第31話 僕は親友に裏切られる訳がない!

「おはよう! みんなおはよう!」


 僕は教室に入ると元気一杯クラスメイトに挨拶をした。


「あ……あぁ……おはよう」

「お、おっす……」


 何故かクラスメイトから妙によそよそしい反応が返ってくる。


「うん? ね、ねえ、健。みんなどうしたの?」

「い、いや、どうしたのって……なあ?」


 健は苦笑いを浮かべている。

 まあ、確かにあれだけの騒ぎを起こせば、普通に接してくれって言うほうが不自然か。


 クラスメイトの代表格のひとりが僕に話しかけてくる。確か、名前はた、た、た、何だっけ? えーと、まあいいか。


「どうしたって、俺達からしたら、お前のほうこそどうした? って聞きたいんだけど…………なあ、坂口? 時任何かあったのか?」


「みんな薄々は気づいていると思うが、こいつに彼女が出来たって事だ」

「マジか!」


 クラスメイトは顔を見合わせてビックリしている。


「ちょっ、健! 何言ってんだよ! 別にわざわざそんな事言う必要ないでしょ!」

「うるせー! 俺だけに恥かかせやがって! お前も恥ずかしい思いしやがれ」

「なっ、ぼ、僕がいつ健に恥をかかせたって言うんだよ!」


「俺の家に来た時の事を忘れたとは言わせねえ」

「いや、ちょっと待って、それ何かおかしくない? それに確かあの時……忘れるって言ったよね?」

「うるせえ〜! いちいち細けー事言ってんじゃねえ!」


 え…………えええぇぇぇ〜〜〜!!!!!


「くっ、あの後、お前のせいで俺がどんな目にあったか……」


 健は歯を噛みしめながら、何かを思い出しているみたいだ。


「だ、大体だな………」


 まだ何かを言おうとしている健の言葉を遮って、男女のクラスメイトが僕達の会話に気付いて周りに集まってくる。


「ちょっ、話し聞いてたわよ! 何? 時任君が女の子と付き合ってるの?」


「ねえねえ、誰なの! 誰と付き合ってるの! 教えてよ」


 名前も覚えてない女の子達から声を掛けられる。


「それは、え〜と……」


何とかごまかそうと思っていたのに……。


「おーい立花〜〜! 彼氏困ってるぞ〜〜!」


 な、何だと!!


 僕達の周りにいるクラスメイトは一斉に、健が声を飛ばした方に振り返る。そこには今教室に入ってきた立花さんが。


「ちょっ、ほ、本当なの、坂口君」

「ああ、本当だ。俊一といつも一緒にいる俺が嘘を言う訳がないだろう?」


「き、きゃああ〜〜〜〜〜〜!!!!」


 女子達は僕のところから一斉に立花さんの方に向かって行った。


「け、健! き、君は何を言ってるんだ!!」


 健は腹が立つ事に、嫌らしくニヤリと口元を歪めて僕を見てくる。


「ふふ〜ん……油断したな俊一。俺は……やる時はやる男だぜ!」

「何なの! その、ちょっとカッコつけた言い方? 全然カッコよくないからね。それに、今は格好つける所じゃないよね!」


 あまりの言い草に文句を言わずにはいられない。

 立花さんの所を見てみると、女子のみんなから質問攻めにあっていてオロオロしている。


 助けに行かないと……。


 こんな時は僕がしっかりしないと!

 僕は立花さんの彼氏なんだから!

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