第98話 さようなら:梅1
緑の髪は……消滅していた。
「どうされたんですか!? その髪は。より一層パワーアップ……」
慎ましく伏せた両目が、深い皺に埋もれて、なんとなく皺と一体化しているように見える。
「
なよっと梅の手がのの字を描く。
それで髪をピンクに染めたのか。
服と同色なら大丈夫だと思ったようだ。
どうせ思い切るなら宇宙から帰ってくるとか他の選択肢はなかったのだろうか。
「わたくしからのお礼です」
梅は点てた薄茶と、特製抹茶ババロアを出してくれた。
清涼な香りが鼻をくすぐり、目にも鮮やかな緑の液体が、見るものの心を落ち着かせてくれる。
最初こそこの苦さに悲鳴をあげた紅葉だが、今や梅の点ててくれるこのお茶が大好きになっていた。
故にこの抹茶尽くしはとても嬉しい。
「寂しくなりますね……」
ぽつりと呟く梅の声に、紅葉の胸にも少しの寂しさが漂う。
思い起こせば……この
それも今では懐かしい。
こんな風に打ち解けられる未来が待っているなどと、あのときの紅葉には少しも想像できなかった。
とても嬉しい誤算だ。
「いいえ。これからも、月に二度はお手伝いに来ますし。それに――今の梅さんには守蔵さんがいらっしゃいますから」
梅はまた頬を染めた。
外見からは想像できないくらい純粋な人のようだ。
その度に、梅は少女のように胸を躍らせながら出かけているのだろう。
その証拠に、以前より皺の深さが浅くなった感じがする。
もしや、若返ってきているのだろうか。
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