赤の戦場
春風月葉
赤の戦場
正義という白い旗は、赤い血で染まっていった。
正しさの前に多くの人間は屈し、相対する者として悪という不名誉を背負う。
戦さ場において、最も幸福な者はこの地で歩みを止めることができた者達なのかもしれない。
もうその手が返り血で赤に染まることも、知った者が知らぬ場所へ逝ってしまうのを見ることもない。
彼らは正義だ悪だという括りの外で魂なき人の抜け殻となるのだから。
愛する人を都においてきた。
帰るという約束も忘れた。
ただ、今の私には死をもってこの赤い地から逃げ出したいという気持ちだけがあった。
パンと祝砲が鳴る。
死を告げる優しい音だ。
こうして私は救われた。
その手はもう赤くなかった。
否、もうその時の私には手などなかった。
あるのは二つの足で辛うじて立っている腕も頭も弾け飛んだ化け物の亡骸だけだった。
赤の戦場 春風月葉 @HarukazeTsukiha
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