第2の殺人
窓の外を見ると大雨が降っている。
俺たちの運命を嘲笑うかのように大嵐の風が窓ガラスを打ち付ける。
「じゃけん、早く救急車をじゃけん!だれかじゃけん!」
竜馬が最初に声を上げた。
「救急車って・・・携帯の電波が通じないワー」
銀が携帯電話を取り出し慌てている。
「・・・・なんて酷い・・・デス・・・」
王子は冷静な様子だ。
食堂では様々な嘆き悲しみと混乱が見受けられる。
飛車は息絶えたように見える。
飛車は食堂のテーブルに血やワインを多量に飛びちらしながら絶命した。
食堂の床には飛車が喉を抑え込みながら倒れている。
「なんでやねん!なんで飛車ハンが死ななあかんねん!」
金成の悲痛な叫びが聞こえる。
念のため、医者である豚先生に見てもらった。
「即死ですな。手の施しようがない」
「・・・・」
ナイトは虚ろな目で死体を見つめる。
「このワイングラスに毒物が入っていたのか・・・これは殺人事件!人殺しはこの中にいるんじゃないか!」
と俺は叫んだ。
「ぞうなああああ!」
二歩が狼狽える。
「そんな奴がこの中にいるとか考えたくないワー」
銀が怪訝な顔で答える。
「・・・・・・・・・・・・」
ナイトは何も言わずそれぞれの顔を虚ろに見つめる。
「人殺しは誰やネン!出てこいや!」
金成はこの10人の中から犯人がいると疑いだした。そこで将軍はなだめるように答えた。
「疑心暗鬼はよくない」
だが、この中に殺人犯がいるのかもしれない。
「あまり、現場を触らないでください。ここからは警察の仕事だ。しかし、携帯も通じないし、この嵐の中で船は出せない。現場をこのままにして朝を待ちましょう」
桂警部は事件にでも遭遇しなれているのか、現場を仕切ろうとする。
「この中に殺人犯いるとかないワー。もともとお前ら全員信用していなかったし明日まで部屋に籠っとくワー」
この銀の発言を皮切りに将軍も声を発する。
「俺が信用できるのは己の肉体のみ・・・部屋に戻る・・俺を殺しにくるなら返り討ちにしてやるから覚悟しやがれ!」
さらに、金成も便乗する。
「ワイは部屋に戻るで!」
「・・・・・・・・・・・・」
ナイトは言葉を発さずに一緒に部屋に戻る集団についていった。
それぞれが自分の命に危機感を感じたのか自分勝手な行動を取ろうとしている。
警察だけには任せてられない。俺も一応探偵だ。みんなを導いていかねばならない。
そして、飛車を殺した犯人を見つけなければならない。
「みなさん落ち着いてください!部屋に戻りたい人は戻って鍵をかけておいてください!でも、私たちがラウンジで見張り合いをしていればだれも殺しはできないはずです!」
俺はみんなをバラバラにしなように提案した。
まだ、この殺人だけで終わるとは限らない。
殺人鬼はまた別の人間を殺すかもしれないなら、なるべくみんなで固まって過ごすのが安全なはずだ。
部屋でも鍵をかけて過ごせば安全かもしれない。
「僕はその意見に賛成するよ。みんなも賛成かい?」
船長の助け舟もあり、残った全員も賛成のようだ。
「まさかこんな事になろうとは・・ラウンジはこちらデス。ついてきてくださいデス。」
王子はラウンジに案内しようとして動き出す
「私は刑事ですから、現場を検証しておきたい。医者である豚先生と、探偵の君も手伝ってください。」
桂警部が提案する。探偵、医者、警察とそろえて現場を検証すれば何か証拠が見つかるかもしれない。
俺、桂警部、豚先生の3名は殺人現場の食堂に残ることになった。
部屋に戻るのは銀、将軍、金成、ナイトの4名。
ラウンジに行くのは、王子、船長、竜馬、二歩の4名。
他の人たちが部屋から出ていったので、食堂での検証と推理をはじめた。
「疑いたくはないが怪しいのは、主催者の王子。料理を作って運んでいた二歩。飛車の席から見て右側の席にいた金成。斜め右の銀。正面の船長。左斜めの竜馬。左にいた俺となる」
俺はあらゆる可能性を検討するように現場の状況を振り返った。
「しかし、だれにでも毒物を入れるチャンスがあったのではないかな」
豚先生が思い出しながら答える。
「全員のワイングラスは最初から準備してあったしね」
桂警部がいう。
「だれにでも殺人は可能だったということか」
豚先生が推測する。
