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無数の世界があるこの空間は、世界ごとに時間の流れが異なることは当然の現象だ。

そのため、イマジナリアンの調査隊がいつ何かにさらわれたのか、その救難信号をいつ受け取ったのか、ウェステッドはいつから存在し、先駆者はいつ現れ、いつ王のウェステッドたちが現れたのか、正確な時系列は存在しない。

空間の時間も同様にあやふやであるため、自分がどれほど生きているのか、自分が空間に存在してどのぐらい時が経過したのか、正確に把握するのは困難を極めている。


故に、ウェステッドたちが現れ始めてどれほどの時が経過したのか分からないが。

彼女がやってきた。


藤森椎奈。のちに、ディートリンデと呼ばれるようになる少女。

身体的特徴以外特徴のない女子高生だった彼女は、卒業式の帰りに子供を庇って事故に遭い、短い生涯を終えた。

しかし彼女はウェステッドとして生まれ変わり、混乱のまま、あるいは何かに突き動かされるかのように辿り着いた街で(彼女は名前すら知らなかったが)地方貴族、アルバートを殺害撃破する。

アルバートは妹を守るため、それとも何かしらの意地があったのか彼女を道連れにしようと自爆するも、間一髪彼女は難を逃れて街を後にし、その後も農場でなぜか敵を倒したり、巨大な蜘蛛の姿をしたロボットに言われるままに、あるいはその前に出会った老紳士に言われたように山を登り、その先で竜騎士二人とその竜二匹を撃破。

そこでとうとう力尽きてしまうも、同じウェステッドの少女であるカーネイジに拾われたのだった。


カーネイジとその同行者ミグラントと共にウェステッドが隠れ住む集落にたどり着いた彼女は紆余曲折のあと、冒険者として仮の人生を得ることとなった。

こうして藤森椎奈という少女は、鍛冶屋の娘シーナ・フリューテッドとして冒険者となったのだった。その時、最初に出会った少女メア・グリムスと再会。彼女も冒険者となっていたのだが、最初に受けた依頼は本来初心者の彼女が受けるには早すぎる大規模な戦闘だった。

そのことを知った椎奈ことシーナはほぼ単身で同じ依頼を受け、オークとゴブリンの混成部隊が潜む洞窟に突入。(その時にティターニアと呼ばれるウェステッドと遭遇するも、代わりにカーネイジとミグラントが交戦。取り逃している)多数のオークとゴブリン、そしてそれらを率いていたオークチャンプこと、カブラカンを撃破して無事メアを救助するのだった。


その後、彼女はメアと共に別の依頼を受けたのだが、その先でトラブルに巻き込まれ彼女なりの方法でトラブルを解決。しかし、別の世界で大量破壊を行ったこと有栖川クロエと遭遇、加えて謎の怪生物が現れて三つ巴の戦いの後にクロエに追い詰められるも、クロエの突然の不調の隙を突いて撃退に成功した。


同じ頃、ミグラントはカーネイジからの依頼により彼の命を狙ったウェステッドのサイバービーストことジョン・ゴールドマンJr、ガンヘッドことカルロス・サン・タアナ、キルストリークことロン・キャスター、レッドアイに攻撃を受ける。奇襲を受けたものの、常識外の再生能力と、自身や相手の肉体を膨張させ四散させる生々しい能力にてレッドアイを撃破し、一行を撃退。

経験からカーネイジが絡んでいることを突き止めた彼は、一行を連れてそのカーネイジの元に戻ったのだった。

少女らしく顔を真っ赤にして怒るカーネイジを軽くあしらうミグラント、依頼されミグラントの命を狙っていた三人は宮廷道化師を自称し、カーネイジたちについていくことを決めた。


これが、現在までの彼女たちの話である。しかしこれは確定ではない。

どれが本当の物語なのかは誰もわからないのだ。これは、複数あると言われるウェステッドの備忘録の一つでもあり、その殆どが所々が消失している。

誰が記録したのかも確かではないが、共通する点として、必ず彼女がいる。


黒い女性、ディートリンデとなる藤森椎奈が。

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