第18話 僕の婚約者が緊張なんてする訳がない!

「ど、どうぞ。粗茶ですが……」


 あの後、以外にも文句も言わず素直に、藤咲さんは僕の家に来てくれたのだった。

 正直、何で私があんたの汚い家になんか行かないといけないのよー!

 なんて、叫ばれたりしたらどうしようかと思ったんだけどね。


 まあ何はともあれ一関門クリアーである。後は落ちついてって……あれっ?


「どうしたの?」

「………………」


 何故か、藤咲さんは僕の部屋で緊張しているのか一言も喋らない。

 緊張って……まさかね。ははっ……それはない!


 はっ?!

 まさか、あまりの狭さにびっくりしたとか。

 自分の部屋を改めて見渡してみる。

 僕の部屋は大体6畳ぐらいで、そこにベッドとかテレビとかオーディオとか本棚とかが置いてある。さらに床には幾つかのゲーム機まで置いてあるのである。


 自分で見て、確かに狭いと思う。というか藤咲さんの感覚からしたら、ほとんどの部屋が狭いのではないかと思うのだが。


「………ね、ねえ? 俊君」

「何?」


 何かまずったかな? そう思った僕だったのだが……「ご、ご家族の方達はいないの?」以外にも藤咲さんはそんな事を聞いてきた。


「うん、母さんなら今の時間買い物に行ってると思うし、妹はどうやらまだ学校から帰ってないみたいだね」

「そ、そうなんだ」


 何故か藤咲さんは頬を赤らめる。


 そのまま、部屋は会話の一つも無い重苦しい静寂に包まれる。


 どうやら本当に緊張してるみたい。考えてみればお嬢様が男の部屋に入っている訳だから緊張もするよね。


 しかも、二人きりな訳だし……。


 んっ?


 二人きり?


 あっ! しまった!! そういう事か?!


 藤咲さんはこの家に、もしかしたら、自分と僕の二人しかいないかも知れないって事を考えていたから、家族の事を聞いてきた訳か!


 まずい!


 僕は別に変な事を考えて、藤崎さんを家に呼んだんじゃ無くて、ゆっくりと話をしたかっただけなんだってことを急いで説明しないと!!


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