第9話 ただ本気を出す時
巨体から放たれる拳に自身の拳を当て、真正面から受け止めた。
しかし、流石の威力に足元が凹む。
力比べという訳では無いが拳をぶつけながらでは進展もしない。
思った瞬間だろうか、少し腕を引かれる。
普通なら態勢を崩して前に倒れそうになるが、逆に前に飛び掛かり、オルキスへ回し蹴りを放つ。
だが、3m程の巨体で回し蹴りを軽々と避ける。
オルキスは手刀を放ち、俺は空中で体を捻らせて大剣で弾く。
その後着地をして再びオルキスへ突っ込む。
大剣を構えて、横薙ぎに放つ。
後方へ飛び、避けてから拳を振り下ろされる。
それを左拳を振り上げて受け止めてから弾き、
「ウオォオオオオオオオオオオオッ!!!!」
「フッ!!!!」
互いに拳を交える。だが、直接的なダメージは無く、オルキスの猛攻に対して俺は、大剣とガントレットを打つ付けて相殺する。
回し蹴りを放ち、拳を弾いてから突っ込むが、拳を振り下ろされるが、大剣で弾き一気に距離を詰める。
完全に獲った。そう思った瞬間だろうか、胸部が開いてオルキス本体が現れ、俺の腕を取って投げられた。
地面に叩きつけられ、息が少し出来なくなるが、歯を食いしばり立ち上がる。
立ち上がった瞬間、目の前に筒状の何かが空中にあり、そいつに視線を取られた。
次の瞬間、
「――ッ!?!?」
激しい光と爆発音に襲われ、目も見れず耳も聞こえずに思わず、動けなくなる。
直ぐに動こうとしたが、脳が追い付かず動けないでいると、殺気を感じ大剣を向けた。
やっと耳と目が回復し、徐々に光が目に宿っていく。
そのタイミング体を掴まれる。
「捕まえたぞ」
「――グッ!!」
「神武使い、レイス・オブ・ハーデス」
「はな、せッ!」
「何故、お前が神武を持っている? それも神武スサノオ、をだ」
「うるせぇッ!! 離しやがれッ!!」
「……あくまで話さないと言う事か」
握る力が強くなっていく、
「グッ! アァアアアアアッ!!!!」
俺は力を入れ、潰されぬ様にする。
「知っているぞ、お前達は自身の体が侵食されている事も。だから……! 今楽にしてやるッ!!」
更に強く握り、オルキスは自身を回転させ、勢いよく投げられる。
体が回転し、上下が分からなくなり、身動きが出来ない。
クソッ!! どこに投げやがった!!
「祈りは済んだか?」
どこからともなく奴の声が聞こえる中、回転する視界に映ったのはオルキスの姿。
しかし、自身が勢いよく回転している為、一瞬でしか姿は見えなかったが、体を掴まれた。
そしてそのまま落下している事が分かり、どうにか抜け出そうと力を入れる。
「こんな……所で死ねるかぁあああああああああああああああああああああ!!!!」
「安心しろ、一瞬だ。痛みは無い」
だが、抵抗は虚しくも意味をなさず、落下していく感覚だけが強まる。
「クッソォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
―――――――――――――――
「クッソォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
レイスが手の中で叫んでいる。地上まで数秒で到達する。
そして重力、体重、自身の力でレイスを地面に叩きつけた。
地面が大きくめり込み、手の間から血が飛び散り顔にかかる。
ヌメッとした感触に何かが引っかかる感触が同時に感じる。
手を上げ、原型を留めていないそれを見る。
「痛みは無かったはずだ。このまま、神武に縛られたまま生きるよりマシだろう」
楽に死なせたレイスに言いながら、左腕のガントレットに手を伸ばす。
だが、突然衝撃波に襲われ、その衝撃波に耐えきれず後方へ飛ばされる。
この現象……まさか!? と思い、顔を上げた。
―――――――――――――――
体の感触は無く、多分神武――スサノオと俺の意識の間の空間だろう。
『死んだな』
『すまない……』
どこからともなくスサノオの声だけが聞こえる中、死んでしまった俺は謝る。
『まぁ、相手が強敵だった。それだけだ』
『……俺がまだ、弱いって事だ』
『それはあるだろう。だが、お前は3年前よりも格段に強くなっている』
『スサノオの御陰だ』
『違う、お前が本当に強くなったんだ』
突如目の前が光に包まれ、真っ白な空間へ変わる。
辺りを見回すと、1つの光がある。
『だから、お前はこれを使える様になったんだろ?』
『……あまり使いたくは、無かったんだけどな』
『俺も進めたくは無い。だが、侵食は可能な限り抑える……その代わり」
光が徐々に輝きを増していく。
『あのデカブツをぶっ飛ばせ』
『乱暴な神様だ……けど、まぁ……!』
腕の感覚が甦り、眩い光に手を伸ばす。
『やってやるさ……ッ!』
『ああ……それでこそ、俺の親友だ』
―――――――――――――――
意識が戻り、俺は自身の体がどうなっていたか想像もつかないが、気配のする方へ振り返る。
そこにはオルキスが驚愕しながら立ち尽くしていた。
「その再生能力にその姿……まさか!?」
『本番だ』
大剣から長刀へ変わった武器をオルキスへ向ける。
「神武使いの最強の技、
『物知りだな』
「分かっているのか! それは契約している神の力を直接使えるが、代償に自身の体が神の侵食によって死へと近づくのだぞ!!」
『知っている』
「なら、何故!!」
『言ったはずだ。俺は死ぬわけにも、捕まる訳にもいかねぇんだ……アイツを殺すまでな』
長刀を構えると、自身の体から力が湧いてくる感覚が分かる。
強く踏み込み、一瞬でオルキスの懐に入り込む。
「なッ!?」
『ハッ!!』
長刀を切り上げ、片腕を切り落とした。
もう片方も落とそうとしたが、寸前で避けられる。
だが、胸部装甲の一部を切り裂く。
「……これが
長刀を切り払いを行ってから再度構える。
『オルキス、退け』
「何?」
『今退けば、見逃してやるって言ったんだ』
「……私の任務は
突如オルキスが耳に手を当て、驚愕している。
多分だが、通信でもしているのだろうな。
「しかし……ッ! 了解した……!」
すると、オルキスが何かのスイッチを押す。
「結界は解除した」
『……』
「本当だ。私はここで去るが……仕留めなくて良いのだな?」
『そんなに死に急ぐなら、今ここで始末してやるが?』
「いや、それは命令違反となる」
『なら、去れ』
「そうさせて貰おう」
そう言ってオルキスは俺の目の前で後方へ高く跳躍して何処かへ消えた。
消えるのを確認すると雨が降り始める。
解除しようとした瞬間、窓に映る自身の姿。
長髪の真っ白で目の色が黄色に光、白い衣に一部赤いラインの入ったのを上に着ている。
雨の勢いが強くなる中、
自身の足で体を支え切れなくなり、思わず壁に体を預けた。
意識も徐々に途切れてくる。
「や……やば、い……な……」
『レイス! 意識を強く持て!!』
「あ、ああ……保って、やる……さ」
壁に手を付けてから離れて歩き出すが、千鳥足だろうな。
ちょっとした段差に足を躓き、倒れる。
そのタイミングで雨が強く降り注ぐ。
体を動かす事が出来ず、ただ雨音だけがレイスを包んだ。
「……」
『レイス!!』
スサノオが声を掛けてくれる。
だが、言葉すら発する程意識が途切れる中、足音がこちらに近づいてきている。
『お前は……!』
それだけ分かった所で俺の意識が途絶えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます