無限増築城塞都市のゴーレムデモリション
ゴッドさん
プリンを食べたい女の子
広い草原を縦断するように切り開かれた街道に、一台の馬車が進んでいた。痩せ気味の馬によって引かれている荷台は、土の凹凸や小石によってガタガタと揺れる。
そこに積まれている木箱の上に座る少女がいた。編み込まれた銀髪に、首元には黒色のチョーカー。白いワンピースに身を包む彼女は、ぼんやりと周囲の景色を見つめる。
「ここにも、こんなに大きい都市が広がっているんだ……」
少女の視線の先には、草原の向こうに広がる山脈のように巨大な影。レンガの高い壁によって囲まれた街である。どの国にも負けないほど大きな城を構え、青い空の下で静かに佇んでいる。
何もない無味乾燥とした風景の草原とは対照的に、とても美しい外観の町だった。外観は美しいのに……。
やがて、その都市は草原の小高い丘によって隠され、少女からは見えなくなる。
さらにしばらく経つと、馬車は小麦畑に囲まれた小さな農村へ到着した。少女は軽やかに馬車を降りると、ここまで馬を歩かせてくれた男へ歩み寄る。
「おじさん、ここまで乗せてくれてありがとう」
「いや、いいんだよ。一人で荷物を運ぶのは退屈なだけだからね。話し相手がいてくれて嬉しかったさ」
正直、少女はあまり会話が得意ではなかった。それでも馬主は何でも笑顔で好意的に受け止めてくれるのだから、この馬車は乗り心地が良かったと思う。
次に乗る馬車も、こんな馬主が運転してくれればいいのに。
そんなことを考えながら少女は軽く作り笑いをして、男に向けて胸元で手を振った。
「それにしても、お嬢ちゃんはこの村に何の用だい?」
「ただの観光です。色々な街を見て回るのが好きなんです」
「そういや、お嬢ちゃんの名前は何だっけ?」
「メル・アイヴィーです」
* * *
どこかに食堂はないだろうか。
それからメルは飲食店や宿屋を見つけるため、しばらく農村を散歩する。長時間、何も食べずに馬車に揺られていたため、彼女は空腹を感じていた。特産品による料理の違いを楽しむのも、旅の醍醐味の一つである。
そうして見つけたのが、一軒の喫茶店らしき建物。扉を開けると、そこにはエプロンを着用した女性がカウンターで頬杖をついていた。彼女がここの店主だろうか。
「いらっしゃい。アンタ、旅人かい?」
「はい……」
「こんな辺境に一人旅なんて、お嬢ちゃんも物好きだね」
「よく言われます」
店内にはメルと店主らしき女性以外は誰もいない。随分と活気のない村だ。今の季節、あらゆる農村では収穫祭が行われているというのに。農作業をする人間もほとんどいない。
やはり、活気のない原因は、来る途中に見た巨大な城塞都市だろうか。
メルはカウンター席に腰掛け、ボロボロの品書き帳を開く。そこにはメルの好物である『プリン』という表記もあった。
「あの……この店はプリンを扱ってるんですか?」
「ああ、悪いね。残念だけど、今は扱ってないよ。王国からの流通が滞って、砂糖が手に入らないんだ。この辺じゃそんな洒落た料理を作れるほど、もう余裕がなくなってきてる。アンタもここに来る道で、あのでっかい都市を見ただろ?」
「はい……」
「あそこのゴーレムどもが、流通に使ってた街道を潰しやがったんだよ」
「やっぱり、ここもそうなんですね……」
「ったく、ゴーレムどもは何のために無人の街を造り続けているんだかね。どうせアタシたちをあの街に住ませちゃくれないのにさ」
草原の向こうに広がっていた都市。
あそこには誰も住んでいない。それでも廃墟とならず綺麗な外観を保っているのは、そこに潜む大量のゴーレムが施設を整備しているからだ。
