第27話 僕は立花さんが……。
僕達は学園近くのファミレスに入り、人のいる場所をさけて、店の一番奥の席に向かい合わせで座る。
ウェイトレスさんが注文を聞きに来て、僕達がドリンクバーを注文してから、かれこれ10分ぐらい経とうとするが、僕達は未だに無言だった。
立花さんは何かを言おうとしているのだろうか? 何度も口を開きかけているのだが、戸惑いがあるようで言えないまま時間が過ぎる。
僕は、健と立花さんの事を話されると思っている。でも、それを聞いて現実に受け止めるのが怖くて、自分から聞く事ができないでいる。
そして、それを立花さんから聞いた後、とても笑顔で会話なんてできない気がする。
二人で何杯目かのドリンクを飲んだ後、店が混んで来たのもあり、僕達は店を出る事にした。
僕達が店を出る頃には、すっかり日も沈み辺りは暗くなっていた。
「えっと……立花さん? もう暗くなってきたから……家まで送っていくね?」
立花さんは、僕が話しかけている間も他の事を考えていたのだろう。少し驚いた表情をしている。
「ご、ごめんなさい。え、えっと……」
「遅いから家まで送っていくよ」
「えっ、い、いや……」
「ごめん、嫌なんだったらやめておくよ」
「ち、違うの! そうじゃくてね……お、お願いします!」
「う、うん……それじゃあ行こうか」
心の中でほっとため息をつく。
嫌と拒絶されたと思って落ち込んで、お願いしますの言葉に希望を見つけて、ちょっとした言葉の端を敏感にとらえて、そしてそれを自分勝手に解釈してしまう。
もう親友の彼女のだって分かっているのに…………。
僕は何て嫌な奴なんだ。
「…………くん?」
「…………」
「俊一君!」
「え…………あっ、ご、ごめん!」
「い、いえ……もう家に着いたから……」
「え?」
目の前を見ると、立花と書いてある表札が出ていた。
ここが立花さんの家なんだ。
初めて見る立花さんの家は、築数十年は経っていると思われる小さな家だった。
だけど、僕にはそれが妙に立花さんの雰囲気とマッチしているように思えた。少しの間、じっと僕が立花さんの家を見ていたからだろう。
「たかちゃんの家と違って、小さい家でビックリしたかな?」
恥ずかしそうにそんな事を言ってくる。
僕は目の前に建つ家を見ながら答える。
「全然、そんな事思わないよ!」
「そ、そう。……ありがとう」
会話はそれで終わり、また沈黙が流れる。
「それじゃあ、僕帰るね? 明日また!」
帰ろうと振り向いた時に、立花さんが僕の制服の袖を掴んで呼び止めた。
「待って!」
女の子に袖を掴まれるなんて、経験した事も無かったのですごく驚いた。
「どうしたの?」
立花さんは俯きがちに僕に言葉を伝える。
「……こ、こんな事……い、今こんな状態の俊一君に話すのはとても……とてもズルい事なんだと思う……けど、ほんの少しでもいいから気持ちを……」
立花さんが言おうとしている事は健との事だろう。僕はそれを理解しているからこそ、立花さんの言葉を最後までしっかりと聞くつもりだ。
そして、ばっと立花さんは顔を上げ、僕の目を真っ直ぐに見てから、ゆっくりと口を開いた。
「俊一君が好きです」
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