甘いだけではない、リアルな深みのある恋の物語です。
可愛らしく活発な春子と、穏やかで優しい夏男。幼馴染としてひたすら仲良く過ごした、幼い子供時代。
そんな時代もいつしか過ぎ、身体も心の中もどんどんと変わっていく二人。形を変える幼馴染との関わりを想う夏男の繊細な心の動きが、丁寧に描かれていきます。
そして、やがて迎える大きな分岐点で、二人の選んだリアルな選択。それはきっと、自分自身をしっかりと見つめ、お互いを深く想い合った結果なのだと感じさせられます。
それぞれの心の輪郭をしっかりとなぞったラスト。ただ物寂しい恋物語ではない、幸せと切なさがないまぜになったその心理描写は見事です。
さりげなく爽やかなようでいながら、いつまでも余韻が残る。とても素敵な物語です。