月面基地における下水処理の方法について

 皆さんは月面基地で出る汚水をどう処理しているか考えたことがありますか?

 国際協約において、月面への汚泥の投棄は緊急時を除いて禁止されています。

 ですから、もちろんきちんと処理をしているのです。


 現在月面基地には、国際月面開発機構の職員の他、各国から派遣された研究員などが駐在していますが、その数は全部で約千人になります。

 一人が文化的な生活をする為に、汚す水がどれくらいになるか、また、排泄物がどのくらいになるか、それらを考えて月面基地には汚水処理用の施設が2ユニット建設されています。

 処理方法そのものは単純で、曝気による生物分解を徹底し、残った汚泥(スカム)は植物研究の肥料や、細菌研究の素体に利用されます。乾燥した脱水ケーキは一部建築資材として用いられています。

 処理水は厳密に管理され、細菌等で問題がなければ大部分は浄水濾過槽へ引き入れます。また一部はトイレなどの中水や、植物へのかん水に利用されます。

 水は貴重で、なくなったからと言って簡単には補給できないので、循環を徹底しているのです。


 さて、処理法については、概ね地球と同じですが、違う所もあります。

 下水管です。

 ご存じのとおり、月面の重力は地球の六分の一ほどですから、自然流下による下水の収集は非効率です。ですから、ポンプを動かして下水を流下させています。

 この当たりは、地球と同じなのですが、月面基地の下水管は強化プラスチック管をプラスチックユニットでくるんだもので、それを更にコンクリートボックスで保護しています。

 月面基地においては、限られた大気の関係上、汚染が最も恐れられています。


 以上、月面の下水処理について簡単に説明しましたが、最も重要なのは、月面基地で使用する全エネルギーの15%、酸素の25%は下水処理に用いられていると言うことです。

 月面基地では、生分解しやすい洗剤以外は使用が禁止されているくらい、みんなができるだけ環境に気を配っています。


 地球では、月面基地に比べて水が豊富にありますが、それでも限られた貴重な資源である事をもう一度考え直して、水を大切にしてください。


(月面基地公衆衛生管理委員会リーフレット草稿より抜粋)

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