第74話 悠弥発見
納戸の中で
屋敷の裏からそろりそろりと回り込んだ
悠弥は後ろ手に縄で縛られ、口には猿ぐつわを
けれど、それ以上酷い目には遭っていないようだ。
ほっと平らな胸を撫で下ろすと、紅葉は小さく声をかけた。
「悠弥、わたし」
顔をあげた悠弥は愕然として、すぐにその目には涙が溜まった。
瞼の堤防はあっさりと崩れ、頬を伝って流れ落ちる。
「今、行くから」
細心の注意を払って格子窓を外した紅葉は、無理矢理に身体を押し込めて潜入した。
そして、笑顔で猿ぐつわと縄を外してやる。
途端に悠弥が抱きついてきた。
紅葉の耳へと口を当てて、懸命に声を殺して囁いてくる。
「紅葉、ごめん。俺、ただ確かめたかったんだ。あいつが本当に紅葉のことを好きなのか。だから――」
「もういいよ、悠弥。わたしの方こそ言い過ぎた。ごめんね」
開口一番で
こんなところに閉じ込められて身体も冷たくなっているというのに……。
ずっとそのことを気に病んでいたのだろう。
悠弥の身体をもっと近くに引き寄せると、自分の体温を移すように温めてやった。
暫くそうしていたが、突然違和感を感じた紅葉は、悠弥の目を覗き込んでみる。
その目は紅葉ではなく、もっと上を凝視していた。
「ネズミが一匹」
頭上から降ってきた声は気怠くぬるい。
悠弥を抱きかかえたまま、紅葉はゆっくりと振り返る。
「こんなところに女の子。はて?」
青い目の男が、屈んだ状態で紅葉達を覗き込んでいた。
流れる髪は光り輝く金髪で、瞳はどこまでも澄み渡る蒼穹を思わせる。
細い鼻梁に薄い唇、均整のとれた肢体は濃紺色の着物を纏っている。
男は羽織の
何とも緊張感のない風体だ。
「エ……」
「え……?」
紅葉の顔を覗き込んだまま、男が反芻した。
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