。
「俺の名はカリス、妹と二人暮らしだ」
普通のエルフが沢山歩いている。
ツリーハウスだらけだが商店もある。
一軒の大樹の幹に扉が付いていて
その扉を開けると同じ年位の女の子がいた。
「おか・・・え・・・に、人間だ!!きゃあああああ」
「安心しろ子供だポローニア 」
その子はエルフだ。ポローニア という名らしい。
俺とノワールは自己紹介をした。
カリスはエルフ茶を用意してくれた。
「「おいしい」」
「ははは、だろ?で、君達はどこに行くつもりだったんだ?」
「エデン王国です」
「エデン王国だと?行っちゃいかん」
「え?なんでですか?」
「君達も異変に気付いただろ?異界の扉が開いた事に」
「あの黒い時間の停止したような黒い雲の事ですか?」
「わかってるじゃないか。あれが異界の扉だ、あれは
予想もつかないから事故だったと思ってあきらめろ。
君達の寿命が来るまでエルフの里で住めるように
かくまってやるから。外の世界はあきらめろ」
「あきらめろって、どういうことですか?」
「そうだな、せめて外に出るならエルフ族の成人位
強くなくては外界に出るのは危険だという事だ。
それでなくてもよくここまでバケモノに遭遇しなかったのか
不思議だったくらいだぞ、我々が狩をしているエリアは
ドライアドの精霊に守られた聖域だからこの辺りは
獣程度で安全だがな。
まずは村長の処へ挨拶に行き許可をもらいに行こう」
「ってエデン王国は?」
カリスは首を横に振る。
ノワールは茫然とした。
「残念だが精霊と交信ができる我々が外の世界を監視して
安全になる迄はバケモノの世界だ。
まぁ、中には優秀な魔術師達がいる街や村はすぐに気づき
結界を張り生き延びてるかもしれないが・・・期待はしない方がいい」
終わった・・・
突然すぎる。
何が何だかわからなくなった俺とノワールは
エルフの村長の元へ連れていかれた。
「村長!迷い子です。里で保護したいと思い許可を頂きにきました」
「そうか、人間の子供か。まだケガレを知らない子供なら
危険はこの先もないだろう。教育は学園でキッチリ受けさせるんだぞ。
そこの人の子よ。エルフにはエルフのルールがある。
それを身に着け立派になるのだぞ?」
「「わかりました」」
俺達は子供過ぎる・・・今は素直に従おうとノワールと頷く。
「もし、差別があるようなら・・・とはないと思うがな。
そんな心の持ち主はこの里にいないと思いたい。
ワシの所にもすぐ相談に来ても良いぞ?」
カリスは笑いながら話す。
「村長の名はラストリング ・リーブス学園長でもある」
「まぁそんなとこだ」
どう見ても学園長は20代にしか見えない。
イケメンだ。
エルフ自体が美女や美少年ばかりだ。
お年寄りがいないのを聞くと
寿命前にベッドでしおしおになるそうだ。
その時が寿命らしいが本人は1か月前ほどで
悟るんだとか。
郷に入っては郷に従えだ。
幸いノワールもいるし心細さはない。
勇者と大賢者の出がらしと呼ばれました。 雲雀とツバメ @coronn2018
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