03

万里まり!!こっちこっち!!」


「がっ!!ちくしょー!!たまき!!」


沙耶さや!!パスパス!!」


「あっ!!坊ちゃん!!」


「イエーイ。五本目ー」



 …楽しそうじゃないのよ…陸。

 あたしは部屋の窓によっかかって、庭で繰り広げられてるバスケをながめる。

 庭でバスケをしてる面々は。


 高津万里たかつまり23歳。

 加納 環かのう たまき22歳。

 東 沙耶ひがし さや22歳。


 すっかりうちとけてる陸の話によると。

 あたし達に声を掛けたのが…山崎浩也さん、29歳。

 あたしと陸をこっちに連れて来たのは、この人だと言っても過言じゃない。

 …ボーリングしてただけなのに…

 一緒に来てもらえますか?って、一応ではあったけど…

 嫌って言わせない雰囲気だった。

 別に凄まれたわけでも、怖い顔されたわけでもないんだけど。

 むしろ、どちらかと言うと…優しい目をしてた気がするんだけど。


 …なんて言うか…

 とにかく…Noとは言わせないって雰囲気だった。


 そして、その浩也さんと一緒にいたのが…環と沙耶君。

 あたしに部屋案内してくれたのは、万里君。


 …みんな若い。

 そして、そこそこにカッコいい。

 なんでヤクザかな。

 もっと、違うことに情熱をぶつけ…



「お嬢さんもご一緒しませんか!?」


 ふと、目が合った万里君が言ったけど。


「結構です」


 あたしは無愛想に部屋に引っ込む。


 …今のは、可愛くなかったかな…

 ま、いいけど。


 結構です。とは言ったものの…

 あんまり陸が楽しそうだから、あたしは位置を変えて庭でのバスケを眺める。


 …今まで…こんな気持ちになった事なかった。

 あたしはずっと陸と二人きりで、お互いなんでも解かり合えてて。

 だから…陸が母さん会いたいって言った事…ちょっとショックだった。


 陸はポーンと新しい環境の中に放り込まれても、すぐに順応出来る。

 今までだって、クラス替えをしても、あっと言う間に人気者。

 いつだって周りに人が集まる。

 陸は、陽だまりみたいな存在。

 みんな、陸のそばに行きたくなる。


 そんな陸と双子なのに…あたしは陸みたいにはなれない。

 もしかしたら存在する、『両親に会いたい気持ち』も…

 負けた気がして出したくない。


 だって、あたし達は…

 二人でも上手くやって来たのよ。


 ずっと、居ない。としてやって来たのに。

 突然、居る。って言われて、やったー。って…思えなくて当然でしょ?



「また坊ちゃんに取られた…」


「沙耶、ガードあめーよ」



 …あきらかに…手を抜いてる…って分かるのは、万里君と環。

 沙耶君だけは本気勝負みたいだけど。


 子供相手に本気になんかなれないわけ?

 何となく、万里君と環に目を細めた。



「あーあ…」


 だんだん自分が嫌いになりそう。

 あたしはここに来て、外に出なくなった。

 違う環境に馴染むのが、怖い気がした。


 …今までの生活を否定してしまう気がした。

 毎日が穏やかで、陸と二人、何の支障もなかったのに…



「…舞に手紙書こ…」


 元気のない独り言を言いながら。

 いつの間にか勝手に持って来られてた荷物の中から、レターセットを探し始めた。


 あたしの友達は舞だけだったのに…

 その舞とも引き離されてしまった。

 …あたしは、一人ぼっちだ…。

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