「なんの毒が使われていたかわかるか?豚先生」
俺は豚先生に尋ねた。
「青酸カリか、農薬を混入したか、トリカブト毒か、シアン化ナトリウムか・・・」
豚先生は毒物の種類をつぶやく。
「わからないってことじゃないか」
俺は突っ込みを入れた。
「ちゃんとした設備が整っていないとわからないのだよ」
豚先生は言い訳をする。
「とりあえず現場を見てみましょう」
話していても拉致があかないと見た桂警部は俺と豚先生を現場まで促す。
食堂にはまだ食べていない料理が並べられている。
もう食事をしたい気分ではない。
「毒はワイングラスに付着していたのか、飲み物に混ぜられていたのかわからないか?」
俺は桂刑事と豚先生に尋ねた。
「そういうのは警察の中でも鑑識員に任せているのでわからないな」
「私も毒は専門外なんです。かなりの危険な毒物ならここにいるのも危険かもしれません。布を被せておいて、この部屋は施錠しておきましょう」
現場を見て回るも大した発見はなかった。
俺は殺人現場を調査したこともないので何をどうみればいいかというのがまったくわからなかった。
もっとちゃんと勉強してればよかったと後悔する。
「では、我々もラウンジに向かおうか」
桂警部が促し、豚先生は答えた。
「そうしましょうか」
俺は特に成果もなく、悔しい思いをしていた。
急に叫び声が聞こえてきた。
「ぐえ~っ殺されワー!!」
叫び声が食堂に響き渡る。
すぐ上の2階のゲストルームから聞こえた。
古い館だからなのか、壁が薄く声がハッキリと聞こえる。
「何かあったんだ!助けにいかなくては!」
桂警部が先に走りだす。
「急ぎましょう!」
豚先生は太っていて走るのが遅いため、俺と桂警部が先に走りながらゲストルームに向かった。何事かと個室のゲストルームから出てきた将軍、金成に遭遇した。
「叫び声が聞こえたのだが何かあったのか?」
将軍が怪訝な顔をしながら部屋から出てきた。
金成が杖を突きながら部屋のドアから出てくる。
王子、二歩、船長、竜馬の4人が遅れてやってきた。
最後に豚先生がやってきた。
王子は状況を理解して、持っていた自分のスペアキーを使い銀の部屋である5号室を開ける。
王子がドアをたたいても反応がないので、ドアを開けた。
「何があったのデス!部屋の鍵を勝手に開けさせてもらうデス」
中に入ると悲惨な光景が目に入った。
「なんてことデス・・・」
ナイトは首を吊った状態で見つかる。
「クビをつったところならまだ助かるかもしれない。早く下すぞ。身長の高い将軍と、君も手伝え!」
桂警部は救助を呼びかける。
桂警部と呼びかけに応じた俺と将軍はナイトの体をロープから下した。
「心肺蘇生法、人工呼吸を開始する」
豚先生はどうすればいいかを考えながら答えた。
「もたもたしているんじゃない!どうすればいいんだ!」
船長は慌てている。
豚先生はナイトに人工呼吸を繰り返すが反応はない。
「ダメです・・死んでいる・・・・」
豚先生は告げた。
「ダメだったか」
船長は呟いた。
「そういえば、銀もみあたらへんで!銀の部屋も確認せな!」
金成はみんなに提案した。
「銀の部屋も開けてみるデス」
そして、隣の銀の部屋を開けた。
窓のない密室で換気もされてない部屋に異臭が漂っているのがわる。
「うわああああああああああ」
思わず叫んでしまった。
もう一人の死者がいた。
銀はクビを切られてベッドに横たわっていた。
クビを切ったナイフはベッドの横においてある。
それはあまりにも悲惨でグロテスクな光景だ。
カッと目を見開き驚くような表情をしながら銀は絶命していた。
「ダメです・・死んでいる・・・・」
豚先生は呟いた。
「これは酷い」
船長は呟いた。
これは確実に死んでいる。
「なんでや!なんでナイトも銀も殺されなあかんねん!」
金成が悲痛な叫びを言っている。
飛車が死に、たった1時間余りでまた銀とナイトが死んだ。
3人もだれかの悪意によって殺されたのだ。
「まだ殺人は続くのか・・・・」
俺は呟いた。
自分自身の意思とは無関係に加速していく運命の歯車からは逃れることができない。
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