~小さな来訪者~ 4

 一ノ瀬峻は焦っていた。人生というものは想定外の事ばかりが起こる。この場に来て、肝心なものを持っていないことに気付いたのだ。今から家に帰り、確認する暇はない。もしかしたら、ここに来る途中で落とした可能性もある。そして、あれが無ければ今日、ここで実行することの成功率は限りなく0%に近くなる。

 「どうしたらいい」。待ち合わせの時間より、早めに来たのが功を奏した。しばらくは探す時間がある。

 もし、見つからなければ、しょうがない。諦めるしかない。峻はそう思いながら自分が来た道を引き返しつつ、その「あるもの」を探し始めた。

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