第2話 下駄箱にて

 ――封筒。色は淡いピンク色、だろうか? 気のせいか、後光が差しているように見えなくもない。優がこう呟いた。


「……ラブレター?」


俺の脳内パソコンはその台詞を変換ミスしてしまった。すなわち、「rabureta-」とキーボードで入力し、ディスプレイに「らぶれたー」と表示されたところまでは問題ないのだが、スペースキーを押した途端に「螺武霊多ー」と変換されたのだ。


「……かな」


「確かめてみろよ。俺は見ないから」


「おぅ。サンキュッ」


俺は封筒に手を伸ばす。裏面の送り主を見ると──。──『図書委員会』。何かを悟った俺は、まだ見ていなかった表面を見る。──『督促状』。その文字を見た瞬間、俺は吹き出さずにはいられなかった。


「フッ! ハハハ、ハハハハハ、ハハハ……」


「…え? どうしたんだよ、セイ」


「見てみ、これ」


俺は優に封筒を渡そうとして、落としてしまう。しかし、彼は見逃さなかったようだ。ケラケラと笑い床をゴロゴロと転げ回る。


「こんなのに驚いてた俺達って馬鹿みたいだな」


お腹を押さえながら笑顔で言ってくる優に、俺も笑顔で


「あぁ。本当にな」


と頷く。笑い過ぎて腹筋が痛い。破壊されてるんじゃないかっていうぐらい痛い。いや、さすがに壊れることはないだろうけど。


 その時、先生がやって来た。


「何してるんですかあなた達は! もう8時過ぎてますよ、早く教室行きなさい!」


この台詞で俺らは瞬時に時計を見て時刻を確認し、急いで上履きに履き替え、競争するかのように教室に向かって走り出した。


「廊下は走ってはいけません!」


「先生、俺らが今走っているのは階段です! 正確に言うと、階段を駆け上がってます!」


 笑顔で言う俺らに先生は溜め息をつく。この時、俺はまだ知らなかった。図書室にはあいつがいる事を──。

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