第21話 僕の婚約者が他の男に……。
屋上の階段を駆け下りて、校門前にたどり着く。
周りは下校の生徒達で溢れていっていて、部活動中なのに見に来ている生徒達までいる。
「す、すっげえ〜、俺、リムジンなんて初めてみたよ!」
「い、いや、それも驚きだが、何だ周りにいるいかにもな人達は……ボディーガードっぽいよな?」
「あ、ああ、それっぽいよな。 一体誰なんだ?」
「誰あの男の人! 超イケメンじゃない!」
「うんうん、身長も高いし、スーツ姿もビシッと決まっていて格好いいしね!」
「結構お似合いよね? 一体どういう関係なんだろう?」
生徒たちのざわついた声を耳にしながら、僕はその溢れている生徒達の中に突っ込んで行った。
「ご、ごめん! ちょっと通して!」
生徒達の間をかき分けて、前へ前へと進む。
「誰だ! 押しているやつは!」
「キャッ! ちょっ、ちょっと! 押さないでよ〜!」
「ごめん! 緊急なんだ!」
他の生徒たちの非難の声を浴びながら、ようやくその中心人物逹の元へとたどりつく。
「ふ、藤咲さん!」
僕は大きく声を張り上げていた。
「えっ。……し、俊君」
藤咲さんは目を大きく見開いて僕の方を見ている。
そして、そのすぐ傍にいる男性は、口元にうっすらと笑みを浮かべて僕の方を見ていた。
「い、一体誰なの、その人は!」
「えっ、……誰って、な、何でそんな事貴方に言わないといけないの! 貴方には関係ないでしょ!!」
「何でだよ! 関係あるでしょ! だって僕達は……」
…………ボクタチハ?
…………え?
……僕は一体何を言おうと……。
「…………」
「……何よ! いくじなし!! アンタみたいなヘタレ野郎、顔もみたくないわ! 行くわよ!」
僕から背を向けて、男の人と一緒に車の方に歩きだす藤咲さん。
「藤咲さん!」
僕は、歩き出す藤咲さんに近づこうとするけど、僕と藤咲さんの間に、ボディーガードらしき男たちが入り込んで僕の行動を遮る。
「はははっ……」
男の人は僕の行動を見て、嘲るように笑いながら、藤咲さんの耳に口を近づけて何かを囁いている。
「い、一体何がおかしいんですか!」
「はははっ……失礼。だけど、彼女が嫌がってるのが分からないのかい? そんなにしつこいと彼女だけじゃなく、他の女性にも嫌われる事になるよ、はははっ」
そして男の人は、藤咲さんの腰に手を回し自分の方に抱き寄せる。
「なっ?!」
藤咲さんも嫌な顔をする訳でもなく、されるがままに寄り添うようにしていた。
そして、男の人は一瞬こちらを振り向き、挑発するような視線を僕に向けてきた。
その目が僕には「俺の女だ!」と言っているように見える。
「く、くそぉー。は、離れろ……離れろよーー! こ、この……うがっ」
大声で叫びながらその男性に飛びかかろうとしたのだが、あっさりと近くにいるボディーガードに阻止され、地面に組み伏されてしまう。
「は、離せ離せーー! ふ、藤咲さんから離れろ! 藤咲さん!!」
僕は頭や身体を地面に抑えつけられながらも、その男性の顔を睨みつけ、藤咲さんの背中に向かって叫んでいた。
でも、僕の言葉は虚しく、藤咲さんに届く事はなかった。
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