第28話 僕は自分が愚かだったことに気づいた
僕は立花さんが何を言ったのか理解できなかった。
えっ? 好き? 立花さんが?
誰を? 僕を…………ドウイウコト?
街灯の光の下で、見つめ合う僕と立花さん。
僕を見つめている立花さんの真剣な瞳を見ていると、どうやら今の言葉は聞き間違いなんかではないようだ。
確かに「好き」と聞こえた。
「あの……今……好きって言ってくれたんだよね?」
僕は自分の耳に入ってきた言葉が信じられなくて、かすれた声でこんな馬鹿な事を聞き返してしまう。
そんな僕に、もう一度はっきりと、聞き間違えようの無い言葉で思いを伝える。
「俊一君が好き!」
「…………う、嘘」
「こ、こんな事、嘘で言わないよ!」
頬を赤く染めながら、僕の言葉を否定する。
「ち、違う! ご、ごめん。そうじゃないんだ。立花さんて健の事が好きなんじゃないの?」
僕は今朝の事を聞く事にした。
「坂口君……何で? え? どういう事?」
「け、今朝の話しなんだけど、二人で教室にいたよね?」
「今朝?」
立花さんは今朝の事を思い出そうと考え込んでいる。
「…………あ〜はいはい! うんうん、坂口君と会話していたね! どちらかと言うと聞いてたんだけどね。ぷっ! 思い出しただけでも笑えるよ。坂口君て怖いと思ってたんだけど、面白い人なんだね。教室に来るなりいきなり『立花! いい所にいやがった! 俺の話しを聞きやがれ! 俺様が三次元の女に話をする事なんてないからな!』って言ってきたんだよね。三次元とか私には良く分からなかったんだけどね。で、ええと姫ちゃん? を攻略するのに徹夜しちゃったとか、ラストで号泣ものだったとか、まさかあそこでああなるとは読めなかったぜ! ふふっ、とか、そんな事を言ってきて、聞いてあげてたんだよね…………それと、どうなるか分からないが頑張れ! とか……って、言ってくれたり結構いい人…………ねえ俊一君? 聞いてる?」
立花さんの話しを聞いて、僕はとんでもない誤解をしていたことを知る。そして、僕が親友に対してした事を思うと全身の血の気が引いていく。
「ど、どうしたの? 俊一君! 何か具合悪そうだよ! ご、ごめんなさい! や、やっぱり私がいきなりこんな事言うの迷惑だったよね?」
立花さんは、僕の事を心配して申し訳なさそうな表情をする。
「ち、違う! そうじゃないんだ! そうじゃなくて……すごく嬉しいよ。本当に嬉しいんだ! 僕も前から立花さんの事が気になってたんだよ」
僕は今の自分の気持ちを、嘘偽りなく伝える。
その言葉を聞いた瞬間、立花さんは口元を押さえ目を大きく開いて、信じられないといった表情で僕に聞いてくる。
「ほ、本当に?」
「う、うん。本当だよ」
「ありがとう。本当にありがとう…………例えそれが今だけでも嬉しいよ」
「えっ、今だけって?」
立花さんはいったい何を言ってるんだ?
今だけって、どういう事なんだ?
「ううん。何でもない。それよりも坂口君の事は大丈夫なのかな?」
そうだ! 急いで健に謝らないと!
「今すぐ健のところに行ってくる。立花さん! ありがとう!」
「う、うん! また明日!」
一度は疑ってしまった親友。その親友は僕の事を許してくれるのだろうか?
後ろを振り返ると、立花さんは優しい笑顔で僕を見送ってくれていた。
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