第26話 侵入者

「警備会社に連絡してみるわ。必要なら警察も」


「ダ、ダメだよ!」



 紅葉もみじの腕を必死に掴んで止めようとする悠弥ゆうや


 その表情は真剣だ。


 眉を寄せた顔は泣きそうになっている。



「どうして!? そのためにお金を払ってるんでしょ?」


「だって、あいつは……。あいつらは、身内なんだ」



 車の音がした。


 停まったのは門扉の向こう側だから聞こえてくる音は小さい。


 けれど静かな夜だから聞き逃すことはない。



「ご両親はこのことを知ってるの?」



 悠弥は激しく首を横に振る。



千兄せんにい廉兄れんにいしか知らない。俺のせいで心配させるの嫌だから」


「バカ! 心配させるのも親孝行なのよ! ね、今までもこういうことはあったの!?」



 バタンと小さくドアが閉められる音がした。


 車から誰かが降りたようだ。



「一度だけ、学校の帰り道で……。その時は千兄と廉兄が駆けつけてくれて……。あ! あいつら、今日は両親と千兄がいないの知ってる。警備会社に取り入って、一時間だけ門のセキュリティを解くことになってるって言ってる。どうしよう、紅葉」



 紅葉は素早く行動を開始した。


 悠弥をベッドへと座らせると、視線を合わせて強く言いきかせる。



「よく聞いて。悠弥はここでじっとしてなさい。まさか使用人の部屋にいるとは思ってないだろうから、ここは一番安全よ。わたしが話をつけてくるから、出たらすぐに鍵をかけてね。絶対に動いちゃダメだよ!」


「あ、紅葉!」



 臆することなく紅葉は玄関へと走る。


 確か靖彦のゴルフ用キャディバッグがあったはずだ。


 一番丈夫そうなドライバーを一本手に取ると、紅葉は玄関から飛び出した。



 月明かりの下、二人の男が門扉を開けて入ってきた。


 スーツ姿にサングラス、まさに映画でよく見るシチュエーション。


 夜中にサングラスを嵌めているところが、悪人であることを決定付けている。



 そして何よりも――。


 悠弥の言った通り、門を開けられたというのに警報音が鳴る気配はない。



「あなた達、不法侵入だと分かってるの!? 大人しく帰らないと警察を呼ぶわよ!」



 玄関先でドライバーを地面に突っ立てて、仁王立ち姿で大声をあげる。

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