そして、ゴーレムたちは無限に都市を増築し続けている。さらに事態を悪化させている理由が、そこに誰も入るのを許さないことだ。近づく者がいれば、ゴーレムたちはそれを排除する。こうした悲劇がメルが生まれる前から何度も繰り返され、緩やかだが確実に人間たちは徐々に活動範囲を狭めていた。
「この村も、もうすぐお仕舞いさ。みんな、ここを離れる準備をしてる。この店に来るお客さんも、きっとアンタが最後の一人だよ」
「えっ……この村を捨てるのですか?」
「そうさ」
女性は短く溜息を吐き、窓に視線を向けた。作物が放置された畑、その遥か遠くにある何かを見つめているようだった。
どう抗おうとも塗り変えられない現実に、世界中の人々は絶望を感じている。これが現実だ。
「東にある王国が兵士になりそうな男を沢山集めてるんだよ。あっちでもゴーレムが都市増築を始めたらしくてね、それを食い止めるため必死になっているのさ」
「この村、活気もないし、女性と子どもばかりだと思ったら、そういうことだったんですね」
「そうさ。こっちでもゴーレムが都市増築を始めているのに、男どもを引き抜かれて何も手を打つことができない。そのうちゴーレムどもはここにもやってくる。アタシたちはこの村を捨てるしかないんだよ」
店の雰囲気が悪くなってきた。メルの目当てだったスイーツもここにはない。自分は早いところ店から出るべきだろう。適当に料理を注文し、「ありがとう」と呟きながら代金をカウンターに置いてメルは店を出た。まだまだメルは食べ足りなかったが、雰囲気の悪い場所でいつまでも飲み食いできるほど無神経ではない。
「ねぇ、お姉ちゃん?」
メルの足元に小さな女の子が立ち、自分の顔を見上げていた。目がクリクリとした黒髪の可愛らしい幼児である。この村に住んでいる子どもだろうか。この辺にやってくる旅人が珍しいのか、彼女は爛々とした眼差しでメルの全身をあちこち見つめていた。
メルはその場に屈み、その子どもと視界の高さを合わせる。
「どうしたの?」
「さっき、ママとお店の中でお菓子の話をしてなかった?」
この娘は、店主の子どもらしい。
「えっ、ああ、プリンのことね」
「お姉ちゃん、プリンを探してるの?」
「そうね。久し振りに食べたいなぁ、って思ったから」
「私、何度か食べたことあるよ! でも、もう最近は食べられなくなっちゃったけど……」
現在、村の近くにはプリンの材料を調達できる環境がない。家畜を育てられるような肥沃な土地は、ゴーレムたちによって無人都市の防衛領域内に収められてしまった。村の生活は狭い土地で自分たちの食べる穀物を作るだけで精一杯だ。かつて王国と村を結んでいた流通ルートもゴーレムたちの支配下に置かれており、村を訪れていた商人も来なくなってしまったらしい。
「そのプリン……また食べてみたいと思う?」
「うん! すっごく美味しかったもん! いつか、またお母さんに作ってもらうんだ!」
「そっか」
幼女は無邪気に目を輝かせ、微笑んだ。
「私ね、本当はプリンを探しに来たことだけが目的じゃないんだ」
「じゃあ何しに来たの?」
「ゴーレムに困っている人間を救いに来たの。上手くいけば、またプリンを沢山食べられるわ」
「お姉ちゃん、もしかしてゴーレムを倒せるの?」
「うーん、まぁ、そんな感じかな?」
メルは小さく頷いて見せた。
「あの城塞都市は、長期間に及ぶような侵攻を受けても住人を守れるよう設計されてる。兵糧攻め対策として、食料を生産して備蓄する施設が必ずどこかにあるの。プリンの材料も、あそこには沢山あるはずよ」
「お姉ちゃんの言ってることは難しくてよく分からないけど、とりあえずあの街を取ることができれば、私たちはおなかいっぱいにプリンを食べられるかもしれないってこと?」
「そういうこと」
「でも、どうやって街を奪うの? あの街に近づけば、太陽砲で丸焦げになっちゃうよ?」
