第1の殺人
無人島の船着き場に着いた。
そして、一瞬、激しい頭痛と立ち眩みがしてしまった。
どうやら船旅で疲れたのだろう。
ここは小さな島のようだ。
無人島にそびえ立つ館が遠くに見えた。
出迎えが来たようだ。
船着き場には出迎えてきた2人の姿が見えた。
「皆さん、お久しぶりデス。私の館へようこそデス」
IT企業の社長であり、この無人島の館の主である王子が挨拶する。
王子は白髪の長髪であり、かなりの美男子である。
「わだぐじめはごの2日間、皆ざまの執事の役割を担当じまず二歩ともうじまず。なんなりどお申じ付げぐだざい」
二歩も挨拶をする。二歩は腰が曲がり体は常に挙動不審に動いており、しわくちゃな顔には大きなギョロっとした目玉がついている。
王子と二歩の案内で無人島の館にたどり着く。
「昔に建てられたものを改装したものデス」
王子が館に手を向けながら説明する。
「こういう無人島での館を見るとクローズドサークルでの謎の連続殺人事件みたいなのがおきて欲しいと期待するよ」
俺は冗談を言った。
「これから起きる殺人事件の謎を解いてこの島を出てくださいデス」
王子は不敵な笑みを浮かべた。
「探偵が来る場所には事件あり。事件が起きても解決してやろう」
事件が起きたら面白いと不謹慎に考えてしまった。
不気味で古びた館に見えたが、エントランスに入ると外観とは違いリフォームがされていた。
赤いカーペットにシャンデリア。正面には大きな階段がある。壁には大きなノッポの古時計がカチカチと音を立てて時を刻んでいる。エントランスには剣などが壁際に飾られている。
「うおお!この剣って本物?」
ここではしゃいでる将軍は元軍人の傭兵らしい。身長はかなり高く、色黒でマッチョのスキンヘッドで、グラサンをしている。
「レプリカじゃないかワー」
怪訝な顔をした銀は銀行員である。髪が七三別けで、端正な顔立ちをしている。そして、剣に触れようとしていた。
「ざわっだらあがああああん」
二歩は止めるように促す。
「本物かワー」
銀は不機嫌そうに答えた。
「王子は儲かってまんな。ワイにも分けてくださいな」
金成は王子に向かって話す。金成は自営業であり、見た目はオールバックのポニーテールをしている。とある事故で片足を無くしたらしく義足で杖をついて歩く。
「ここ携帯が通じねーじぇねーかよオイ!」
飛車は急に怒り出した。飛車は保険の営業マンのようだ。
「ここは回線が通じないので、申し訳ありませんデス」
王子が答えた。
「どうしてくれんだ!オラ!」
飛車はまた怒鳴った。
「明日の昼頃には帰るし大丈夫じゃけん。落ち着くじゃけんの」
竜馬がフォローを入れた。竜馬は財閥の御曹司で、モジャモジャ頭が特徴的だ。
「騒ぐんじゃない」
桂警部は警察官で、背は低いが筋肉質なのが特徴的だ。
「オラァ・・・・・」
飛車は静まったようだ。どうやらここでは携帯が使えないらしい。
「・・・・・・・・・・・・」
最後に部屋に入ったナイトは簡単な自己紹介以外は言葉を発していない。ナイトは小説家らしいが黒髪ロングでかなりの美人で人を寄せ付けない。
「スペアキーは1つだけあり、私だけが持っていますので、鍵を無くされたりした際は私に言ってくださいデス。二歩は部屋の案内をお願いしますデス」
虹色のスペアキーをみんなに見せてくれた。普通のカギはそれぞれ一色である。
王子に指示され、二歩に一通りに部屋を案内された。
1階には、ラウンジ、食堂、遊戯室、厨房などがあるようだ。
2階には王子専用の部屋と12室のゲストルームが存在している。
それぞれ1号室から12号室までの部屋の番号が割り当てられていて、それぞれ個室の鍵を渡された。
部屋はオートロックではなく、施錠するタイプの鍵だ。
俺はゲストルームの2号室に入った。
ゲストルームには窓がなくそこまで広くない個室だ。
トイレもなく、簡易シャワーもない。
共同のお風呂とシャワールーム、トイレが2階と1階にそれぞれ1つだけあるらしい。
新しいベッドだけが置いてあり、窮屈な感じがする部屋だ。
案内をされていた時に、遊戯室で交流しようという話になり、部屋に荷物を置いてすぐに一部のメンバーは遊戯室に集合することになった。
遊戯室にはポーカーやブラックジャックに興じられる台とチップがある。
ダーツ、ビリヤード台、冷蔵庫には冷やした飲み物、豪華で大きなソファーなどが置いてある。
遊戯室では竜馬、将軍、飛車、の3人がポーカーの賭けを始めていた。
