第68話 軍神の少女
しかし、そんな
「
それなのに悠弥が連れ去られた理由が何なのか。
それを考えれば、安易に兄弟二人が動き出すのは危険だ。
そう説明して、千弥は浅い溜息を零す。
「じゃあ、どうするんだ!? 悠弥をこのまま――」
「いや。当然、助け出す。だけど……」
千弥は口を噤んだ。
瞳に浮かべる微笑は、まるで自嘲のよう。
「まさか、
不安そうに疑いの目を向ける廉弥。
無言で肯定する千弥を認めると、徐に下を向き、肩を激しく震わせる。
足元には、涙が音を立てて落ちていく。
その肩を、
「廉弥。以前の千弥なら、たぶん既にひとりで
流れる涙を隠そうともしない廉弥の頭を、靖彦がくしゃくしゃと撫でる。
「俺は……嫌だ! 絶対に嫌だ!!」
千弥の胸に飛び込むと、廉弥は大声で叫んでいた。
涙は容赦なく千弥の白いシャツを濡らし、漏れ出る嗚咽は部屋に集う全ての者の涙を誘う。
その時。
突然、扉が開かれた。
明るい声が響き渡る。
暗雲が垂れ込めるその部屋に、一条の希望の光が射し込むように。
漆黒の夜空に、煌びやかな星が瞬くように。
「わたしも行きます!」
そこには、
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