第14話 英雄王
昔々、魔法使いの国がありました。魔法使いの国の王様は悪い魔法使いでした。悪い魔法使いのもとには悪い魔法使いが集まってきます。
彼らは世界を自分のものにしようと、隣の国を奪い、またその隣の国を襲います。どんなに国を奪っても、世界には沢山の国があります。一つ一つ襲うには時間が掛かりすぎるのです。
そこで王様は魔法使いにとって怖くない竜を創ろうと、命令を出しました。竜は大きくて強い生き物です。魔法使いとは切っても離せない存在です。魔法使いになるために必要で、また、他の人と同じように怖いものでもありました。竜が街に現われればあっという間に街は瓦礫となってしまいます。
そんな竜が悪い魔法使いたちの命令を聞いたらどうなることでしょうか。
世界は竜の恐怖で、悪い魔法使いの思い通りになってしまいます。
魔法を使えない魔法使いの彼はこれが良くないことと知っていました。それは彼だけが精霊の言葉を聞けたからです。
竜の肉を喰らっても魔法を使えなかった彼は、『黒焔の獅子』という黒い焔を鬣に持つ獅子の精霊と仲がよかったのです。
竜を、自然の摂理から離れた生物を創ろうとすることは、いけないことだと彼がいくら話しても誰も聞いてくれません。出来損ないの魔法使いと虐められる彼の言葉を信じてくれる人はいなかったのです。
それでも彼はめげずに何度も根気よく話します。そのうちに彼に耳を傾ける者が現われました。
彼は信じてくれる仲間と一緒に魔法使いの国と戦います。
それはとても大変な戦いでした。魔法使いの国はとても強く、何度も彼らは負けても挑みます。絶対に諦めてはいけない戦いなのです。
幾度も戦ううちに、悪い魔法使いの命令を聞く『紛い物の竜』は完成してしまいました。
金色に輝く姿はまるで伝説に聞く聖竜のようです。
あまりにも美しい姿に、あまりにも巨大過ぎる力に仲間たちは戦意を奪われました。『金色に輝く紛い物の竜』は、魔法使いの国のいうことを聞きませんでした。命令を受け付けません。それどころか、他の竜を率いるように世界を蹂躙していきます。
いつしか、聖竜のようだといわれていた竜は邪竜のようだといわれるようになりました。
『黒焔の獅子』が懸念していたことです。
『金色に輝く紛い物の竜』を止めなくては、倒さなくては世界はどうなってしまうでしょうか。
彼らは『金色に輝く紛い物の竜』を倒す為に懸命に戦います。『黒焔の獅子』も力を惜しまず手助けしてくれました。
竜を、魔法使いを、精霊を、贄に創られた『金色に輝く紛い物の竜』を倒す事はどうしても出来ません。『金色に輝く紛い物の竜』を守るように圧倒的な力を持つ竜が立ちふさがるのです。
『黒焔の獅子』は意を決したように一つの提案をします。
『金色に輝く紛い物の竜』の封印です。
彼が魔法を使えない理由は、『黒焔の獅子』のせいです。
本当の彼はもの凄く魔力が強いのですが『黒焔の獅子』と仲良くしているために、精霊である『黒焔の獅子』が彼の前に姿を現すために、彼の魔力を使っているから魔法が使えないのです。
その魔力と『黒焔の獅子』の力で『金色に輝く紛い物の竜』を封印しようというのです。
ずっと『黒焔の獅子』が彼にその提案を出来なかったのは、封印に力を使えば彼ともう話をすることが出来なくなったしまうからです。
彼も大好きな『黒焔の獅子』と離れたくありません。
だけど、『金色に輝く紛い物の竜』もこのままには出来ません。彼らは『金色に輝く紛い物の竜』を封印するために気持ちを押し殺します。仲間の手を借り、邪竜を追いつめ、彼と『黒焔の獅子』は『金色に輝く紛い物の竜』を封印しまた。
『金色に輝く紛い物の竜』の封印された場所は彼と『黒焔の獅子』しか知りません。また悪い人が現われて『金色に輝く紛い物の竜』を悪用されないように彼は誰にも教えませんでした。
『金色に輝く紛い物の竜』の輝く美しい姿に聖竜だと勘違いした人たちは竜を神様だと崇めていました。
もう二度と、魔法使いたちが悪さをしないように、竜を神様と崇める人たちが竜の肉を喰らうことを禁じました。でも、魔法使いがいなくては竜から人を守ることも出来ません。
神様である竜を喰らう魔法使いは、悪い人。
神様である竜を倒す魔法使いは、悪い人。
魔法使いが生かされているのは邪竜となった神様を鎮めるためです。
悪い魔法使いの国は世界中から非難を浴びます。今までやってきたことを思えば仕方がありません。そこで悪い魔法使いの国は、世界を救った英雄の彼を王様として新しい国となりました。
竜の肉を喰らう禁忌を犯した罪人はその命を賭して竜を鎮めよ ゆきんこ @alexandrite0103
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