月面基地建設のための重機がない問題

 月面ってさ、大気がものすごく薄いんだ。

 だから、とりあえず現行の重機群が使えないのは解るよね。

 酸素がないと燃焼系のエンジンは回らないし。

 じゃあ電動ならどうだって。まず馬力が全然足りないんだけど、まあ油圧とかを上手く改良して、条件クリアしても、宇宙線にやられちゃう。

 コンピュータを保護しても、今度は駆動系をどうするかって問題が出てくる。

 月面ってさ、日の当たる所と陰の部分が普通に百度単位で変わるのね。


 だから、ゴビ砂漠よりも砂漠。


 シルト質の土砂と言うより粉末を敷き詰めたみたいな環境で機械を動かすと、すぐにまとわりつかれて動かなくなっちゃう。

 更には、当然、地面からの反発がえられないから、移動もできない。水田に軽自動車で突っ込んでも、まあ思う通りには動けないでしょ。

 それで、重たい岩とか重機で持ち上げたら、勢いついてすぐに重機は転んじゃう。


 マジで、重力6分の1は伊達じゃない。


 じゃあどうするかって言うと、人力ウィンチ。これ最強。


 ワイヤー巻いて引っ張る。月面は大抵これで解決する。シンプルだから掃除も楽。

 地面はグズグズだし物は軽い。アンカーだけは二メートル打ち込んだ上に固化剤使って設置しないといけないから大変だけど、まあアンカー打設が終われば作業の半分終わったようなもん。


 何が言いたいかって言うと、偉い人たちにはもっと動きやすい作業服を作ってもらわないと仕事にならないってことだ。


(月面基地建設初期に作業に従事し、流星塵の直撃を受け死亡した青年のブログより抜粋。彼はその死因により同死因で人類最初の男として名を残した)

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