村人たちが最も恐れているのは、城塞都市に配備されている『太陽砲』と呼ばれる兵器だ。センサーが常に周辺を監視しており、敵の接近を感知すると自動で起動する。光魔法によって太陽光を収束し、遠距離からの砲撃によって接近する敵を焼き尽くす。
「大丈夫よ。私に任せて」
「うーん……本当に大丈夫かなぁ?」
「こう見えても、ああいう城塞都市には詳しいの」
「そうかなぁ?」
幼女は不安だった。一見、メルはどこにでもいる普通の少女にしか見えない。彼女だけでどうにかできるとは到底思えなかったからだ。
「本当に詳しいなら、ゴーレムについて色々教えて!」
「いいわよ?」
「じゃあ、どうしてゴーレムは誰も住まない街を造り続けているの?」
「あの城塞都市を建設しているゴーレムはね、頭の中で戦争をしているつもりなのよ」
「戦争? 戦う相手もいないのに?」
「うん。もう何百年も前に終わった戦争を、彼らは今も続けている。もう死んでしまった主のために、都市をいくつも築いて、亡国の領土を拡大させて、近づく敵を排除する。その命令をずっと実行し続けているだけ。守るべき住人がいなくなった今でも、ね」
「そんなの、何か可哀想だね」
「そうね」
* * *
メルは日が昇る前に宿屋を出た。外気が肌寒い時間帯だが、この村に迫っている城塞都市へ入るには今のタイミングしかない。
「あれが城塞都市ね」
星空の仄かな光が草原を青白く照らしていた。その向こうに、山脈のように巨大な陰が見える。最近増築された城塞都市の末端らしい。広大な城塞都市だが、あれは氷山の一角に過ぎず、本当のところどれだけ増築が広がっているのかは誰にも分からないという。
「そろそろ、時間か」
メルは夜空を見上げ、正座の位置を確認する。日の出まで、もう少しだろう。
そして、彼女は草原を走り出す。踏み出した先は、すでに太陽砲の射程圏内だった。
城塞都市に近づくために突破しなければいけない最大の難関は、都市を囲む壁の頂上に設置された何門もの太陽砲だ。光魔術によって太陽光を凝縮し、熱線として放つ。その射程は長く、遠く離れた敵も熱線に触れた瞬間に灰と化す。
しかし、弱点もある。夜間は太陽光を集められず、星明りを代用しなければならない。その場合は光を装填する速度が落ち、威力も格段に下がる。
都市へ近づくメルを感知した太陽砲は一斉に起動し、砲口を彼女に向けた。皿のようなパーツを空へ展開させ、急速に星の光を集束していく。
メルは光の装填を遠くに確認すると、走りながら瞬時に横へ飛んだ。その瞬間、白い光が草原を貫き、先程まで彼女がいた場所に生えていた草木を灰へと変える。
「もう少しで門ね」
同じ要領で次々と太陽砲をかわしていくメル。
やがて時間の経過とともに日が昇り、メルの視界も鮮明になってくる。門の近くまで来てしまえば、自身の攻撃で施設を破壊する恐れがあるため太陽砲は使えない。砲の沈黙を確認すると、彼女は走る速度を緩めた。
「クオオオオオン……!」
そのとき、門周辺の地中から不気味な声が鳴り響いた。
都市に近づくメルを感知したゴーレムたちは、一斉に防御体制へと移行する。
轟音とともに吹き上がる砂煙。地中に潜伏していた巨大ゴーレム、
「クオオオオオン……!」
メルは身軽さを武器に、守護壁躯の振り下ろされた腕を駆け上がった。さらに肩まで辿り着くと、そこから城砦を囲む壁の上へ飛び移る。
ゴーレムに勝負を挑むなんて無意味だ。彼らは無生物で、全身が砂でできている。痛みを感じないし、傷を作ってもすぐに修復される。
ゴーレムと出会ったときの最善策は、隙を突いて離れることだ。メルはそのことをよく理解している。戦わずに都市へ潜ることが、彼女のやり方だった。
