第24話 怪しい兄弟
「おじゃましました。そろそろ自室に戻ります」
鼻に詰めたガーゼに血がついてこないのを確かめると、
その視界に二人の兄弟が映り込む。
「紅葉っていくつ?」
廉弥の問いに、紅葉ではなく悠弥が答えた。
「十六だって。今年十七になるらしいよ」
「えっ、じゃあ、俺と同い年? ――ふうん」
廉弥が意味深に笑うと、何故か悠弥は不機嫌になった。
「
「読むなよ、悠弥。お前の方がいやらしい」
そんな会話を切っ掛けに、わーわーと一気に二人は言い合いになった。
兄弟はしきりに「読む、読まない」を言い争っている。
「ちょ、ちょっと、よく分からないことで喧嘩しないでよね」
紅葉の言葉に二人はぴたりと静かになる。
そして、見つめ合うこと数秒後、何か意思の疎通をしたかのように頷き合った。
「もしかして、俺たちのこと何も聞いてない?」
訝りながらも紅葉は首を横に振った。
父親からはこの家の住所しか聞いていない。
廉弥の問いが何を意味しているのかは分からないが、知っていることがあれば必ず話してくれたはずだ。
恐らくは紅葉の両親も、この家庭について詳しいことは何も知らないのだろう。
廉弥と悠弥は黙ったまま、またお互いに見つめ合った。
数分経過。
まだ見つめ合っている。
(ちょっとこの兄弟、まさか変な趣味……)
紅葉が違和感を感じ出した時、廉弥がやっと口を開いた。
「実は……俺たち三兄弟にはちょっとした秘密があるんだ。紅葉は本物みたいだから、知っておいた方がいいと思う」
なんだろうか、秘密とは。
それに本物とか偽物とか、わけが分からない。
ふと思い当たったことがあり、紅葉は質問を投げてみる。
「家政婦さんが次々と辞めちゃう理由ってそれ?」
「……そうだけど、それだけじゃないよ。梅さんだって原――」
慌てて悠弥は口を塞いだ。
まぁ、そうだろう。
なんといっても古い考えの姑だし。
「
勝手にお開きにしようとする廉弥に、
「ちょっとそこまで言っておいて、気になるじゃない」
紅葉は迷わず食い下がった。
秘密があると言われて教えて貰えないのは気持ちが悪い。
兄弟はまた見つめ合う。
やっぱり長時間見つめ合ったまま動かない。
(気になるって言わなきゃ良かったかも)
怪しく見つめ合う二人に危機感を覚え、紅葉は激しく後悔した。
「悪い。やっぱり千兄に確認してからじゃないとマズイから。ちょっとの間、気持ちが悪いとは思うけど我慢しておいて」
本当に申し訳なさそうな顔をして廉弥が謝る。
意外と誠実なのかもしれない。
そんな彼に向かって、紅葉は不適な笑いを浮かべる。
そして、「そのかわり」と言って腕をあげた。
「あれ、触っていい?」
指差す先にはエリオットのフィギュアがあった。
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