03
「
「がっ!!ちくしょー!!
「
「あっ!!坊ちゃん!!」
「イエーイ。五本目ー」
…楽しそうじゃないのよ…陸。
あたしは部屋の窓によっかかって、庭で繰り広げられてるバスケをながめる。
庭でバスケをしてる面々は。
すっかりうちとけてる陸の話によると。
あたし達に声を掛けたのが…山崎浩也さん、29歳。
あたしと陸をこっちに連れて来たのは、この人だと言っても過言じゃない。
…ボーリングしてただけなのに…
一緒に来てもらえますか?って、一応お伺いではあったけど…
嫌って言わせない雰囲気だった。
別に凄まれたわけでも、怖い顔されたわけでもないんだけど。
むしろ、どちらかと言うと…優しい目をしてた気がするんだけど。
…なんて言うか…
とにかく…Noとは言わせないって雰囲気だった。
そして、その浩也さんと一緒にいたのが…環と沙耶君。
あたしに部屋案内してくれたのは、万里君。
…みんな若い。
そして、そこそこにカッコいい。
なんでヤクザかな。
もっと、違うことに情熱をぶつけ…
「お嬢さんもご一緒しませんか!?」
ふと、目が合った万里君が言ったけど。
「結構です」
あたしは無愛想に部屋に引っ込む。
…今のは、可愛くなかったかな…
ま、いいけど。
結構です。とは言ったものの…
あんまり陸が楽しそうだから、あたしは位置を変えて庭でのバスケを眺める。
…今まで…こんな気持ちになった事なかった。
あたしはずっと陸と二人きりで、お互いなんでも解かり合えてて。
だから…陸が母さん会いたいって言った事…ちょっとショックだった。
陸はポーンと新しい環境の中に放り込まれても、すぐに順応出来る。
今までだって、クラス替えをしても、あっと言う間に人気者。
いつだって周りに人が集まる。
陸は、陽だまりみたいな存在。
みんな、陸のそばに行きたくなる。
そんな陸と双子なのに…あたしは陸みたいにはなれない。
もしかしたら存在する、『両親に会いたい気持ち』も…
負けた気がして出したくない。
だって、あたし達は…
二人でも上手くやって来たのよ。
ずっと、居ない。としてやって来たのに。
突然、居る。って言われて、やったー。って…思えなくて当然でしょ?
「また坊ちゃんに取られた…」
「沙耶、ガードあめーよ」
…あきらかに…手を抜いてる…って分かるのは、万里君と環。
沙耶君だけは本気勝負みたいだけど。
子供相手に本気になんかなれないわけ?
何となく、万里君と環に目を細めた。
「あーあ…」
だんだん自分が嫌いになりそう。
あたしはここに来て、外に出なくなった。
違う環境に馴染むのが、怖い気がした。
…今までの生活を否定してしまう気がした。
毎日が穏やかで、陸と二人、何の支障もなかったのに…
「…舞に手紙書こ…」
元気のない独り言を言いながら。
いつの間にか勝手に持って来られてた荷物の中から、レターセットを探し始めた。
あたしの友達は舞だけだったのに…
その舞とも引き離されてしまった。
…あたしは、一人ぼっちだ…。
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