第6話 御徒町の動機
――っと、話がずれてしまった。司書の先生が“友達が借りた”と言っていたのはこういうことだったのか。
俺は再び挙手をする。
「次の質問。何でこんな大掛かりなこと仕掛けたんだ?
俺が問うと、彼はいとも易々と答えた。
「楽しかったから。君も楽しかったよね?」
“いや、いつもとなんら変わりないよ”――そう言おうとして、俺は少し考えた。
普段から俺は友達とふざけて遊んでいる。休み時間だろうと、授業中だろうと。
まぁ、授業中は先生に叱られるけど。それに対し、御徒町は休み時間でも何やら難しそうな本を読んでいる。俺らとは全然違う、勉強が好きな人なんだ、頭が良い人なんだ――と勝手に認識していた。くだらないことをして爆笑している姿を見たことがない。でも、彼も俺と同じ小4。俺らみたいにふざけて、腹を抱えて笑って見たかったのかもしれない。そんな彼が準備したこの一連の出来事。
ふと御徒町を見ると、普段は感情を表さない――いや、恐らく表せないこいつがワクワクしたオーラを全身から放っている。
分かったよ。お前の期待に応えてやる。
俺は決意とともに口を開いた。
「楽しかった。うん、楽しかった」
その台詞を聞いた彼は笑顔になっていく。
そうか、俺は1人の人間を笑顔にできたんだな――。
俺は満足げに微笑む。
もうすぐ昼休みが終わる時間だ。
俺は立ち上がり、図書室を出ようとする。
「何処へ行くつもりなのかな?」
座ったまま御徒町は訊いてくる。
「どこって、授業が始まるから教室に――」
「何を言っているのかな? 話はまだ終わっていない。むしろここからが本題かな」
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