「相変わらず、どの都市も広いわね」
高い壁からは都市の景色を一望できる。白色と橙色を基調としたレンガ造りの建造物群。統一感のある街並みが美しい。その景色の奥には聳え立つ大きな城も見える。
メルは壁の上を走って適当な下り階段を見つけると、そこから商店街へと降り立った。
「こっからが本番ね」
都市の中に進入できたとしても油断はできない。
城塞都市の中は、侵入者が中央まで辿り着けぬよう複雑な構造をしている。建造物や壁が入り組み、まるで迷路のようだ。仮に大規模な軍隊が侵攻した場合、いくつもの分かれ道で戦力を割かせる狙いもある。もしも間違った道を選んだならば、その奥は行き止まりになっており、ゴーレムたちに囲まれて殺される未来が待ち受けていることだろう。
「確か、こっち」
メルは高所から見た景色を一瞬のうちに記憶していた。どのルートが罠で、どのルートが正解か。メルは自分の記憶を頼りに、無人の街を走っていった。建築が終わったばかりの都市は、どの建造物も新品でほとんど汚れていない。本来なら多くの人で賑わっているはずの商業地区に、冷たい風が吹き抜けていく。
やがて、都市の中枢区画から大量の砂埃を上げながら、何体もの騎兵型ゴーレムが現れる。人間の腕力では扱えぬような巨大な槍を突き出しながら、メルをめがけて走ってきた。そのゴーレム群は街路を埋め尽くし、都市への侵入者を排除しようとする。
「まったく、数が多いんだから……」
メルは槍の一撃を屈んで回避すると、ゴーレムの股下を潜り抜けて走り続ける。
ゴーレムにはパワーがあってもスピードはない。動きの軌道を読むことさえできれば、反射的に避けることは可能だ。
彼女はゴーレム騎士団を抜くと、そのまま都市中央の城へ駆けていった。薔薇や彫刻の飾られた庭園を抜け、さらに城の内部へ入り込む。
「ゴーレムを管理しているのは、ここね」
本来、都市の主や多くの兵士が住むはずの城。そこに人間の姿はない。殺人マシンと化した動く甲冑が、廊下や階段に並んでいるだけ。メルの姿を捉えた彼らは一斉に通路を塞ぎ始める。
「そこを……退きなさい!」
敢えて隙を見せて攻撃を誘い、相手が空振りしたところをすり抜ける。これの繰り返しだ。
豪華なシャンデリア。細かい装飾のステンドガラス。壁に多く掛けられている赤いタペストリに描かれている金色の模様は、かつて栄えていた亡国を手中に収めていた王家の家紋らしい。城に飾られている品々は、その亡国が誇っていた技術力の高さを思わせる。
「やっと、制御室か……」
ついに辿り着いた都市の中央。黒く光沢を放つ壁に覆われた、金庫内部のような広間だ。そこに置いてあるのは、ゴーレムたちを管理する制御装置。宙に浮かぶ黒い球体に、白線で幾何学模様が刻まれている。メルはその球体に手をかざし、そこから聞こえてくる音声に耳を澄ませた。
「メル・アルヴィー……認証して」
『システムへ介入するためには、クレストキーが必要です。クレストキーはお持ちですか?』
黒い球体が喋る。その瞬間、球体の表面が小さく凹み、とある紋章の形を成した。
メルはすでに球体の扱い方を知っている。その形と同一の鍵となる物体を差し込めば、システムの権限を掌握できるのだ。
「鍵なら、持ってる」
メルはチョーカーに付けられている金属片を取り外すと、それを球体の窪みへ嵌め込んだ。ピッタリと形が一致し、その窪みから部屋全体に白い光が走る。
『メル・アルヴィー様。認証しました。ご命令をお願いします』
「ここのシステムが管轄している戦闘用ゴーレムと太陽砲を全部停止させて」
『かしこまりました』
ここのシステムで管理されているのは、この周辺のゴーレムだけ。都市が広大すぎるため、一つのシステムでは管理し切れないのだ。