ポーカーをしてない他の2人はソファーに腰かけ雑談している。
俺もソファーに腰かけて雑談に入ることにした。
「2人はポーカーに入らないのかい?」
「私は賭けを見ている分には楽しいのだが、プレイヤーとして参加するのは嫌なんだよ」
豚先生はコーヒーを飲みながら答えた。豚先生は医者をしており、豚のように非常に太った見た目をしているため豚先生と呼んで欲しいと言っていた。
「僕は賭けをするようなお金がなくてね。漁業は大変なのだよ。」
船長は金銭面で苦労しているようだ。
「大変なんだな」
「探偵業はやっていけるのか?」
船長が腕を組みながら尋ねる。
「探偵なんて大した収入はないな。そういえば天気が悪いようだけど帰りは大丈夫かな?」
「大雨が降ってきたようだね・・・今夜は大嵐がくるかもしれない」
船長が窓の外を眺めながら答えた。
「海の男の経験というやつか・・」
「私たちはここから、帰れるだろうか。携帯も通じないし」
豚先生は通じない携帯電話を触りだした。
船長は頼もしそうにいう。
「嵐の中の運転はできるけど、命の保証はしない」
「なら結構」
豚先生は船長に対して手を前に差し出しながら断わった。
俺はしばらくして雑談した後、会話を切り上げてポーカーをしている卓に行くことにした。
よくポーカーを見てみると1回で数千円が動く高額レートで賭けをしていた。
チップの量を見ると竜馬が大勝をしている。
竜馬は、高いレートの賭けに対してまったく怖気着くことはなく強気だ。
飛車のかけ方はブタ札であってもはったりをかましてしまうが、嘘がわかりやすく態度でバレてしまう。飛車は賭けに弱いのか死にかけの寸前の命だ。
将軍はグラサンをしていて表情がわかりにくく、ポーカーフェイスだ。
「俺は死んだからもう抜けるぞコラァ!!」
飛車が暴れだした。
「別に遊ぶ金くらいあるだろじゃけん!」
竜馬がなだめるように答える。
「御曹司なら金くれよコラァ!!」
「黙れ」
将軍が一言発しただけで場は静まった。
「ひぃコラァ!」
飛車はおとなしくなった。
二歩が遊戯室に来て、ドリンクを注いでくれた。
「二歩!部屋にいる王子を呼んできてくれないか。」
将軍は二歩に用事を頼んだ。
「わがりまじだ」
そうして、部屋を出た二歩は王子をつれてきた。
「何デスか」
「久しぶりにゲームに参加しないかと思ってな」
「この後は食事の準備を手伝いますので、難しいデス」
「それは仕方ないな」
将軍は諦めたようだった。
そして、17時半になったので食堂に集まった。
厨房では二歩がフルコースのフランス料理を用意している。
二歩は食堂の食器の準備もしている。
一人で行うには結構大変なようなので、王子も少し手伝いをしている。
18時には全員で食事をする予定だ。
全員が座れる大きなテーブルでの食事だ。
俺は末端の席に座り右隣には飛車が座った。
食事まで時間があったため、飛車に話しかけた。
「保険の営業は順調かい?」
「順調だオラァ!お前も保険に入るんだオラァ!格安でサービスするぞオラぁ!」
「保険の押し売りは勘弁やで?」
飛車の右隣に座る成金は会話に割り込んできた。
「うちの死亡保険なんて業界最安値なのに他社の保険と内容は変わらないしおススメだぞオラぁ!俺自身も死亡保険は入っているんだオラぁ!もしもの時には必要なんだオラぁ!」
「買う訳あらへんがな。死ぬ確率がものすごく低いから成り立つんやで」
「死亡保険を受け取る家族もいないのかオラぁ!」
「天涯孤独の身であるワイには勘弁やで」
そんな感じで雑談している内に食事の時間になり、18時の時計の音が鳴った。
そして、王子は声をあげた。
「今日はお集まり頂き誠にありがとうございます。今日は是非とも親睦を深めましょう。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
全員がワインを口にした時に異変は起きた。
飛車が声を上げた。
「ぐ・・うぐぐ・・・・ゴラァ!!!!」
噴水の如く血しぶきがまったかに思われた。
これは赤ワインなのか血なのか。
手からワイングラスを落とし、飛車は悶え苦しみ倒れた。
探偵をやっていても人の死というのを近くで見たのは初めてだ。
俺の中には驚きと恐怖があった。
心臓がバクバクと鼓動をたてているのがわかる。
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