グロテスク
どんなにバラバラになっても再生できる身体をしていると、必然的に興味はそちらへ向かう。
これは他人もそうなのかなと疑問に思い、高校のときに両親をバラした。くっつかないものか、と弄んでいると隣近所に通報され、警察に捕まった。オヤジくらいの年のポリスメンとはまったく話が合わなかったので、眼の前で自分の首を捩じ切ってやった。そのままおれは病院に担ぎ込まれたわけだが、医者が匙を投げたあたりでおれは首を元に戻し、するすると逃げ出した。
とりあえず家に帰ろうかなと思ったが、駅で金髪の男が肩をぶつけてきたので、そいつの首も捩じ切ってみた。そこでおれははじめて気が付いた。そいつの首には指紋が付いていた。手を付けた位置からして、おれのものじゃない。急いで公衆トイレに駆け込んでみると、鏡に映ったおれの首にも指紋がくっきりついていた。
なんだこれ。
ホームセンターで包丁を買い、久々に激しく自分の身体をグチャグチャにしてみた。やはり、くっつけ直すたびに指紋は増えた。しかもほんのり脂っぽくなる。これは面白いぞ。
血だらけのトイレでニヤニヤしながら一人芝居を続けていると、また警察が来た。その頃には人体のあらゆるパーツを粉のレベルで分解できるようになっていたので、おれは四方八方から捕縛しようとする警察官を翻弄しまくった。
こっちだよぉ、と舌を出し、全身を結合させてみせた。すると、何故だか警察官たちの背が高くなっていた。ああ、そうか、身体を拾い切れていないんだ。ちょっと失敬、と適当な警察の懐に飛び込み、肉片をいただいた。脇腹をそっくり抉られた警察は、絶叫を上げてその場に倒れ込んだ。それがまたケッサクだった。
ついでに気付いたことだが、新しいパーツは脂が付いていない分、おれの身体よりさっぱりしていた。こりゃいい、べたべたが気持ち悪くなってきたら新品に取り換えよう。
それ以来、おれはタネも仕掛けもないびっくり人体解剖ショーを繰り返し、全国ニュースを騒がし続けた。レスラーだろうとギャングだろうとおれには敵わないし、刀もミサイルもへっちゃらだ。おれは無敵だ。無敵なんだ。さて、今日も大いに楽しんでやろうじゃないか。
*
「テーマはなんでもいいって言っても、そういうのは良くないのよ」
案の定、オカンが口出ししてきた。せっかく夏休みをかけた集大成を完成させようとしているのに。
「うっさいなー、それより追加で粘土買ってきてよ。足りねえや」
おれは振り返って次の一コマの撮影に入った。まあ、たしかに物語として筋はあったほうがいいかもしれない。そうだ、警察側にも同じ能力を持ったクレイ・マンがいて――
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