不思議の国のノリス
ナレーション:
今週は、アクション・スーパースター列伝特集! 伝説の男、その若き日を描く!
ある日、ノリス少年が実家の庭で愛犬にプロテインを飲ませていると、人語を介するウサギが目の前を通った。首根っこを掴んで尋問すると、ウサギはワンダーランドへの入り口をあっさりと吐いた。
そして、ノリス少年はワンダーランドを支配する陰謀に巻き込まれていく! やつらに言葉遊びをする余裕はない! 殺れ、ノリス!
*
ウサギとともに穴に落ちたノリス少年は、広間に着いた。そこで小さな穴を見つけた。ウサギの話によると、この先でコーカス・レースというものが行われているらしい。レース……つまり、違法賭博だと? 許せたものではない。だが、穴は通り抜けられるようなサイズではなかった。
「ああ、ノリス。あそこに小瓶があるよ。あれで身体を小さくしよう」
「必要ない」
ノリスは扉を睨みつけた。すると、扉は脂汗を掻きはじめ、見る見るうちに大きくなり、筋骨隆々で胸毛の濃い少年が悠々と通れるようなサイズに変形した。そう、アメリカではノリスが扉を通るのではない。扉がノリスに通ってもらうのだ!
「ここはイギリスじゃないのかなあ」
「行くぞ」
*
コーカス・レースの主催者を貯水槽に沈めた後、ノリス少年とウサギは森に出た。そこには非常に尊大な態度を取る芋虫がおり、ノリスはハイキックでそいつに口の利き方をわからせてやった。するとそいつは、この先でお茶会が開かれているという。そこには気の狂った帽子屋や、一日中笑い続けている猫がいるそうだ。違法薬物の匂いを敏感に感じ取ったノリスは、急いでお茶会へと向かった。
お茶会にはたしかにマッド・ハッターとチェシャ猫がいた。ノリスはその場にあったパイプ椅子でマッド・ハッターを殴り飛ばし「コカインはどこに隠した?」と問い詰める。
「違うんだ、ぼくらはハートの女王に死刑宣告を食らって、それ以来ずっと時間が止まっているんだ。だからずっとお茶会を開いているんだよ」
「なに? おのれ、ハートの女王め。私刑とは許せん。こんな奇妙だが平和な国に恐ろしい暴力を持ち込むなど言語道断だ」
「どの口が……」
「行くぞ、ウサギ」
狼狽えるマッド・ハッターの様子が可笑しかったのか、チェシャ猫が「顔のない笑い」のまま、ずっと空中に笑顔だけを浮かべていた。それが気に入らなかったノリスは、笑いという概念をむんずと掴み、フードプロセッサーのごとく握り潰した。それ以来、不思議の国から笑いが消えた。
*
ついにハートの女王の面前まで来たノリスとウサギ。手足の生えたトランプの近衛兵を揃え、裁判を行っていた。どうやらジャックという人物が女王のタルトを盗んだらしい。しばらく見ていると、証人としてノリスが呼ばれた。
「お前、何か証言してみなさい」
「おい、おれはタルトが盗まれたかどうかなどどうでもいい。この国を仕切っているのはお前か? 違法レースに私刑の横行……とても許せたものではないぞ」
「まあ、なんて横暴な証人なの……そのピースマークは何?」
「お前たちを二秒で八つ裂きにするという意味だ」
「こいつをひっ捕らえなさい!」
(CM:お風呂用洗剤「すぐ落ち~るクン」、歯周病を防ぐ入れ歯「デンタロン」、五億人の美少女を育てるRPG「ガチャガチャガールズ」)
「こいつをひっ捕らえなさい!」
ノリスは持ってきていたM4とM79を構え、兵隊たちを蜂の巣にした。火薬を積んだ車が爆発したり、エキストラが大袈裟に倒れたり、舞い散る粉塵でノリスがちょっと目を細めていたりしていた。ジャックはいつの間にか流れ弾に当たっていた。
「観念しろ、女王」
「わかった。わかったから。もう悪いことはしない。しないよ」
「それでいいんだ」
ウサギやマッド・ハッターから「二度と来るな」という感謝の言葉を貰い、不思議の国を後にするノリス。彼は後に功夫マスターやテロリストと戦うことになるが、それはもっと大人になってからのお話……
*
次回予告:
今度は鏡の国へとやってきたノリス。何度も同じところへ戻そうとする道をストンピング一発で叩き直し、ハンプティ・ダンプティは原作通り勝手に落下し、ジャバウォックをコンバットナイフで倒した! 鏡の国に明日はあるのか? 戦え、ノリス!
♪~
(エンディングテーマ:イイ感じのボサノヴァ)
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