メルト
花梨
メルト
「それにしても黛くん、よく私なんかと遊んでくれるよね。」
少し氷が溶けて水っぽくなったアイスココアを、ストローでくるくるとかき混ぜながら彼女は言う。学校では化粧をしない彼女が珍しく瞼にのせたサーモンピンクが、キラリと光った。
「…別にいいじゃん。僕は澪ちゃんと話すの、楽しいし。」
「ふふ、でも転校してきて最初に話しかけたのが、私なんでしょう?嬉しいけど、私みんなから〈二組の花子さん〉って言われてるんだよ。」
「二組の花子に気をつけろ。」
転校してきた僕に、クラスメイトが口を揃えて言ってきたことだ。艶があって長くて綺麗な髪、しっかりと校則を守って着ている制服、彼女のそういう美点が、彼等の曇った眼には良く映らなかったようだ。阿呆らしい。
「みんな幼稚なんだよ。だって実際に話してみたら全然いい子だったし、正直クラス…ていうか学校で一番可愛いと思うし。」
「ええ、趣味悪い」
くすくす笑って、僕のことなんて相手にしてくれない。少しして、彼女が続けた。
「あのね、黛くん優しすぎだよ。私なんかとじゃなくて、他にちゃんと友達つく「実は僕さ、霊感あるんだよね。」
彼女の話を遮った。
「本物の花子さんはこんな風に人に気遣いとかできないし、こんな可愛くなかったし、澪ちゃんは澪ちゃんだよ。」
自分でも何を言っているのかわからない。けど、彼女が自分を傷つけるようなことを言うのがなんだか耐えられなかった。
「…黛くん、ほんと趣味悪いね」
先ほどと違う、溶けそうな笑顔だった。
メルト 花梨 @mashounolady
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