第2話ゴブリンの事を知ろう
行動を起こしたことにより、数匹のゴブリンが俺を囲む様についてきた。
護衛されるなんてゴブリンでも
一度で分かって貰いたいのだが、ゴブリンはちょっとめんどくさい習性があってね…一度では済まなかったんだよ。
説明しよう!
軽い話だったら普通の声でも皆と話してることになって問題ない。しかし、真面目な話は、大きな声でないと複数に話している事にならず、普通の声の大きさだと一匹に話すことを意味するという何とも理解に苦しむ習性があった。
聞こえていても相手の目を見て話をしなくては、そのゴブリンに話したことにはならない。
真隣とかで話しているんだから、聞こえていたよ~って普通はなるけど、ゴブリンルールだかマナーだかわからないが、違反になるから聞こえていないふりをするのが当たり前。
因みに、囁くのは軽い話であっても、相手を指定しない限り、他の仲間ゴブリンに耳打ちで伝えなくてはならないことを意味している。
指定ってのは、「君だけにいうけどー」とか「お前と〇〇だけに話したいことなんだけどー」みたいな感じだな。
うっかり「愛してる」なんて言葉だけ囁いたら、仲間皆に伝わって大恥をかくことになる。
話は戻りまして。それじゃ、大声で話せば一発で済むじゃーんとか、囁けば良かったんじゃないか?って思うだろう…
でも、生まれたてで声を出すことに慣れていない俺は、ゴブリン的ルールの大きい声に当たる声量が上手く出せなかった。
囁くのも近付いて耳元まで口を寄せなきゃならない。
よく分からないゴブリンに、キス並に近い距離まで近付けるか?
俺は、百歩譲って親友や友人でなければ無理だ。
いやいや、それ以前に、いきなりファンタジーの中でもグロい部類に入りそうなモンスターと息のかかる距離って無しだろ。
自分が同じモンスターでもさ。
そんなこともあって、一匹一匹に同じことを話していたから洞窟の外に出る頃には疲弊し、喉もガラガラ。
異世界転生なんて少年心を擽る出来事なのに、初めて見る異世界の風景は、物のシルエットが見えないくらい真っ暗。
思い返してみれば、壁や歩いていた道に落ちていた石や岩が発光していた気がする。
《こんな真っ暗で、どうやってスライムの居るところまで行くんだ?》
《…おめぇ…目が悪いみたいだな。》
うっそん。
他のゴブリン達も口々に目が悪いことを指摘してきた。
いや、確かにサラリーマン時代は視力が弱ってきてて…っていうか老眼入り始めてたから仕事の時は眼鏡を付けていることが多かった。
でも、転生して新しい生命体になったのに、目の悪さだけ引き継がれるってどういうこと!?
異世界転生って種族問わずチートなんじゃないの!?
そういえば、異世界転生とか転移って神様と遭遇とかそういう分かりやすいことがあるんじゃ…
あ、不幸な死因じゃないから普通に転生って感じなのか!?
頭を抱えてしゃがみこんでいると、俺の体の二倍以上あるゴブリンが、何の予備動作も声を掛けることもなく、俺を俵のように肩に担ぎあげた。
《うお!?》
《はぁ…キアーロのとこまで運んでやる。おめぇ…可哀想にな…》
みんな可哀想とか憐れむ声をかけてくるんですけど…
体が小さくて目が悪いとどんな酷い目に合うって言うんだ!
俺の不安を感じ取ったゴブリン達は、洞窟内での移動同様、スライムの集落に着くまでの間、ゴブリンの事についていろいろと説明をしてくれた。
怖い顔して仲間思いの優しい奴らである。
彼らは、仲間を見捨てることはしない。
いじめをすることや意地悪なことをすることもない。
理由は、弱いモンスターだから。
聞いているとこの世界の事やゴブリンの立ち位置が少しわかってきた。
この世界に魔王らしい魔王はいないが、とんでもなく強いモンスターは複数存在する。
人間やエルフも何らかの方法でモンスターになって縄張りを持つ者もいるそうだ。
勇者の存在も気になって聞いてみたら…いるんですってよ!
それも人間やエルフだけでなく、色んな種族からも排出されていて、精霊や女神の加護を貰った者たちで馬鹿強いんだって。
誰が勇者で誰が勇者じゃないかってのは、一見して分からないから見たら即逃げろってさ。
弱いモンスターの目がとても良いのは、そのせいだと考えられているとの事。
なるほど…だから、目が悪いのは可哀想ってなったのか。
《俺達は、おめぇの親に沢山世話になってるから、どんなに足手纏いでも見放さねぇ。ひょろっこくて目が悪くても役割をちゃんと与えてもらえるだよ。》
先ほど、俺が見た小さいゴブリンは、伝達専用ゴブリンで役割をしっかり果たせなかったから叱られたそうだ。
役割さえこなせば、堂々と集落に居られる。
弱いから人数が多ければ多いほど強く見えるし、協力して支え合えるのだ。
《人間とかエルフとか攫って手籠めにするってのはしないのか?》
《……おめぇ、変わったゴブリンだとは思ってたが…とんでもねぇな。》
《え…だってゴブリンってモンスターだろ?》
《さっきの洞窟で気が付かなかっただか?メスが少なかったべよ。》
メスが少なかったって、体の大小はあってもメスとかオスとかわかんねぇよ。
俺の疑問を他所にゴブリンは話し続けた。
現在、ゴブリンは減少傾向にある。
原因は、人間筆頭にエルフやらドワーフやら獣人たちが強くなるために狩りをするようになったから。
手始めに倒すには丁度いい強さだったってのは分からなくもないが、それならスライムだっているだろって気もする。
何故、スライムではなく、繁殖が追いつかないほどゴブリンが倒されることになったかというと、種族以外のメスを襲うのは、むかし存在していた極一部の気性が荒くて攻撃力の高いゴブリン【モスゴブリン】だけだったのだが、ゴブリンの見分けがつくわけなく、緑色をしたゴブリンを手あたり次第倒し始めた。
歴史ありって感じだ。
メスが少なくなったのは、遺伝的なことなのかと考えながら黙って聞いていたら、とんでもない事を聞かされた。
《メスは…エルフの魔術師に攫われて、魔法で無理やり進化させられて性奴隷にされるだ。》
想像の斜め上!!
メスは進化するとグラマラスボディーの美女になるんだってさ!
俺も進化したら超イケメンマッチョになる可能性がある!
…うん、ちょっとテンパって現実逃避した。俺、反省!
俺の居た世界と違って、弱いものはとことん底辺の扱いになるんだな。
産まれて早々気が重くなっちゃったよ。
ゴブスラ異世界漫遊記 小さい飲兵衛 @kontou0410
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