第4話 ただ、俺は殺し続けた
俺はガルトさんの部屋から出て自室へ戻ろうとしていた。
ホールの横通路を歩いていると、ホールの方から
誰かが倒れている? いや、侵入者か? などと、考えるがまずは偵察。
音を立てぬ様に早足で向かい、柱の陰からホールを確認する。
あれは……見た事がある。
見た事のある
入団時に……思い出した!!
思い出した、近衛騎士団団長でこの国ミナヅチの王の息子である、カイル・グゥエン・オーヴェン。
俺は
その瞬間、近衛団長から凄まじい殺気と鋭い視線が俺の体を貫く。
殺気と鋭い視線に体は恐怖に包まれ、その場から1歩も動く事が出来ず、息をするのがやっとであった。
しかし数秒後、殺気と鋭い視線が消えこちらへ向かってきている。
「大丈夫かな?」
「……ぁ」
「すまないね、祈っている時に邪魔されてしまうと、いつもこうなんだ」
とアハハハハと軽く笑う近衛団長に、思わず引きつりながらだが、笑う。
だが、俺の顔を見るなり、
「君は、そうか……謹慎中だろう?」
「え……あ、はい……」
「直ぐに戻りたまえ」
「は、はい……」
その場から離れようとしたが、
「あー君はー……レイス、君だよね?」
「そ、そうです」
「ふむ……君の剣や防具は何処に?」
「収納部屋にあります……」
「分かった、後で回収しておこう」
「え? な、何故でしょうか?」
「君、辞めるんだろう?」
その一言に驚愕する。ついさっきガルトさんに辞める事を伝えたばかりなのに、ここまで情報の伝達が早い物なのか。
「ま、私の予想何だがね。どう当たってる?」
「え……あ、はい……その通りです」
「そうか、まぁ仕方ない。さて、辞める騎士の装備は回収しないと。では、また」
「お、お疲れさまでした……!」
「うむ」
すると近衛団長が手を差し出す。
何かと思い、手を見てから近衛団長の表情を伺うと、
「握手」
「あ! は、はい……!!」
手を自身の服で拭いてから近衛団長と握手を交わす。
満足そうに笑みを浮かべる近衛団長。
その後、近衛団長が去るので深々と頭を下げ、近衛団長を見送り俺は自室へ戻ろうとした。
自室の前に着き、扉を開けてベットの上に寝転ぶと丁度、睡魔に襲われそのまま意識を刈り取られた。
そして、ふと目が覚める。
目が覚めると同時に体全体に重みがあると感じ、何かと思い自分の体を見た。
「何で、鎧……?」
意識がまだしっかりと覚醒してはいないが、鎧を着ている。
それが分かる中、徐々に意識が覚醒していき、目の前の光景に驚愕した。
「……え?」
何故、俺はガルトさんの部屋に? それに部屋中に広がる赤いこれはなんだ?
と思った瞬間、強烈な血の匂いが俺の鼻を激しく刺激した。
俺は鼻を抑え、後ろに下がると何かを踏みつける。
何かと思い、視線を下すと、
「……ガル、ト……さん……?」
体中を切り刻まれたガルトさんの姿がそこにいた。
その光景に耐えられず、俺は吐き出す。
「……ゥウッ――うぇえええぇええ……」
一体何が起きているのか、理解できなかった。
しかし分かるのは1つ、ガルトさんが死んでいる。
何があったのか、俺は自室で寝ていた筈だ。
目を覚めれば、俺はガルトさんを殺していた……いや、そんな事はあり得ない。
俺は目を見開き、鼓動が早くなっているのが分かる。
そんな所に扉が開かれた。
「団長、お話しが――ッ!?」
現れたのは近衛団長であった。
近衛団長は顔を真っ青にして、持っていた書類を床に落として数歩後ろへ下がる。
俺は近衛団長に1歩踏み出す。
「ち、ちが……俺じゃ――」
「――ウワァアアアアアアアアアッ!!!!」
近衛団長が叫び、剣を抜いて突っ込んできた。
切りかかって来た団長の斬撃を避ける。
この時俺は、余りにも斬撃が雑過ぎると思うが、まず俺でない事を証明せなばならない。
と思い、近衛団長を軽く押したのだ。
その瞬間、近衛団長は大きく飛ばされ、本棚と激突して激突した際に本棚が倒れた。
