第23話 僕の部屋に女の子がまた来るなんて……。
「なあ、俊一。どっか寄ってかねーか?」
歩いている間、どうしても、藤崎さんの事が頭から離れずにいた僕は、健に話を振られて我にかえった。
「えっ、何?」
「ったく、やっぱり話し聞いてなかったな? どこか寄って行かねーかと思ってさ……どうよ?」
「ごめん。そうだね、じゃあファミレスでも……」
「却下!」
「何で?」
「いや、お前、この時間帯混んでるじゃん! 落ち着いて静かに話しができる所にしようぜ」
たしかに、人がたくさんいる所で話すような内容ではない。
それに、周りに人のいることが僕の今の苛ついた気持ちを、逆なでする事にもなりかねない。
「……健の家に行こうか?」
僕はぽつりと呟いた。
「あ、あ、あほか! おまっ、馬鹿じゃねーの! 俺の家って……」
「な、何でそこまで……、あ〜そっか。もう帰って来てるの?」
心底嫌そうな顔で頷く健。
そんな僕達のやりとりを見て、立花さんは不思議そうにしていた。
「さ、坂口君でも動揺する事があるんですね?」
「あぁん?」
健は立花さんを脅すように、凄みを効かせて見下ろす。
「ご、ごめんなさい!」
頭が膝に付くくらい深く頭を下げる立花さんを見て、僕はすかさず健のつま先を踏みつけた。
「いてえっ! なにすんだよ!」
「立花さん、気にしないでね。 健のお姉さんなんだけど、どうしてか……」
「ば、馬鹿野郎! 余計な事喋ってんじゃねーよ!!」
健は慌てて言葉を挟んで僕の口止めを図る。
「君が悪いんだろ? 何で立花さんを脅してるんだよ!」
「うるせえよ!」
でも、本当に、何で健はお姉さんの事が苦手なんだろう? 何回か会った限りではすごく優しそうな人に見えたんだけどな。ものすっごい美人だったし。
「それじゃあ、僕の家に来る?」
健の家がダメで、立花さんの家に行くのは抵抗があるから、そうなると、選択肢は一つって事になる。
「おう! というか、この場合はその選択肢しかないんだから最初からそう言いやがれ! ったく、無駄な時間使わせやがって」
好き勝手言っている健の話をスルーして。
「立花さんも来る?」
ふと、一週間前の事が頭をよぎる。
もちろん今日は健もいるから、あんな事は起きるはずもないと思うけど。
若干の戸惑いを見せながらも、立花さんは「う、うん。お邪魔します」と答えてくれた。
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