5-6

 テツさんに別れを告げると、ちひろはふたりの男性と一緒に、急いで学園へと戻りました。


 学園長室には以前と同じように、偉い人たちが集まっていました。


 部屋に入ってきたちひろを、学園長はじっと見つめています。

 その眼光は以前よりもさらに鋭く、まるでちひろのことをにらみつけているかのようです。


「オオカミ人間があらわれたと聞きましたが、いったい何が起きているのですか?」


 ちひろがたずねると、学園長は冷たく言い放ちました。


「何が起きているのかは、お前の方がよく知っているんじゃないのか?」

「えっ?」


 部屋にいる誰もが、けわしい顔つきでちひろのことを見ています。

 自分が取り囲まれていることに、ちひろはやっと気づきました。


「先日、学園に侵入した男がいる。目撃者によると、若いころの星崎隼人にそっくりだったそうだ。星崎ちひろ、お前はその男を知っている。そうだな」

 学園長の目が、ぐっと鋭さを増します。


「お前は、自分と一条カズマを襲った男の顔を見ていないと言ったな。だが、それは嘘だった。お前が見たのは、若い日の父親そっくりの男だった」

「それは……」

「なぜ自分たちを襲った男をかばう? 考えられる理由はひとつしかない。それは、お前があの男の仲間だからだ!」

「違います!」

「では、なぜ嘘をついたのだ!」


 学園長の気迫が、室内の空気をビリビリと震わせました。


 ちひろは答えられませんでした。

 あの時なぜ嘘をついてしまったのか、自分でも分からなかったのです。


「……地下牢に連れていけ」


「待ってください、学園長!」

 それまで黙っていた烏丸先生が、ちひろと学園長の間に立ちはだかりました。


「邪魔をする気か、烏丸」

「いいえ。ですが、確かな証拠もないまま、教え子を地下牢に入れるなど……」

「確かな証拠があれば、私がとっくにこの場で始末している」


 学園長は、凍り付くような目でちひろを睨むと、

「連れていけ」

 と、もう一度言いました。


 ちひろは抵抗する間もなく、両横に立っていた男性に腕を掴まれ、外へと引きずられていきました。

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