作品を読んで思ったことは、レビューのタイトルにすべて書きました。
「異世界拉致」と題された最初のエピソードに始まり、主人公の猿渡くんはルミエーラ王国の王女、パルナタード・ランス・ルミエーラによって、異世界エスメラルディナに幾度となく呼び出されます。しかしその「幾度となく」のタイミングが、高速道路の路上教習の最中だったり内定式のスピーチの檀上だったり、呼び出されたら死人が出たり、猿渡くんが困りすぎるタイミングでばっちり呼び出すのでさあ大変。
例によって魔王を倒せと命じられるわけですが、そう簡単に事が運ぶはずもなく、気づけば年単位で異世界に強制滞留。まるで映画『ターミナル』のごとき理不尽さ。
必然的に主人公は高校を留年し、大学を留年し、人生の軌道修正という“もうひとつの冒険”に奔走される始末。
繰り返しになりますが、読んでいて「ほんと異世界行きたくねえな」「絶対に呼んでほしくねえな」と心から思ってしまいました。たしかにやってることは拉致だしなあ……。
とまあそんな感じで、前半は猿渡くんの常規を逸した苦労がこれでもかと活写されますが、後半にいたるとまさかの伏線が発動、そもそもなんで異世界に呼ばれまくっていたのか?という物語の核心へと一気に突き進みます。
若干ネタバレですが、巨大ロボットも出てきます。なんで出てくるのかというとちゃんと必然性があるので、これも読んでいただければ……
作者の方の豪快な力技を存分に楽しめる、アンチ異世界ファンタジーです。