近衛団長は本棚の下敷きとなり、身動きが取れなくなっていた。
直ぐに助けようとしたが、近衛団長は緊急警報を鳴らす。
「は、話をき、聞いて下さい!」
「人殺しめぇッ!! お前の顔に、体に付いているのは騎士団長のだろうが!!」
「ちが――知らないッ!!」
「シラを切るな!! お前は重罪だッ!! 捕まえ次第殺してやるッ!!」
「俺じゃ――」
「――何があったんで……うわぁあああああああああああッ!!!!」
警備していた騎士が部屋に現れ、中の惨状を見た瞬間叫ぶ。
俺は警備していた騎士、先輩騎士と目が合う。
すると、腰を抜かして床に尻をつけて後退する。
「先輩、俺じゃ――」
「――緊急!! 緊急ッ!! 団長が殺された!! 容疑者は!! レイス・キンドゥ!!!!」
この場に居る全ての騎士へ伝達される。
俺は否定する先輩へ近づく。
「俺じゃない! 俺じゃ――」
「――耳を貸すな! 近衛団長の俺をこんな目に合しているんだ!! それに俺はコイツが団長室に入るのを目撃している!!」
「俺じゃない!!」
「捕まえてその場で処刑しろッ!! これは命令だッ!!」
すると、続々と騎士達が集まる中、部屋に入ろうとした瞬間、
「え?」
俺の体は勝手に窓から飛び出し、着地後すぐに何処かへ走る。
体の言う事が聞かず、何が何だか分からないまま走った。
「逃げたぞ! 追えッ!!」
背後から声が聞こえる中、騎士寮に緊急警報が鳴り響いた。
俺の前を先回りしていた先輩騎士2人が剣を抜いて、対面している。
「止まれ!」
「――ッ!?」
「止まらんと……!! 切る!!」
「――ッ!! ッァッ!!!!」
俺は声すら上げる事が出来ない中、体は勝手に剣を抜く。
そして俺は仲良くしてくれていた先輩騎士に剣を振りかぶった。
先輩騎士は俺の放った斬撃に反応できず、鋭い一撃を受け……首が目の前で跳ねた。
目を閉じる事すら許されぬこの体、まだ殺したりないのか、もう1人の先輩騎士に体当たり後、喉に一撃放った。
「ッガ……ッコォ……」
「……ウワァアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
やっと声が出せたが、すべてが遅い。
俺が何をしたのか、それすら分からないままである。
そこにポツリと雨が降り始める。
そんな俺に光が照らされ、
「いたぞ!!」
「――ッ!! アイツ!! 殺してるぞ!!」
「殺せッ!!」
5人の聖騎士が剣や槍を持って向かってくる。
また、俺の体は言う事が聞かなくなり、聖騎士達へ突っ込む。
聖騎士の剣を軽々と避けてから、飛んでいる最中に体を捻らせ、剣を振るい首を切り落とす。
「やめて、くれ……!」
盾を構えた聖騎士に体当たり後、後ろに槍を構えて控えてた聖騎士とぶつかる。
ぶつかると、盾を構えた聖騎士を踏み台にして、剣を構えた聖騎士に剣を投げた。
投げられた剣は見事ヘルムの隙間に入り、顔に突き刺さり倒れる。
「やめ、てくれぇ……!」
突き刺さった剣を押してから、引き抜いて起き上がった槍を持つ聖騎士の脇を突き刺す。
「ギャアアアアアアアアアアッ!!!!」
突き刺さった瞬間、槍を落とす聖騎士。
槍を掴み、ヘルムの下から槍を突き刺す。
「……め、て、く……」
起き上がった聖騎士は余りの惨状に息を飲む。
剣を構え、
「この人殺しがァアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
突っ込んでくる聖騎士に俺は、
「やめてくれぇえええええええええええええええええええええええええッ!!!!」
叫ぶが体を言う事を聞かず、振り押された腕を鎧の間を縫って切り落とした。
更に体を捻らせ、そのまま首を切り落としたのだ。
その後、直ぐに俺の体は森の方へ走り騎士寮を飛び出た。
雨の音が、虚しく……俺の心に突き刺さる様に更に強くなって行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます