第13話 シュラウド家(1)
By: Sakura-shougen(サクラ近衛将監)
船内時間で午後3時ちょうどにアトラズ124便は、プレデス第一軌道ステーションに到着した。
第一軌道ステーションは惑星間輸送のベース・ステーションであり、第二軌道ステーションが恒星間輸送のベース・ステーションになっている。
乗船客は既に下船準備を始めており、二組の兄妹も下船準備を終えていた。
間もなく下船の案内があり、二組の兄妹は連れ立って下船口に向かった。
降り口はVIP専用のタラップ・チューブである。
ステーション内VIP室には、シュラウド兄妹の迎えが来ていた。
ブレディ兄妹は、ラリィからシュラウド家の執事ハーヴェルと紹介を受けた。
ハーヴェルが言うには、VIP室の出口で多数の報道関係者が待ち構えていると言う。
このため、ステーション側の特別の配慮により、従業員用の別通路を用いて個人用宇宙クルーザードックへ案内すると言う。
どうやら、ドラプレデスにはアトラズ124便で誘拐未遂事件、暗殺未遂事件、スペースジャック未遂事件があり、犯人が逮捕されたことのみが伝えられているらしいが、そのための取材合戦のようである。
報道関係者に捕まれば暫くは地上に降りられないことになる。
そのため、シュラウド家の自家用クルーザーを秘密裏にステーションに駐機させてあるようだ。
その従業員出口から出ようとしたところを背後から呼び止められた。
「 シュラウドご兄妹とブレディご兄妹とお見受けしますが、私は、国家保安警察
宇宙刑事部のマクドナルドです。
恐れ入りますが、以後の連絡先だけでも教えていただけますか。
特にブレディご兄妹の場合は124便で発生した三つの事件すべてに関与され
ているようですので、どうしても我々の手による事情聴取の必要がございます。
行く先が明確でない場合非常に困りますので・・・。」
「 あ、それでしたら、ブレディ兄妹は、いずれもシュラウド家の方に暫く滞在し
て貰うことになっておりますので、そちらへ連絡ください。
私は、ラリイ・シュラウドですが、同じく私と妹もシュラウド家に連絡をいた
だければ、必要な対応ができるものと思います。」
「 なるほど、確認させていただきますがベランドル街のシュラウド家でございま
すね。」
流石に警察である。
既にシュラウド兄妹の身元は確認済みであった。
ラリィが小さく頷いた。
「 わかりました。
では、どなたさまも、仮にそこから長期間移動する予定が入った場合は、どう
か連絡先を最寄の保安警察署までお知らせください。
私の名前を出せば連絡がつくようにしておきますので。
では、後日連絡をさせていただきます。
できるだけお手間を取らせないようにいたしますので、ご協力のほどお願いし
ます。」
それからハーヴェルの手配で四人はすぐに、VIP室を出て従業員通路を経て貨物用エレベーターで個人用宇宙クルーザードックへ移動する。
その間ステーションの警備員がついて道案内をし、無事に自家用クルーザーに乗り込んだ。
四人とシュラウド家の執事が乗り込んでほどなく、クルーザードックの外扉が開き、クルーザーはステーションを離れた。
目的地は、シャトルが行き来するドラプレデス宙港ではなく、シュラウド財閥傘下のクルーザー製造工場の私設宙港である。
同工場はドラプレデス郊外にあり、そこからエアカーでドラプレデス市内にあるシュラウド邸へと向かうのである。
ドラプレデスと第一軌道ステーションの時差は1時間、ドラプレデス市内のほうが早く、第一軌道ステーション着がドラプレデス時刻の午後4時、クルーザーの出発が午後5時頃、クルーザー製造工場宙港着が午後6時、シュラウド邸到着は午後7時少し前であった。
シュラウド邸はかなり広い邸である。
アルフォン世界のモレスト邸に比べると倍近くの敷地がある。
さらに建物も地上三階、地下二階の大きさであり、周囲の住宅に比べても威容を誇っている。
ベランドル街は別名豪邸団地である。
従って、周辺には豪邸の町並みが続き、表通りに面した商店街もプレミアム製品を数多く取りそろえた名店揃いである。
シュラウド邸では、家人にとっては少し遅い食事が用意されていた。
もともとラリィとサブリナが帰宅する予定であったから、相応の準備を進めていたが昨日になって、超光速通信を使ってラリィから連絡が入り、若い男女の客人2名が同行し、暫く滞在する旨の連絡が入ったのである。
詳しい話は特に何も無く、そのうちに警察から連絡が入り、兄妹の誘拐未遂事件が発生したが、犯罪は未然に防がれ兄妹は無事との連絡が入った。
さらに、帰宅当日の昼過ぎには、兄妹の搭乗しているはずのアトラズ124便で誘拐未遂、評議会議員暗殺未遂、スペースジャック未遂事件が連続して発生したが、犯罪は未然に防止された模様とのニュース・テロップが流れた。
その後詳細な情報はほとんど流れなかったため、家人が心配していたところ、午後4時10分頃、空港に迎えに出た執事のハーヴェルから二人は無事、ご友人の男女二名を同道して戻るという簡単な報告で安堵したのである。
会食の席上、最初にラリィから家人への紹介があった。
「 我が家の皆様に、私の友人であり、命の恩人でもあるロバート・ブレディ君と
その妹であるアマンダ・ブレディ嬢をご紹介します。
ロビー、それに、アミー、僕の家族を紹介する。
右手奥から、祖父のジェイソン・シュラウド、その隣が祖母のカレン・シュラ
ウド、その隣が父のジェイコブ・シュラウド、左端が母のアイリーン・シュラウ
ドです。」
カレンとジェイコブはオーラが目立つがジェイソンとアイリーンは普通のオー
ラしか持たない人物のようだ。
「 今日の夕食は異例尽くめだが、まぁ、食事をしながら話そうじゃないか。
ロバートにアマンダ、良く我が家にいらっしゃった。
実のところラリィとサブリナが友人を連れてくること自体がまず珍しい。
特に異性の友人となるとかなり幼い頃に遡らねばならないはずだ。
それが第一の異例かな。
後は、サブリナ、食べながらでもいいからお前がこのお二人との馴れ初めを話
してくれんかな。
お母さん達が一体何があったんだろうと気をもんでいる。
適当なところでラリィが変わってやればいい。
ロバート君にアマンダ嬢は、余り気を使わずに自由に食べて欲しい。
我が家ではできるだけ自由にしている。
じゃ、サブリナ・・。」
促されてサブリナが話し始めた。
「 はい、お父様。
私たちとブレディ兄妹が出遭ったのは、外惑星観光の帰路でした。
小惑星帯で124便に搭乗したロビーとアミーは、私たちと同じ特別船室の乗
客で、その日の夕食テーブルが一緒でした。
ロビーは22歳、アミーが21歳、あ、でもロビーはもうすぐ、23歳になる
のね。
アミーがその後すぐくらいに22歳になるはずよ。
で、私たち兄弟と年が近い性かすぐに打ち解けて、・・・。
ううん、正直に言った方がいいわね。
私はロビーに、お兄様はアミーに一目惚れしたの。
だから何とか親しくなりたいと思って、夕食後にお二人を誘って上級ラウンジ
で歓談をしたのよ。
そのときに聞いたお話で、・・・・。
ロビー、アミー、あなた方の資産を公開してもいいかしら?」
ロバートは苦笑しながら言った。
「 うーん、まぁ、仕方がないね。
隠してもお父さんが調べればすぐにばれるでしょう。
但し、できるだけ内緒にしてくださいね。」
「 ということで、ご本人の了解を得ましたので、お話しますが、他人には内緒に
してください。
ロビーとアミーの口座残高は、二人併せて何と70億ゼルを超えています。
ロビーとアミーは小惑星での事業を始め、2ヶ月足らずで儲けたんですって。
特にご両親の援助は受けていないのよ。
凄いでしょう。
と言っても、別に私とお兄様が二人の資産に目が眩んだわけではないですよ。
一目惚れしてから知った情報ですので悪しからず。
で、ラウンジで色々お話している内に、誘拐犯四人が現れたの。
上級ラウンジだから、本当は一等船室以上の人じゃなければ入れないはずなの
に、セキュリティが破られたのね。
警報も出ずに四人が入ってきちゃったの。
ウェイトレスもいたけれど、警報がならないから不審者とは思わないわね。
で、ここからはお兄様が受け答えしたのだからお兄様から話してね。」
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