第2話 ただ現状を知ろうとした

 白夢はくむ、バカ猫から離れて3日。

 俺は大国ミナヅチから離れた街、ルイジュンに立ち寄る。

 因みに俺は、認識阻害の魔法を掛けたローブに身を包んで街に入っている。

 白昼堂々と街を歩く訳にはいかない。


 そんな事をすれば、在中している聖騎士と賞金稼バウンティーハンターぎ達に襲われるからだ。

 思わず、ため息をが出る。

 何で俺はこんな事になっているのだろうか……いや、俺のせいじゃない。

 アイツが全ての元凶だ。


 憎き相手を思いながら、裏路地に入っていく。

 そして1つの家の前に立ち、ノックを3回して一間置いてから2回。


「合言葉は?」

「目線は下々であるべきだ」


 すると、開錠音と共に扉が開かれる。

 全身をローブに身を包んだ者が現れ、


「入りなさい」


 家の中、と言うより地下へ続く階段を降りる。

 階段を下りきると、そこにあるのは地下商店街。

 ここでは通常ルートでは手に入らない物が揃っている闇市。

 俺の目的は傷を治す為のポーションとマナの回復ポーション。


 後、今現状の聖騎士の動き……神武じんぶの行方。

 商店街を歩く中、ふと目に付く情報誌を見つける。

 看板を見ると、情報屋と書いてるので、


「……何が知りたい?」

「代価は?」

「聖騎士関係は5万、他は5000から1万だよ……」

「聖騎士、確認してくれ」

「……あいよ、受け取った」


 犯罪者らしく金を払わずに脅迫すれば良い。とか思っている奴。

 俺はそういう奴の結末を知っているんだ。

 ここは闇市、という事を忘れてはいけない。

 犯罪を簡単に行っている者達。


 こういう場所での乱暴、脅迫行為は二度と全世界にある闇市に入る事が出来ない。

 それだけではない、受けたモノはしっかり返す、と言う事でA級犯罪者がこの街である商人を殺した事で、奴の行くところに聖騎士、逃げ延びた所に賞金稼バウンティーハンターぎ、夜には闇市に雇われた暗殺者。

 この様な地獄が待っている。正直に言って聖騎士と賞金稼バウンティーハンターぎに掴まるなら、まだマシ、と言う話もある。

 内容によっては、暗殺者に掴まれば手足を落とされてから、雇われ主の所に運んで拷問……などと言う話もあるらしい。


 なので、ここでの乱暴、脅迫行為を行わないのが暗黙のルールとなっている。


「で? 何が知りたい?」

「聖騎士の動向を知りたい」

「第12騎士団長と第11騎士団長が第9支部に着いたよ、他はまだミナヅチだね」

「……近衛騎士団団長カイル・オーヴェンは?」

「行方不明さ、奴の足取りを掴む事すら難しい」

「……そうか。ありがとう」


 情報を貰い、その場から離れて俺はポーションを買いに向かう。

 ポーションの売っている店を見つけ、ポーションを3つずつ購入。

 その後、店に置かれている投影機から、今現状のニュースが流れる。


『第10支部が何者かによって壊滅、これを行った犯人達は未だ見つかって居らず、聖騎士達による全力な捜査が行われております』

「上層部、特に老害元老院共は他の信用を失い、困っているだろうな」

「……そうか、薬ありがとうな」

「金を出す奴は全員お客さ」


 俺はその場を離れ、宿屋に向かい1部屋借りて装備を整える。

 装備を整え終わり、窓枠から外の様子を覗くと、丁度手配書の張られた看板を見つけた。

 そこに1人の男性が走って来て、看板に手配書を張りつけると人が集まっていく。

 人混みの中から何かと思い、目を凝らして見ていると会話が聞こえてきた。


「マジかよ……! 10億って!!」

「けど、強いんだろ!?」

「犯罪者ランク最大……だが、やる価値はあるぞ」

「SSS級犯罪者、邪神・レイス・オブ・ハーデス……やるか!!」


 俺は窓枠から離れて部屋のベットに寝転ぶ。

 今の俺は変装魔法で顔がただれているから分からない筈だ。

 常に見破る魔法を自身に掛けていれば、話は別だが……そんな奴は殆んどいない。

 そんなことを思っていると、ドアをノックされた。


 誰だ? あー、そうだそうだ、飯も予約したんだったな。

 それを運んで来たのか、と思い、ドアを開けると、


「ニャホー」


 白夢はくむの顔を見た瞬間ドアを勢い良く閉めた。

 そして直ぐに鞄を腰に着け、窓枠から出ようとしたが、


「逃がさないッ」

「おわッ!」


 窓から白夢はくむが飛び込んで来て、避ける事が出来ず衝突する。


「いってぇ……」

「ニャハハハー白夢はくむちゃんから逃げれると思うなよぉー?」

「うっせぇバカ猫、どけ」

「どーかニャい」


 仰向けになっている俺の上に乗っかっている白夢はくむに言うが聞かない。

 重いため息を1つしてから、


「……話せば、どくか?」


 俺の一言に目を輝かせて、顔を近づける。


「本当か!?」

「ああ、本当だ。てか、近いし鼻息荒い」

「おぉー! それはごめんね! ほい!」


 逃げれそうも無いので俺は諦めて窓枠に近づき、


「逃げるのか!?」

「いんや、窓を閉める」


 窓を閉めてから椅子に座る。

 そんな白夢はくむはベットに座り込み、目を輝かせていた。


「……俺は――」


 俺は、何故全世界を震撼させる程のSSS級犯罪者になったのか、白夢はくむに話す事を決意した。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る