それでも、この地区で増築が再開されることはないだろう。
* * *
メルは都市管理システムへの介入を終えると、城をゆっくりと出ていった。先程までゴーレムたちの襲撃で慌ただしかった街が、今は嘘のように静かだ。メルの命令によって停止させられたゴーレムたちが、古代美術のオブジェのようにあちこち佇んでいる。
「♪~」
メルは小さく口を開き、歌を口ずさむ。彼女の家に代々伝わる歌。彼女の母から教えられたものだ。
その歌が含まれた風を受けたゴーレムたちは、始めはサラサラと、徐々にボロボロと身体が崩れていった。彼らの全身を構成する砂が魔力による繋ぎを失い、元々の砂に戻っているのだ。
メルが口に出したのは、ゴーレムの鎮魂歌とも言われている呪文。
「もう、休んでいいからね」
やがてゴーレムだった砂は、風に吹かれて空へ舞い上がる。
製造されてから何十年も経過したゴーレムは、メルの唱えた呪い歌によってとうとう都市を守る役目を終えた。こうして、一つの都市からゴーレムたちが消え去ったのだ。
メルはしばらくの間、風に消えていく砂を見上げていた。
* * *
「すごい……本当に壁の内側に入っちゃった!」
「綺麗な街でしょ?」
都市の食料生産区画から砂糖や家畜の乳を発見し、メルはそれを持ち出した。村で出会った子どもを都市の中へ招待し、大きな食堂の厨房で料理の腕前を披露する。
「お姉ちゃん、プリン作りすぎじゃない?」
「そうかしら? これくらい食べないと力が出ない気がするけど……」
そうして机の上に置かれたのは、超巨大プリン。鶏の丸焼きのようなサイズで、自重に潰されかけており、大皿をはみ出しそうになっている。
いくら大好物とはいえ、メルは本気でこれを食べ切るつもりなのだろうか。幼女は訝しげにメルの顔を覗き込んだが、彼女の瞳に曇りはなかった。ああ、やっぱり本気なのだ、と。
最後にプリンを食べたのは随分と昔だった。どんな味だったのか、二人とも忘れかけている。そのブルルと揺れるプリンの誘惑に、彼らは固唾を呑んだ。恐る恐るスプーンでプリンを掬い上げると、同時に口へプリンを運ぶ。
「美味しい?」
「うん、美味しいよ!」
滑らかな舌触りに、卵の濃厚な味がする。カラメルソースの香ばしい匂いが鼻を抜けていった。これは、なかなか上出来ではないだろうか。二人は互いに満足げな顔を見合わせる。
「こんなに美味しいものが食べられる街なのに、誰も住まないなんて勿体ないよ」
「うん……私もそう思う」
そのとき、幼女は気付いた。メルの首元でゆらゆら揺れる金属に。
「ねえ、お姉ちゃん?」
「どうしたの?」
「そのチョーカーに付いている飾り、綺麗だね」
「ああ……これね」
メルはチョーカーから装飾を取り外し、手の平に乗せて見つめた。眩いほどの光沢を持つ銀色の紋章。何十年も前から家で受け継がれているはずなのに、全く錆びていない。その紋章は、都市のあちこちに飾られている王家の家紋によく似ていた。
「私ね、これが何なのかよく分からないんだ」
「分からないのに持ってるの?」
「一応、お母さんの形見だからね。大切なものなのよ」
メルはその紋章を軽く握り、幼女へ微笑んだ。
「でもね、思うんだ。これを持っている限り、私は――」
その後、メルが何を言ったのか。幼女の記憶は曖昧だった。けれど、彼女はすごく悲しいことを呟いたような気がする。
プリンを食べ終わって昼寝していた間に、メルの姿は消えていた。
今もメルはどこかでゴーレムの解体を続けていることだろう。
未だ無人の城塞都市は増え続けている。
無限増築城塞都市のゴーレムデモリション ゴッドさん @shiratamaisgod
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