第41話 僕は……え、えーーーーっ!?
「あー、お取り込み中申し訳ないのではあるが」
それまで、僕らの様子を見ていた聡明さんが声を発する。僕は警戒して、藤咲さんを自分の背中に隠すように聡明さんの前に立つ。
「いやいや、そんな事しなくても、貴子を時任君に任せる僕の考えは前と変わらないから……」
えっ?
変わらない?
「それよりわたしが気になるのは…………真司!」
彼の名前だったのか、藤咲さんの彼氏は聡明さんの声にビクッとなり、いままで浮かべていたニヤリとした表情からキリっとした表情に変わる。
「はい、何でしょうか。お父さん」
うん?
お父さん?
お父………………いや、ちょっ、えええぇぇ〜〜〜〜〜!!!!
「どういう事!?」
そう言わずにはいられなかった。
「あ〜、そうだったそうだった。時任君は会うのが初めてだね。紹介しよう。藤咲 真司。私の息子だ。もちろん、貴子とは兄妹だよ」
……………………。
僕の頭の中は、今まであった出来事が、走馬灯のように思い出され大混乱に陥っている。
「どうやら子供らには話を聞かなければいけないようだね。ここでは何だから場所を移して話そう」
聡明さんが御来場の皆様に事情を説明をし、僕達は別室に移り話をする事になった。
「つまり、時任君の本当の気持ちを知りたかった? だから、貴子と二人でこの計画を考えたと?」
別室にて聡明さんと真司さん、僕と藤咲さんの形で、部屋に置いてあるソファに座り、真司さんにこれまでのいきさつを聞いている。
「そうです」
どうやら、藤咲さんや香川さんもこの計画に加担しているとの事だった。
真司さんは話をおえて、僕に申し訳なさそうにしている。もしかして、この人って被害者のひとり?
「しかしだ。これはちょっとやり過ぎだとは思わなかったのか?」
「僕はそう思いました。でも貴子が…………ひぃっ!!」
真司さんは明らかに何かに怯えているようだ。
僕は真司さんの視線の先にいる藤咲さんを見る。手をグーにして、ものすごく睨んでいた。
藤咲さんを見て、真司さんに対する考えは間違ってはいないようだ。
おそらく強制的に協力させられたんだと思う。
「貴子! 真司もそうだが、やり過ぎだとは思わなかったのか!」
藤咲さんは涼しい顔をしながら
「あら、お父様、私はお母様から教わりましたわ。どうしても手に入れたい物がある時は、どんな手を使ってでも手に入れなさい! と……」
聡明さんは頭を抱えながら
「あいつは何を教えてるんだ……」
そう小さく呻くような声が聞こえてきた。
「とりあえず、すまなかったな時任君。娘達のせいで色々迷惑をかけたようだ」
聡明さんに頭を下げられる。
「い、いえ。もう済んだ事ですから。それでは僕はこれで」
「あっ、外まで送るわ俊君」
そう言って僕の身体に密着してくる。
「ふ、藤咲さん?」
「ふふふ、さっきの俊君…………男らしくてかっこよかった〜」
焦っている僕をうっとりした表情で見上げる藤咲さん。
冷静になって考えてみると、とんでもない事をしたと思う。僕はどう答えていいのか分からず笑ってごまかす。
「笑ってごまかしてもダメよ」
藤咲さんはスマートフォンを取り出し、画面をタッチする。
『この人は…………俺の婚約者だ!』
今さっき叫んだ僕の声が聞こえてきた。
「録音しちゃってました! てへっ!」
可愛いく舌を出す藤咲さん
それを聞いた僕はあんぐりと口を開けてしまう。すごく間抜けな顔をしていただろう。
もはや僕には言う言葉も無かった。
そんな僕達を、聡明さんと真司さんは苦笑しながら眺めていた。
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